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ゾンビの館! 救出を求む調査隊

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ゾンビの館! 救出を求む調査隊

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第 1 章 

 空京郊外――

 シャンバラに点在する無人の洋館の1つにバイオハザード研究疑惑の噂を聞きつけたシャンバラ教導団は団員数名と他校から有志で参加した者、そして赤の書 イーシャン・リードリット青の書 シルヴァニー・リードリットを伴って調査に向かったはずであった。


 ◇   ◇   ◇


「済まないな……【超感覚】で周囲の気配には常に気を付けていたんだが」
 洋館の一室に閉じ込められた調査団の1人であるレナン・アロワード(れなん・あろわーど)は居た堪れない様子を見せ、その表情は険しい。パートナーのエセル・ヘイリー(えせる・へいりー) も小さな声で謝った。
「……ごめんなさいなの、私も【ディテクトエビル】で害意のある気配を探っていたのに……」
 カル・カルカー(かる・かるかー)水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)は顔を見合わせて2人へと向き直る。
「あなた達2人だけのせいではないです、私達だって思いもよらない罠でしたから……ただ、気になるのは魔道書2人と引き離されてしまった事なんです」
「あの2人は教導団で保護されている魔道書なんだ、ちょっと特殊なんで……彼らの秘密を知っている者が捕えたのだとしたら厄介な事になる」
 言いながらカルはドアを押したり引いたり踏ん張ってみたものの、びくともしない事に肩で息をしている。そんな彼の横からジョン・オーク(じょん・おーく)が壁をコンコンと叩いてみた。
「ジョン……?」
 カルが不思議そうに繰り返して壁を叩くパートナーに首を傾げながら見ていると、顎先に手を当ててジョンは暫く考え込む。
「……何のために、私達を閉じ込めたんでしょうね。まあ、一番考えられるのは『実験の素材』として、が妥当な所と思いますが……とにかく、定期報告が行われていない以上教導団でも救援隊の出動要請がされているはずです」
「冗談じゃない! 遺伝子操作だか何だか知らないけど……実験するなら自分の身体で試せよって言いたい。むかむかするぜ……!」
 怒るカルを宥めながら壁を叩き、注意深く音を聞き分けるジョンを守るように、ゆかりは【シュバルツ】【ヴァイス】を手に室内を警戒し始めた。
「部屋の中とて、油断は出来ませんからね。マリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)は、罠のチェックをしてみてくれる?」
「うん、無いと思うけど見つけたら誰か解除お願いね」


 アーサー・ジェンキンズ(あーさー・じぇんきんず)が館内部を歩いた結果の簡単な地図の作成に入り、エセルとレナンは【ピッキング】を試そうとドアの前を陣取っている。
「レナンちゃん、どう? 開けられそう……?」
「……ダメだな、普通の方法じゃ開けられないようになってるようだぜ。例えば、上を押さえれば下の鍵がかかる……と言えばわかるか? 2ヶ所同時に押さえないと開けられない仕組みみたいだ」
 しょんぼりと目尻を下げるエセルが『光輝の書』を握る。
「赤の書ちゃんと青の書ちゃんだって、無事かどうかわからないもん……こうなったら魔法で……!」
「エセルさん、少し静かにしましょう。壁の音の反射がよくわからなくなりますからね?」
 雷術を使おうとしたエセルをやんわりと止めたジョンは、あくまで柔らかく微笑みを浮かべてエセルを見ている。その様子にカルはそっとエセルに耳打ちした。
(ジョンは怒らせない方がいいから、僕と一緒に静かに待っていよう)
 エセルも言葉では表せない何かを感じたのか、カルの言葉にコクコクと頷くのだった。その時、壁を叩き続けていたジョンはある箇所で止まり、何度か壁を叩いた後で確信を得たように微笑む。
「見つけました、どうやらこの辺りの壁なら届きそうです」
「あのさ、ジョン……何を探していたかそろそろ教えてもらってもいいか?」
 にっこりと笑顔を向けたジョンは室内の契約者達を見回し、壁を軽くコンコンと叩く。
「通信手段がほぼ壊滅的なら、少々古風ではありますがモールス信号で救援部隊に状況を知らせるしかありません。カルとゆかりさん、マリエッタさんならわかりますね?」
 その場に居た全員が、あ! という顔をするとコン、コーン……――と長く短く響く音が壁の向こうへとこだましていった。洋館の外までは届かなくても、建物の中で捜索に動いている人達の耳に入ればと、今はそう祈るしかない彼らでした。


 ◇   ◇   ◇


「それじゃあ、調査団の救助とバイオハザードの証拠押さえ、及び研究者の逮捕に突入するけれど……皆、準備はいいわね?」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)の声に既に洋館前に集まった救助隊は気合を入れるように掛け声を上げる。一見、外からは普通の洋館だが建物内部では造り出されたゾンビが徘徊し、獲物を待ち構えていた。