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リリー・ペラドンナの戦い

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リリー・ペラドンナの戦い

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 リリーは付近の建物に飛んで呼吸を整える。
「危ない危ない……私としたことが迂闊だったわ」
 ため息をついたリリー。だがやはり甘かった。そこでまた隙ができた。
彼女の首からネックレスがするりと抜けてひとりでに飛んでいく。
「ま、待ちなさい!」
 流れていくネックレスは建物の下で待機していた小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)の手の平に納まった。
「本当は戦いたくないの分かってるんだからね!優里の話をちゃんと聞いて戻ってきてくれたらこれは返してあげるよ!」
 リリーの顔がを歪んだ。すぐさま美和に手のひらを向ける。
それを見たコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が素早く美和の前に立った。
「やらせないぜ!」
コハクは手に持った【蒼炎槍】から炎を放つ、二つの炎がぶつかり爆発を引き起こし、
爆風に巻き込まれたコハクと美和は吹き飛ばされてしまった。

■■■

 倒れた二人にルカルカ・ルー(るかるか・るー)と優里が駆け寄った。
「大丈夫コハク?」
 ルカルカは倒れたコハクに声をかける。
「ああ大丈夫――予めかけておいた【ファイアプロテクト】が助けてくれたよ。それとルカルカの【オートバリア】のおかけだ」 
 コハクはルカルカにニッコリと笑った。
「しっかり、美和!」
「大丈夫だよ優里。こんなところで負けないんだから。絶対に仲直りさせるんだから」
 美和はネックレスを差し出した。優里は美和の気持ちと一緒にネックレス受け取ると「ありがとう」と頷いた。
「危ない!ルカルカ!」
 優里は叫んだ。ルカルカは炎の攻撃を食らってしまった。
地上に降り立ったリリーがルカルカに向かって手のひらを向けていたのだ。
「な、なんですって!」
 思わず驚きの声を漏らすリリー。
「ふぅ…・・・危なかった。残念だったねリリー。ルカルカを甘く見ちゃ駄目だよ。
【オートバリア】は全員に掛かっているんだから!」
 それだけじゃない。【ナノ治療装置】と【リジェネーション】の効果で先ほどのダメージは徐々に徐々に回復している。
「なーるほど。大したダメージは与えられないみたいね・・・・・・それなら!」
 リリーは地を蹴り、握った剣をルカルカへ振り下ろす。
「そう来ると思ったよ!」
 ルカルカは振りかざされるリリーの剣を【混沌の楯】で受けとめ、【覇王の神気】を巻きつけた。 
「ぐっ!」
「好きで戦っているようには見えない、なぜ戦うの!」
「――私だって負けるわけにはいかないのよ、契約者たちを倒せばドグマ教の一員に戻れるんだから」
 2人は一旦距離をとる。
「ルカルカの話を聞いて!ゴワンが閉じ込められているの!」
「なんですって!ゴワンが!」
「そう。神殿の地下で彼は動けないでいるんだよ」
「どこでその情報を!」
「俺に掛かれば造作もない」
 突如現れたのはダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)だった。
「リリー悪いことは言わない。ドグマ教から離れて俺たちの仲間につくんだ。
よく考えてみろ。たとえ俺達に勝ったところでお前たちのボスは本当に一員と認めてくれるのか?」
「確かに……あの掟に厳しいウェスペルなら認めないかもしれないわねぇ……分かったわ。私が間違ってた。降参するわ」
「やったあ!」
 ルカルカは声を上げて喜んだ。
「ちょっと頼みがあるんだけど、えっとたしか――【オートバリア】だったかしらぁん?」


 2人の様子を離れたところから見ていたダリルの顔が歪んだ。
「ん?何をやっているんだルカルカ、リリーに向かって手をかざして……危ない!ルカルカ!」
 リリーはルカルカへ斬りかかった、驚いたルカルカはなんとか回避する。
「どういうこと!いきなり斬り掛かってくるなんて」
「甘ちゃんね!簡単に考えを変えるわけないでしょう!」
「嘘だったみたいだな。そう簡単にはいかないか」

■■■

「一旦接近しよう。私ならリリーを説得できるはず。このネックレス巧く使えば……お願いルカルカ、力を貸して!」
 優里は頼み込んだ。
「分かったよ。どうやらアレを使うしかないみたいだね」
 ルカルカはダリルを見つめた。
「了解。ゴワンを救出する前にリリーをどうにかしないとな」
 ダリルは懐を探り、爆弾のスイッチを取り出し、ボタンを押した。 
 遠くで爆発の音がする。
 リリーは驚いて振り返った。彼女の視線の先で白い煙が灰色の雲へと上がっている。
優里はリリーの隙を突いて屋根の上に飛び乗った。二人は対峙する。リリーを睨みネックレスを投げた。
「力づくでいくわよ!」
リリーは素早くネックレスを身に着けると舌打ちをした。
「たあぁー!」
 優里は装備していた剣を抜いて斬りかかった。
リリーは回避する。次々と飛んでくる斬撃を回避していく。
強気だったリリーだが。いざ、優里を目の前にして戦うとなると、まったく手が出せなった。
優里はリリーの足へ光の玉を放つ、攻撃が当たるとリリーは崩れてしまった。
「本当は戦いたくないみたいね。ぜんぜん動けてないじゃない」
「あらあらそれはユーリだってそうでしょ?ちょっと驚いて転んじゃったけど。何?この攻撃は?全然痛くないじゃない」
 リリーは立ち上がろうとするが、優里は彼女の喉元に刃を突きつける、
そしてそのまま刃を移動させ、刃をネックレスの鎖に引っ掛けた。
「戻ってきてリリー。大変な生活になるかもしれいけど。時間はかかるかもしれないけど。またやりなおせるよ」
「――ありがとうユーリ。でもねあなただけじゃないのよ。お友達はドグマ教にだっているわけ」
 素早く剣を捌くと、建物の下へ降り立った。
「あ・・・・・・あら?」
 リリーはそこで動かなくなった。いや、動けなくなった。着地した場所がまずかった。
「これで2度目ですね」
 姿を隠していた紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が姿を現した。
 そう、リリーは唯斗の設置した【不可視の封斬糸】に掛かってしまったのだ。
「ぐっ!2度もひっかかるなんて我ながら情けないわね!」
「抵抗は無駄です。【不可視の封斬糸】は奈落人の動きを封じますから」
「ぐっ……私は勝つ!負けるわけにはいかない!」
「既に仲間のペステたちも倒されました。もはや、残っているのはリリー一人だけですよ」
「いいえ私は勝つわ!私はドグマ教のリリー・ペラドンナよ!」


 そのときだった。リリーへオレンジ色のエネルギーが集まっていく。
「この魔力は!」
 驚いた唯斗はエネルギーの流れを元を辿る。その先には倒れたペステがいた。
倒れたペステからリリーへエネルギーが集まっていく。
 唯斗はスキルを使ってエネルギー源となっているペステたちを攻撃、直撃を受けたペステはバラバラに砕け散った、しかし。
「ぐおおおおおッ!!」
 獣のように低いを声を練り上げながらリリーは体中に絡んだ糸を力任せに解いていく。
「封印糸が!そんな馬鹿な!身動きなんてできないはずです!」
 そしてついに【不可視の封斬糸】の拘束を解いてしまった。
リリーは優里に向かって炎がを飛ばしてきた、唯斗は咄嗟に優里を担いで回避する。
「かわされたか!」
 怪しい声だった。それはリリーの声ではない。男の声だった。