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学生たちの休日15+

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学生たちの休日15+

リアクション

    ★    ★    ★

「さあ、賭けた賭けた! 優勝をあてて、一攫千金を手にしましよう!」
「盛況だねえ」
 必死に呼び込みをしている執事君を見て、柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)が言いました。
「盛況って、ただの予想屋じゃないですかあ」
 あまり感心しないなあと、アルマ・ライラック(あるま・らいらっく)が答えます。
 アルマ・ライラックとしては、本来であれば、この間鷽の巣で大破してしまったウィスタリアの最終調整を続けていたかったところなのですが。なにしろ、特急修理でなんとかウィスタリアはハード的な修復が終わったものの、アルマ・ライラックとの同調などのソフトウエア的な調整はまだこれからなのでした。
 それに、鷽のせいで完全同調してしまったウィスタリアを壊されたものですから、アルマ・ライラックの身体の方もガタガタです。さすがに今のアルマ・ライラックには、ソフトウエアの調整は負担が大きいでしょう。なにしろ、ウィスタリアの修理作業でここしばらくはろくに眠ってもいないようでしたから。
 見かねた柚木桂輔が、休ませるためにアルマ・ライラックを外へと連れ出したというわけです。休むために連れ出すというのも変な話ですが、黙々と不眠不休で作業をされるよりは外の方がましです。籠もっていた気分も、晴れ晴れと開放されるに違いありません。
 タイミングよくジェイダス杯の話題があったので、柚木桂輔はここに来ることにしたのでした。観戦中に疲れて寝てしまったとしても、それはそれで骨休みにはなるでしょう。
「別に、レースなど無理して見るほどでは……」
 そう渋るアルマ・ライラックを、柚木桂輔は半ば無理矢理に連れてきたのでした。
「それはそうと、なんでこんな格好なのですか?」
 露出の高い自分の服を指して、アルマ・ライラックが訊ねました。出かけるために着替えると言ったら、この服を柚木桂輔に着せられたのです。
「いや、レースの応援だから、レースクイーン的な格好がいいかなあと……」
「帰ってもいいですか?」
 アルマ・ライラックに締めあげられる柚木桂輔の横を、ジェイコブ・バウアー(じぇいこぶ・ばうあー)フィリシア・バウアー(ふぃりしあ・ばうあー)が連れだって通りすぎました。その視界に、予想屋をやっているお嬢様たちが映ります。
「おっ、レース予想で賭をやっているのか。面白そうだな」
 屋台で買った焼きそばを持ったジェイコブ・バウアーが、興味を示して出場者リストをながめました。
「買うの?」
「ちょっとした運試しにはいいかもしれないだろ。誰が勝ち残るのか見極める目が俺たちに備わっているか、ちょっとした訓練さ」
 そうこじつけると、ジェイコブ・バウアーがうーんと唸りながら予想を始めました。
「そうだな。このメンバーだと……まあ、普通に荒れそうだな。だとすれば、前回の完走者の中から選んで6番というところか。薔薇の学舎の生徒としても、ここは負けられないだろうからな」
 そう言って、ジェイコブ・バウアーがクリストファー・モーガンの券を執事君に注文しました。男なら、大穴一点買いです。
「見極めるというわりには、大胆な選択なんだからあ」
 まあ、そこがいいのだけれどと言いかけながら、フィリシア・バウアーがちゃんと自分で選手を選びます。
「そうねえ、やっぱり、ここは手堅く本命、過去の優勝者が間違いがないでしょう」
 フィリシア・バウアーが選んだのは、前回優勝者のイコナ・ユア・クックブックです。いわば、本命買いということでしょうか。
「はい、毎度ありがとうございます」
 お金をもらうと、執事君がバウアー夫妻に手書きのチケットを渡しました。
「さて、どちらが勝つかな」
「楽しみですね」
 バウアー夫妻が連れだって観客席へとむかいます。ここしばらくは、任務と休暇が交互にやってきてスケジュールが凄く不安定です。だからこそ、二人でゆっくりできる時間を楽しみたいと、フィリシア・バウアーはしっかりとジェイコブ・バウアーの腕に自分の腕を絡めました。
「さあ、どんどん買ってくださーい」
 執事君が声を張りあげて商売をします。これも、大事な今日の御飯の糧です。
「ほーっほほほほ。意外と儲かりますわね。なんだか、味を占めてしまいそうですわ」
 メイドちゃんにお茶を淹れさせながら、お嬢様がミカン箱に腰かけて高笑いをあげました。どのみち、試合が始まったらとんずらするつもりですから、丸儲けです。
「お嬢様、そろそろ潮時かと……」
「何を言ってるんですの、まだまだこれからですわ!」
 あまり欲をかくとろくなことにならないというメイドちゃんの進言を、お嬢様が一蹴しました。そのときです。
「またこんなことをしている! 何度言ったら分かるんだ!」
 目敏くお嬢様を見つけだしたキーマ・プレシャスが、お嬢様の襟首をむんずとひっつかみました。
「ちょ、ちょっと、お姉様。そんな御無体な……」
「いいからこっちに来い。お説教部屋だ」
「いやー!」
 キーマ・プレシャスが、お嬢様をズルズルと引きずっていきました。執事君とメイドちゃんが、さっさと店をたたんでその後を追いかけていきます。
「どこよ、無断で店出して稼いでたっていう奴らは!」
 わずかに遅れて、魔威破魔三二一と浦安三鬼がその場に現れました。
「逃がしたみてえだな」
「何落ち着いてるのよ、さっさと追いかけなさい!」
 格好をつける浦安三鬼を、魔威破魔三二一が蹴飛ばしました。

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「出力は安定したよ」
 部屋に取りつけた結界装置の様子を見に行ってきた御神楽 陽太(みかぐら・ようた)が戻ってきて言いました。
「御苦労様、あなた」
 娘の御神楽陽菜をだいた御神楽 環菜(みかぐら・かんな)が、御神楽陽太をねぎらいます。
 まだ契約を結んでいない娘のためにツァンダの自宅を改装したわけですが、まだ新しい環境にちょっと慣れていないようです。とはいえ、全てが二人にとって初めてのことなのですから、多少は仕方ないでしょう。それもまたたのしということなのです。
 リビングのテレビをつけると、ちょうどジェイダス杯のテレビ中継が始まるところでした。
「誰が優勝するかなあ」
「三人の中の誰かだといいですね」
 レースに参加したエリシア・ボックたちの善戦を祈って、御神楽陽太と御神楽環菜がテレビを見つめました。