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そして、物語は終焉を迎える

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そして、物語は終焉を迎える

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7、そして、物語は終焉を迎える




「よかったのう、ファンドラ。この大陸は、いずれ滅びるそうじゃぞ」
 かか、と笑いながら辿楼院 刹那(てんろういん・せつな)ファンドラ・ヴァンデス(ふぁんどら・う゛ぁんです)に向かって言った。
「……いつになるかわからない不確定なものなど、なんの意味もありませんよ」
 ファンドラは息を吐いて言う。
「目的も筋違い、死んでしまった上に、『邪石』も確保できず、とはな。見事な無駄骨だったのう」
「そうでもありません。例の少年の言葉には、調べる価値のあるものもありました。小さな一歩ですが、まあ、ないよりマシですよ」
「そうか。それはよかったのう」
 刹那は息を吐いて空を見上げる。
 暗殺者という家系上、アーシャルと知り合う機会はなかった。
 それでも、もしどこかで彼女に知り合っていたら、自分はどう感じていただろうか。
 彼女の抱える絶望を闇と見たか。
 彼女の抱える背景を光と見たか。
 今となってはもう、その答えすらわからない。
 自分と比べれば、遥かに彼女は光に生きていたのではないか、とも思う。「自分が闇だ」なんて称するのはなんというかこそばゆいが、正直、自分は光の当たる場所よりも、闇のほうがお似合いだ。
「マスター刹那、誰カガコチラニ、近ヅイテイマス」
 イブ・シンフォニール(いぶ・しんふぉにーる)が言い、女王・蜂(くいーん・びー)が身構えるが、
「ここは素直に退いておきましょう。なんの計画もない以上、正面からは戦えないでしょう」
 ファンドラは素直にそう言い、歩き出した。
「主様?」
 が、刹那はじっと崩れた洞窟を見ているだけで、動かない。女王蜂が話しかけるも、刹那は答えなかった。
 もし――もしも、あの少年と以前に知り合っていたとしたら、どんな会話をしていたのだろうか。
 あの少年が見ているものを、自分も見られただろうか。あの少年が感じたことを、自分も感じただろうか。
「ふん……」
 そこまで考えて、刹那は考えを捨てた。
「帰るぞ」
 そして、振り返って言う。「はい」「了解シマシタ」と女王蜂、イブが答え、刹那のあとに続いた。




