リアクション
『波乱続きのコンテストも、いよいよ残すところ二チームとなりました。エントリーナンバー１９。コスプレアイドルデュオとして活躍中、シニフィアン・メイデン！！』
綾原 さゆみ（あやはら・さゆみ）とアデリーヌ・シャントルイユ（あでりーぬ・しゃんとるいゆ）が登場すると、ファンからの声援が送られた。
『今回の衣装のコンセプトは何かしら？』
「キャプテン、よ」
さゆみとアデリーヌの服は、宇宙海賊の館長がテーマだ。その衣装の美しさはさすがコスプレアイドルといったところか。
『早速、その歌を披露して頂きましょう！ 「恋の艦隊決戦」』
理沙の声とともに、曲が流れ始める。数多くの恋の障壁を打ち破る少女。満身創痍になりつつも、どうにか片思いの相手へ告白する、少女の歌。
最終決戦に臨む少女の、決戦前夜の揺れる心の動きを歌った歌だ。
〈動の歌姫〉であるさゆみは、明るく歌い上げる。それが逆に、少女の不安な胸の内を表現しているようだ。
〈静の歌姫〉であるアデリーヌは対照的に、穏やかで包み込むような歌い方で、片思いの人への想いを胸に響かせるようにして歌った。
さゆみとアデリーヌが正反対の歌とダンスを何の矛盾も違和感も感じさせないよう、ステージは進む。
さゆみの歌うパートは明るい歌詞ではあるが、無理に不安をねじ伏せようとしている雰囲気をダンスで表現していく。
始まりへの期待と破局への不安を織り交ぜたような、ダンスだ。
アデリーヌの歌は、幸せの歌に悲しみの歌をほんの少量混ぜ込んだ、片想い故の切なさをほんのりと感じさせる歌だ。
かつてアデリーヌがさゆみに対して抱いていた想いを重ね合わせて歌ううち、知らず知らずに自分の情感が歌声に乗っていた。
観客の心に届くような歌だった。
あえて結末を明示しないようにして、歌は終わった。
惜しみない拍手を浴びながら、さゆみとアデリーヌは会場を見回していた。
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