First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last
リアクション
イルミンスールの街。
「……大変な事になってる」
ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)は『空飛ぶ魔法↑↑』で上空から現在の散々たる状況を把握していた。
「みんなを助けなきゃ……あれは」
ふと見覚えのある姿がネージュの目に映った。
途端、
「行かなきゃ」
ネージュは目に映った人物の所へと急いだ。
「……ここは」
男の娘バージョンの百合園新制服カスタムを着た可愛らしい女の子の外見をした天然な男の子が通りを歩いていた。ショートヘアに上部から髪飾りで留めたツインピッグテールの髪型をしているその顔は紛れもなくネージュ。つまり平行世界のネージュである。
「……すごいなぁ……ってはわわっ!」
通りを歩いていた平行世界ネージュは突然何も無いのにバランスを崩してしまう。
丁度その時、
「ここに……」
空からネージュが降り立った。
同時に
「そ、そこ、どいてぇえええ!!」
平行世界ネージュはネージュに声をかけつつ思いっきり転倒した。
「……大丈夫?」
ネージュは恐る恐るドジっ子な平行世界ネージュに近付き、声をかけた。
「……大丈夫」
ゆっくりと起き上がり地面に座り込んだその膝小僧はしっかりと擦りむいていた。
「怪我してるね。すぐに治してあげる」
ネージュは『ナーシング』であっという間に怪我を治療した。
「ありがとう(……この子、ボクにそっくり)」
平行世界ネージュは、治療されながらじっとネージュの顔を不思議そうに見ていた。
そんな相手にネージュは優しい笑顔を向け
「あたしと一緒にみんなを助けるために頑張ろう?」
手を差し伸べた。
「うん(どうしてだろう。何かボクも頑張れるような気がする)」
平行世界ネージュは笑顔と言葉に励まされて差し伸べられた手を握り立ち上がった。
そして二人は戦うみんなをサポートするために街を回る。
その仕事ぶりは、
「もう大丈夫」
ネージュは怪我人の治療に徹し、
「あ、危ない」
平行世界ネージュは生体エネルギーを溜め、一塊の光弾として一気に放出する『滅技・龍気砲』でネージュを狙う敵を倒す。ネージュのフォローを立派にしていた。
「ありがとう(事態が落ち着いたらお別れだけどそれまでは仲良く、精一杯、頑張れれば……それに楽しいし)」
ネージュは倒れる敵を見送った後、平行世界の自分に礼を言った。胸の内では今の状況を少しだけ楽しんでいた。何せ今自分と共闘など貴重な体験だから。
「どういたしまして。まだまだ困っている人がいるはずだから。得意の魔法で頑張るよ」
平行世界ネージュは笑顔で言った。言葉通り頑張り屋で襲撃を退けたり怪我人を治療したりと休む間もなく得意の魔法で頑張っていた。
「……早く落ち着くといいけど」
酷い惨状を平行世界ネージュは瞳に映した事によって笑顔が悲しそうな色に変わった。
「すぐだよ。みんな頑張ってくれてるから……きっと大丈夫」
ネージュは元気な声音で相手の心配を吹き飛ばした。ネージュは信じている。遺跡に赴いた者達が上手くこの騒ぎを解決してくれると。
「……そうだね。きっと大丈夫」
平行世界ネージュはこくりとうなずき、表情を和らげた。
再びネージュ達は仕事に戻った。
その道で
「……何か治療しているみたい。行ってみよう」
「ボク達にお手伝いが出来そうだったらしよう」
ネージュ達は何やら治療をしている団体を発見し、サポートをするために急いで向かった。
イルミンスール魔法学校前。
「歪でも目玉帝国はいい具合にこっちの世界に現れるかと思ってたんだけど、何かどうも違う」
アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)は目の前の異変に溜息。しかし、その溜息の意味は多くの者達とは違っていた。
その事に当然
「……アキラよ、そんな事よりも今は」
アキラの叱り役であるルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)は呆れ顔。
「分かってるさ、ルーシェ。はぁ、しゃーねぇ、まずはこの異変を何とかするぜ!」
アキラはルシェイメアに振り返って親指を立てて陽気に言い放ち、目玉帝国を後回しにして街へと向かった。
「そうじゃ(……このままくだらぬ事を忘れてくれればよいが)」
ルシェイメアは腕を組みうなずくも内心では溜息を吐くばかりであった。
イルミンスールの街。
「みんな、こっちに避難しろー」
「慌てずに急ぐのじゃ」
アキラとルシェイメアは避難し遅れた人達の避難誘導をしたり
「すげぇな。目に付いた敵から片付けるぞー」
アキラは『凍てつく炎』で片っ端から襲って来る魔物を魔法によって一掃。
「うむ」
ルシェイメアも『天のいかづち』で天から雷を落とし消し炭にしていく。
そうして戦闘が一段落したところで
「しかし、足元が悪く天気も怪しい中の戦闘は……」
ルシェイメアは視線を地から天に移し、風景の変わった世界にいる事を実感していた。
しかし、アキラの耳には入ってはおらず、
「……」
別の事に夢中になっていた。
「……あれはもしや」
ルシェイメアはアキラの視線の先を知り、言葉を継ごうとした時、
「ルーシェ、目玉族だ! 行ってみよう!!」
ハイテンションなアキラの声が遮った。
いたのは、アキラが目玉帝国を建国した平行世界の住人達だったのだ。
「……嫌な予感はしたがこうも早く現実となるとはの」