 その後の調査で洞窟の捜索も行われたが、洞窟内にアーシャル、そしてその息子、さらには蜃気楼ですら、見つけることは出来なかった。
「奥の奥で眠っているのですかねえ」
 フィリシア・バウアー(ふぃりしあ・ばうあー)は息を吐いて言い、作業員に指示を出しているジェイコブ・バウアー(じぇいこぶ・ばうあー)をじっと見つめた。
「万事解決……というわけには行かなかったわね」
 水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)がフィリシアの近くで口を開く。
「事件の解決としては最悪の形だものね」
 少し近くを歩いていた長曽禰 ジェライザ・ローズ(ながそね・じぇらいざろーず)も、近くに来て口を開いた。
「それもあるけど、あの子の言葉よ。結局、アーシャル・ハンターズが関わったテロリストや裏の組織、わからずじまいだったわ」
 リネン・ロスヴァイセ(りねん・ろすヴぁいせ)が腕を組んだまま言う。
「辿楼院さんたちも逃がしましたからねえ。ゆかりさんの言うとおり、万事解決ではありませんわ」
 ユーベル・キャリバーン(ゆーべる・きゃりばーん)は地面に落ちていた石を拾いながら言う。
 本当にただの石ころだったのか、ユーベルは拾った石を手のひらの上になんどか転がすと、少しだけ振りかぶって、遠くへと投げた。
「これは……機昌石だね」
 駆けつけたアゾート・ワルプルギス(あぞーと・わるぷるぎす)は、デメテール・テスモポリス(でめてーる・てすもぽりす)がアーシャルから奪い取ろうとした石を手にし、そう口にした。
「蜃気楼、あれは機昌姫だったんだろう? だったら、それに関わるアイテムかもしれない。オリジナルの機昌姫からなんらかの力を使って、クローンを作った……そんな感じかな」
 あごに手を当てて言う。
「結局、『邪石』もなかったみたいだね」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)はアゾートの近くに座って、洞窟のほうを眺めながら口にした。
「やっぱ、一朝一夕で出来るようなものじゃないんだろ。『賢者の石』ですら、完成してないんだから」
 ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は言う。
「で、これを渡してくれたハデスはどこに行ったの?」
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は辺りを見回して言う。
「どこかに行ったわよ。ハデスのことだから、一目で単なる機昌石だと判断したんじゃないの?」
 セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は答えた。
「彼からも詳しい話を聞きたかったところだけど……いつもちょうどいい具合に逃げられるねえ」
 ロゼは息を吐くが、
「今回は、大目に見てあげるべきじゃないかな」
 セレンが軽く肩をすくめて言うと、
「……そうかもね」
 ロゼも同じように肩をすくめ、そう答えた。
「機昌姫、か」
 セイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)は少し空を眺めるようにして、言う。
「どうした、セイニィ」
 そんなセイニィの顔を覗き込んで、武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)が口を開く。
「うん? ううん。結局、ちゃんとした決着はつけられなかった感じだな、って、そこが残念だって思っただけ」
「そうですよねえ。蜂とかがいなければ、勝てたと思うんですけどねえ」
 紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は地面に倒れこんだままそう言った。
「ま、俺はあの子の話を聞いたって、アーシャルに同情もしねえし、かわいそうだとも思わねえ。あの女がしてきたことは許されることじゃねーからな」
 唯斗は手を広げて、空へと向けた。
「たださ……ちっとでも頭冷やしてくれればよかったんですけどねえ。そのまま死んじまった。ったく、悪役ってのは、あんなもんなんですかい?」
 少しだけ顔を上げて、唯斗は牙竜のほうを向いて言う。
「悪が改心をした時点で、それはすでに悪じゃない。彼女は最後まで悪だったんだよ。それを貫き通そうとした。そうじゃないかと思う」
 牙竜は静かに腕を組んで、そう口にする。
「さすがに、自称正義のヒーローは言うことが違うでありますね」
 葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は少しだけ笑いながら言う。
「自称だけというわけじゃないんだけどな……」
 牙竜はそう言うが、
「正義という概念も、人によって違うでありますよ。立場が変わればなにが正義でなにが悪かなんて変わる。あの女にとっては、それが正義だと、正しいことだと信じていたのではないですかね」
 吹雪がそのように返すと「そうだな」と返し、
「すべての感情を殺して、自分が正しいと思う行為を行う、か。そういう解釈をするとあの女――アーシャルは、正義のヒーローにだって、なれたのかもしれないな」
 徹底的な悪は、正義の裏返しでもある。
 許されることではなかったとはいえ、彼女は自分の行為を一切恥じなかった。恥じていたのかもしれないが、それを表に出さなかった。
 その潔さは、例えそのような人物でも、敬意に値するものだった。牙竜は地面に【レーザーブレード】を突き刺し、それに両手を置いて静かに、目を閉じた。
「シャンバラに出す報告書を……秘密結社オリュンポスは秘密結社でしたと適当に花丸付けておけばいいか」
 武神 雅(たけがみ・みやび)は【テクノコンピューター】をいじりながら口にした。
「大目に見るのか、見ないのかどっちだ、みやねぇ」
 牙竜は言うが、
「どちらにせよ、話は聞いたほうがいいだろう? 奴らに話を聞けば、テロリストのこともわかるかもしれないぞ」
 言い、セイニィにデータを渡す。
「セイニィ、政府への報告書の提出頼む。愚弟は持ち帰ってよし。たっぷりいちゃつけ」
「み、みやねぇ!」
「なななななに言ってるのよ!」
 牙竜とセイニィが同時に反応する。
「そうですねえ。さっきは私も裸を見られましたし、おそらく牙竜も興奮しているでしょうから」
 龍ヶ崎 灯(りゅうがさき・あかり)が口にした。「してない!」と牙竜は真っ赤になって否定する。
「今なんか魅力的な単語が出てこなかったっ!?」
「いや出てないから。とりあえずソラ、よだれ拭こうな」
 顔を出したソラン・ジーバルス(そらん・じーばるす)を、ハイコド・ジーバルス(はいこど・じーばるす)が制した。
「さ、みんな。私たちの里が、すぐそこにあるの。こんなところで座り込んでいるのもなんだし、里に来てよ。武器のメンテとかも、してあげるから」
 ニーナ・ジーバルス(にーな・じーばるす)が、立ち上がって口にする。
「ほらお兄ちゃん、まだ本調子じゃないんだから、少しだけ、休んでいこ?」
「そうだな……まだどことなく体がダルい」
 酒杜 美由子(さかもり・みゆこ)の提案に、酒杜 陽一(さかもり・よういち)が口にする。
「オレもちょっと休みたいよ。せっかくだから、お邪魔するかな」
 ジブリール・ティラ(じぶりーる・てぃら)が言い、
「私もそうしたいです。マスター、いいですよね?」
「ああ、せっかくだからな」
 フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)ベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)に手を引かれて立ち上がる。
 そうやって、崩れた洞窟をあとにし、皆はニーナの案内で、歩いていった。
 残ったのは、静寂だけ。
 この場所にあった、多くの物語はそこで――幕を閉じた。

