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文房具娘大戦

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文房具娘大戦

リアクション


〜3〜 ペーパ博士

「ええい、なんだ。プレゼント回収率が落ちてるぞ!」
「警察が動いてるようです」
 苛立つペーパに助手は淡々と答える。

「ククク、ドクターペーパよ、我らオリュンポスの一員になる気はないか?」
 突然、ビルの非常出入口から声がし、2人は振り返った。
 そこには白衣がところどころ黒くこげていることから、来るまでに文房具娘たちに襲われていることがうかがえる。
 突然の不審者に、ペーパは怪訝そうに黒こげのドクター・ハデス(どくたー・はです)を見た。
「なんだお前は」
「まあ待て。詳しいことを話す前に邪魔ものを排除しなくてはな!」
 そういいながらドクターは背後を見ると、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が立っていた。
 その横には擬人化させたステンレス定規娘も、目盛り入った刀を構え立っている。
「擬人化銃を使ったか……」
「何でこんなことしたの?」
「もちろんリア充への反逆だよ!」
 ペーパはにやりと笑みを浮かべなあら答える。
「違うな」
 それを否定したのは、後から追いかけてきた平助だった。

 その横にはルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)の姿もある。
「……」
「どうした、ルカ?」
「ずっと思ってたんだけど文房具娘は長いね。やっぱ『文娘(ぶんむす)』かな?」
「文娘で文房具セットを組んでミッションをクリアーする。名づけて文房具これくしょ――痛っ」
 笑顔で話すルカにダリルは凸ピンを食らわせた。
「真面目にする」
「はーい……あ、そういえば”擬人化光線銃”壊れちゃったみたい」

「「なっ!?」」
 ルカの言葉に衝撃を受けたのはドクターとペーパだった。
 申し訳なさそうにダリルは壊れた”擬人化光線銃”を取り出した。
 ”擬人化光線銃”からはうっすらと黒い煙が上がっていた。
「擬人化光線銃自身に擬人化光線銃をかけてみようとおもったんだが、オーバーロードを起こしたらしい」
「野望の礎が……”戦闘員”たちよ行け!!」
 ドクターは”優れた指揮官”で戦闘員たちをルカや美羽達に襲わせる。
 ルカは向かってくる戦闘員たちを前に”インテグラルアックス改”を構えた。
「ザコは私たちが引き受けるから平助達はペーパを!」
 平助と美羽はうなづくと、ペーパの方へと向かう。

「我がオリュンポスの戦闘員たちザコ呼ばわりとは、なめてくれるではないか。いけっ、戦闘員たちよ!」
 ”士気高揚”で奮い立たせると、戦闘員たちは一斉にルカとダリルへと襲い掛かる。
 それをダリルは”行動予測”で把握すると、よけるが思った以上のすばしっこい戦闘員たちに少々かすり傷を負う。
 ルカは一気に”一刀両断”で戦闘員たちを払ったのちに、超加速でハデスの目の前まで迫る。
「流れでザコとか言ったけどペーパよりハデスの方が強いよね。ゴメンナサイ」
「ぐっ! あ、あたりまえ――じゃない、行けっ、戦闘員たち!!」
「そこまでだ」
 あわててハデスは”優れた指揮官”を使い、反撃へ出ようとするが、すでにハデス自身が隙だらけだった。
 いつの間にか背後に回っていた、ダリルの”Pキャンセラー”により、”優れた指揮官”と”士気高揚”は無効化されてしまう。
 すかさずダリルの終焉のアイオーンが動きが鈍くなった戦闘員たちのとどめを刺していく。
「じゃあ、またね!!」
 ルカは笑顔でインテグラルアックス改をハデスへと食らわせると、ハデスはそのままビルから地上へと落ちていくのだった。

     §

「逃がさないぞ! 観念しろペーパ!」
「……デカ助か」
 ペーパは追いかけてくる平助と美羽の姿に「ふっ」と息を吐いた。
「それで追い詰めたつもりか、デカ助」
「おう」
「せっかくすごい発明ができるのに、こんな悲しいことをやってるの?」
「クリスマスのリア充どもがうらやましかったからだよ!!」
 まったく考えるそぶりなどを見せずにペーパは笑いながら言った。
 ペーパの後ろで助手は肩をすくめる。
「本気で言ってるのかお前は。いや、言いそうではあるが」
 平助も本心まではわからずにいた。なぜ、こんな大事を起こしたのか。
 だが、追い詰めてることに変わりはない。

「とにかく神妙に――」
「ちょっとまったあっ!」
 平助が言いかけたときだった。突然隣のビルから声が聞こえてくる
 「とうっ!」という掛け声とともに、隣のビルから飛んできたのは葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)だった。
「待たせたな、非リア充エターナル解放同盟公認テロリスト参上!!」
「……え、吹雪?」
 思わぬ登場人物に、平助だけではなく美羽とコハクも困惑する。
「ペーパ博士のリア充への憎悪が自分を呼んだのであります。さっ、いまのうちに逃げるであります!」
 吹雪はペーパへと振り向き声をかける。
「なんかよくわからんが、助かる!!」
「まてっ!!」
 逃げようとするペーパにあわててコハクは走り出そうとする。
 しかし、吹雪に放たれた弾丸によって阻まれた。
「そう簡単には通さないであります!」
 ライフル銃を構えたまま、吹雪は笑みを浮かべて言った。
「邪魔をするなら……仕方ないよね! この人は止めるので泡銭刑事はその間に!」
「お、おうっ」
「させないと言ってるであります」
 吹雪は再びライフル銃を平助に向けて放つ。
 しかし、平助に当たる前にその銃弾は地面へぽとりと落ちた。
「敵の戦力を確認……毎秒391メートルの弾丸は守備範囲内」
 白い煙を上げた刀を振り下ろしながら、定規少女は呟いた。
 銃弾を刀によってすべて防がれたことに、吹雪は驚きを隠せずにいた。
「僕のステンレス定規はこれくらい、朝飯前だよ」
「なら、これはどうでありますか!!」
 吹雪はライフル銃のレバーをフルオートへと切り替えコハク達へ”五月雨撃ち”を放つ。
 無数に放たれる、銃弾は煙となりあたりを包み込む。
「……やっぱりそうくるであります」
 煙が風に飛んでいくなり、吹雪はため息をついた。
 コハクの女王騎士の盾がそれらをすべて防ぎきってしまっていた。
「目標は達成であります……つぎの場所へ行くでありますよ!」
 目標である「対リア充テロを逃がす」が完遂できたと思った吹雪はさっと振り返ると突然走り出した。

「またでありますっ!!」
「逃がさないよ!」
「へ?」
 ”戦略的撤退”でこの場を逃げようと試みる吹雪はあわてて、声のした空を見上げた。
 美羽が空からふってきていた。(”歴戦の飛翔術”)
「なっ……ににげ……早いであります!?」
「もう、貴方のせいで逃がしちゃったじゃない!!」
 加えて”バーストダッシュ”で追いかけてくる美羽に、吹雪はあっさりと捕まるのだった。