ルシェイメアは溜息を吐きながら駆け出したアキラを追った。
「なぁ、もしかして目玉帝国の奴らか?」
アキラは目を輝かせながら目玉族の集まりに声をかけた。
「……ん」
一番に反応したのはアキラにとって見覚えのある目玉族、平行世界のアキラであった。
運命的な出会いをした二人は
「おっ!」
「あっ!」
互いの顔に驚き、思わず声を上げた。
そして、
「……」
数秒間互いの顔を見つめ合い
「俺ってこんな顔なのか」
こぼす感想も重なる。すっかり、今の状況を忘れてこの出会いを楽しんでいた。
そこへ
「今はそんな状況ではなかろう!」
二重の厳しい声と共に小気味良いドツキの音が響き渡った。
「いってぇ!!」
「なにするんだよ〜」
アキラと目玉アキラはどつかれた箇所をさすりながら振り向いた。
その視線の先には姿は違うが同じ人物がいた。
「ルーシェ」
二人のアキラはそれぞれその人物の名前を呼んだ。
呼ばれた二人は向かい合った自分達に気付き、運命的な出会いを果たす。
「もしやワシか」
ルシェイメアは姿が目玉に変わった自分に声をかけた。
「そうじゃ。すまぬ。ワシがついておりながら、目玉帝国なんてアフォなことを止めることができんかったわぃ」
目玉ルシェイメアは申し訳なさたっぷりでルシェイメアに謝った。
「一部始終は見させてもらったのじゃ。アレは致し方あるまい。それよりも今は、この異変をなんとかするほうが先じゃ!」
ルシェイメアは溜息を吐きながら以前上映会で見た映像を思い出し、ちらりと目玉アキラを一瞥。
「そうじゃな。アキラ、用意は出来ておるな」
ルシェイメアの言葉で気を取り直した目玉ルシェイメアは自分達がすっかり敵に囲まれている事に気付いた。
「あぁ、バッチリだ」
「行くぜ! みんな戦闘だ! 俺達目玉族の力を見せるぞ」
『イナンナの加護』を有するアキラと目玉アキラも敵の接近に気付き、戦闘へ。
『龍鱗化』で防御力を高め、『我は射す光の閃刃』で目の前の敵全員に戦女神の威光を光の刃に変えて放ったり使用者の希望で輝く大剣の希望の旋律を繰り出したり影に潜む猫の手でバシバシとしばき倒したりとアキラーズは見事なコンビネーションで次々と敵を葬っていく。
一方、
「ワシらも」
「うむ」
ルシェイメアーズも贖罪の銃による射撃と体術で連帯して倒して行く。
履いている荒馬のブーツの力で素速く移動して遠近を攻略し、ドラゴンダイブによるパンチでラゴンの姿をした闘気を生み出して敵を襲わせたり『歴戦の立ち回り』で不意打ちをする敵を打ち倒した。
目玉族達の力も加わり何とか敵を退け、付近にいた要避難者もいつの間にか救い、保護をした。
戦闘終了後、
「解毒をするからの」
「怪我人も多くおるの」
ルシェイメアと目玉ルシェイメアは魔女の薬草箱で毒を喰らった目玉族の解毒に走り回っていた。ただ、怪我人も多く手が回らない。
その時、
「怪我人ならあたし達に任せて」
「手伝いに来たよ」
ネージュと平行世界ネージュが登場。
「では、早速じゃが頼む」
ルシェイメアが協力を受け入れた。
「分かった。頑張ろう!」
「うん! ボクはあの子から治療をして行くから」
ダブルネージュは分担して怪我人の治療に取り掛かる。
「もう大丈夫だから」
「何も心配無いよ。ボクがすぐに治すからね」
二人のネージュは『ナーシング』で次々と負傷した目玉族に治療を施していく。
あっという間に治療を終え、
「負傷者全て治したよ」
ネージュがアキラ達に終了を告げた。
「みんなを治療してくれてありがとう。礼を言うぜ」
目玉アキラが目玉族を代表してネージュ達に礼を述べた。
「お礼はいいよ。困っている時はお互い様だから。それより他に手伝える事があれば手伝うよ」
ネージュはさらなる手伝いを申し出た。
「では避難し遅れた者達を避難場所まで届けてくれんかの」
目玉ルシェイメアが先程発見者避難し遅れた者達二人を紹介した。
「任せて安全に送り届けるから」
ネージュはそう言うなり平行世界の自分と共に四人乗りの小型飛空艇アルバトロスに要避難者と共に乗り、避難を始めた。
避難場所へ送り届け終えるとネージュ達は再び戦うみんなのサポートに走り回った。
天変地異は収まり、歪に出現した平行世界は姿を消した。撮影者が元に戻った事が眼前で繰り広げられる変化で実感出来た。
残るのは平行世界の住人達の帰還だけ。
「今回、オメーと会えてよかったぜ。俺も必ず、こっちの世界にも目玉帝国を築いてみせるからな」
アキラが口にするのは別れの言葉だけではなく野望達成への誓い。
「ああ、オメーならきっとできるぜ。俺ももっともっと、目玉帝国を栄えさせてみせるぜ!」
目玉アキラも同じく別れだけでなく建国した目玉帝国の繁栄への誓い。
こうなると次に待つ展開は、
「何またアフォなことを言っておるんじゃ!」
「ワシらがおる限りそんなことさせんのじゃ!」
ルシェイメアと目玉ルシェイメアの厳しいツッコミ。
「ルーシェ」
ツッコミを入れられたアキラーズは情けない声でルシェイメアをねめ付けた。
それから
「こっちのアフォはワシに任しておけ。そっちのアフォはよろしく頼んだぞ」
「しかと心得た。こんな姿になってしまった以上、よぉ〜く目を光らせておくので安心して任せておくが良い」
ルシェイメアと目玉ルシェイメアは改めて別れの言葉を交わした。
「では、達者での」
ルシェイメアーズは最後の言葉を告げ、それぞれアキラを引き連れ別れた。
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last