 

 
 すべての物語に幕が下りたわけではない。
 解決すべき問題は、まだ残っている。
 それでも、彼女を中心とした――アーシャル・ハンターズを中心とした物語は、幕を下ろした。
 集まったものの心に多くのものを残し、彼女は、この世界を去った。
 迫り来る運命に絶望し、誰の助けも借りず、誰の助けも借りれずにいたひとりの女性。そして、そんな女性の孤独を、支えることが出来なかったひとりの少年も、彼女と運命を共にした。


 この世界は、いずれ滅びる。
 少年は口にした。
 それがいつになるのか。何百年も先なのか、それとも、すぐそこに迫っているのか。
 答えはない。
 それでも、目の前に広がる運命を目にしても、人は絶望せずとも生きて行ける。
 それを誰かは絆のためと言った。
 それを誰かは希望のためと言った。
 誰かはそれを、物語があるからだ、と口にした。
 世界は回ってゆく。動いてゆく。
 滅びるという運命を孕んでも、動き続ける。
 世界は続いてゆく。


 いつまでも、終わらない。




「うん?」
 アゾートは机に向かっていた手を休め、振り返った。
 この場所には自分しかない。誰かがいるなんてありえないはずだ。
「気のせいかな」
 アゾートは再び机に向かう。今回の件を、例の教授にも報告するためだ。
 アーシャルが持っていた謎の機昌石は、彼女が預かっている。それが一番いいだろうと、そういうことでそうなった。
 アゾートはもう一度振り返り、持って帰ってきた機昌石を見つめる。蜃気楼と関わりがあり、皆が言っていた謎の空間とも関係のある石。
 もしかしたら、なにかいろいろとわかることがあるかもしれないな……
 アゾートはそんなことを思いながら、彼女の悲願である、『賢者の石』の完成のため、これからなにができるのか、と、いろいろと思考を巡らせた。
 そして、机に向かって文章を書き進める。

 彼女の後ろで、機昌石がぼう、と、青い光をわずかに放った。



担当マスターより

▼担当マスター

影月 潤

▼マスターコメント

 

 
 
 と、いうわけで、初めましての方は初めまして。お久しぶりの方には、いつもありがとうございます。

 影月潤です。今回、僕のシナリオに参加していただいて、ありがとうございました。

 
 さあ、三部作ということでお送りしておりました、テロリスト三作品、いかがだったでしょうか。
 最後は最終決戦に舌戦、ネタばらしと、実に盛りだくさんでお送りさせていただきました。最後だし。
 だからすっげえ難しかった! なんじゃこりゃー! <おいこら

 特に舌戦に関しては、みなさんが思っていることを僕が代弁することになってしまったため、みなさんの思想や心情、思ったことと違うぞという人がきっとおられると思います。
 ほかにも、ここでこう言いたかった! とか、そういうのもあるでしょう。本当にごめんなさい。

 ちなみにですが、わかる人はわかるという感じですが、今までの僕が書いたいくつかのシナリオが、今回の作品郡と連動している形です。


『モンスター夫婦のお宝』 同じ舞台。

『恐怖の館へようこそ』  関連している。

 
 という感じです。
 『夫婦のお宝』に関しては、実はあのときにもアーシャルさんいたんじゃねえ? というちょっとした矛盾に直面しております。そのとき僕を勇気付けた言葉が、こちらです。「まあいいか」<おい
 

 アーシャルさんに関しては、まあ、読んだとおりです。掘り下げつつも、あまり長くならないようにいやまあ十分長かったんですけどねっ。
 悲劇のヒロインという感じが強くなりましたが、決して彼女は善人ではない。なので、彼女の抱える善の部分は、基本的に息子に全部預けました。

 このあたりも、それこそ、多くのご意見があると思います。


 あと蜃気楼もね。「こうだろ!」とか「こうじゃないか!」との、多くの方の予想を見させていただきました。結果、考えていた案から見事に予想の中になかった案を使わせていただきました。<おいこら

 一応設定とかとは照らし合わせていますが、もしかしたら矛盾があるかも……? やだ、見つけられたらどうしましょう。そういう指摘も大好きだけど!<おい

 今回のシナリオはまさに僕の世界観を、みなさんのアクションを参考にしつつ僕の感性で描いた、という形です。
 お楽しみいただけたなら幸いです。異なる意見を持っていただくのもいいでしょう。つまらなかったー、という人には、本当にもう、謝るしかありません。


 それと、今回も、アクションの中で意外と不採用にしている点が多かった形になっております。中には「これを使って欲しかった!」という方もいらっしゃったかもしれないのですが、その辺りは、採用できずに申し訳なく思っております。




 もしそういったご意見ご感想などがありましたら、是非ともお気軽に、ご指摘ください。

 ご感想なども、いつもいつも様々な感想をいただいて、本当に感謝です。

 みなさんの言葉の一つ一つが、僕の支えになっております。



 アーシャルさんは亡くなりました。少年も、洞窟の中です。
 それでもちょっとあとに残る終わり方にしたのは、すぱっと終わらせるべき物語ではなかったな、と感じたからです。
 自分勝手に作った物語ではありますが、みなさんの心の中に、なにかが残ってくれたんでしたら、作家として、これほど嬉しいことはありません。

 最後に、みなさんと一緒にこの三部作を描けて、僕は最高に幸せ者です。本当に、ありがとうございました!




 http://www.geocities.jp/junkagezuki/  


 僕のHP、『影月 潤の伝説の都』です。もしよろしければどうぞ。
 規約により、「蒼空のフロンティア」プレイヤーさんへのお返事などは行えませんので、ご了承いただきたく思います。



 以下NPC考察


・アゾート・ワルプルギス


 相変わらずの出番多め。

 解説役なので洞窟には参加しておりませんが、かなり印象に残るキャラです。それとなぜかバーストエロスと息がぴったり。なんでだ。
 


・セイニィ・アルギエバ

 戦闘の盛り上げ要員。
 彼女がいると一緒にいたいわという人は多いです。やだ大人気。

 それに、一作目に蜃気楼と戦ってますからね。決着という意味でも、参加してもらいました。

 全員に言えることですが、決着ついてないんだけどね!



 以下オリキャラ考察



・土井竜平。バーストエロス


 キーキャラですが、今回は説明に回った感じ。仕方ない。だって、少女から蹴りを食らったんだもの。
 名乗りのシーンその2、ちゃんとした名乗りが出来なかったのでほんわかするシーンを加えたら、なぜかハデスさん(十六凪さんだけど)とか同調。なんでだ。



・皆口虎之助 ハイパーエロス


 なんでいたの? という存在感のなさ。ええ、ついてきただけです。
 彼――あ、いや彼女の初登場時、竜平は槍だからこいつは斧にしようと考えていたのですが、結局採用されることもなく今日に至り、最終的には役立たずキャラに。なんでだ。




・アーシャル・ハンターズ  

 三部作の裏にいた人物。「黒幕」と書くと実は語弊があるという微妙さ。
 上に書いたとおりです。悪い人です。でもいい人です。いいえ悪い人です。
 そんな、角度によっては違うイメージを、今回は意識しました。
 もちろん、みなさんにとっても、違うと思います。
 そういう、いろいろな見方ができる、というキャラの立ち方で、書いてみました。


・アーシャルの息子

 初登場ですが、三部作当初から考えていたキャラ。
 実は本名は僕の昔書いた小説の主人公と一緒。たぶん誰も知らない。

 語り部です。NPCの癖にしゃべりすぎですが、まあ、仕方ない。

 彼も、見ようによっていろいろ変わる人物だったりします。いろいろな角度から掘り下げてもいいかも。


・蜃気楼

 これも上に書いた通り。
 圧倒的な強さの裏には、やはりなにか、秘めたものがある、というのがある種、僕の考えです。
 そんな、圧倒的な強さの裏にある強い感情が表に出ないよう、ただひたすら戦闘マシーンとして描いておりました。

 すげえ強いとかいっていたわりには、今回はぼろぼろだったけどね。
 まあ、さすがにいいかな、というのと、みなさんのアクションから、こっちを強く出来そうになかった。
 三部作という作品ならではの形ではないでしょうか。とか言い訳を言ってみたりする。<なにか後悔しているらしい



 以下は個別コメントは、皆さまへの簡単な感謝の言葉とアクション等への感想となります。
 それと、皆様に称号を贈らせていただきました。
 まだまだ面白い称号をつけられないのですが、喜んでいただきますと幸いです。