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昔を振り返り今日を過ごし未来を見よう

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昔を振り返り今日を過ごし未来を見よう
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リアクション

「随分慌ただしいみたいね」
 『シャーウッドの森』空賊団運営を後背に任せて引退したヘリワード・ザ・ウェイク(へりわーど・ざうぇいく)が戻って来た。リネン・ロスヴァイセ(りねん・ろすヴぁいせ)の結婚を機に単独行動が増え、今回もその途中だったりする。
「あ、ヘイリー。今空賊団を自警団として再編中よ」
 気付いたリネンはやって来て状況を話した。
 そこに
「お久しぶりですねぇ」
 ミュート・エルゥ(みゅーと・えるぅ)も寄って来た。
「元気そうね」
 ヘリワードは嬉しそうにミュートを迎えた。
 その時、ミュートを呼ぶ声がし
「あらら、呼んでるので行きますねぇ。また後でお話しするですよぉ」
 ミュートはそそくさと仲間の所に行ってしまった。

 ミュートが行った後。
「これまで色々あってリネンもあたしも変わったけど、ミュートも変わったわよね」
「そうねぇ、最初は敵対していて……まさか仲間になるなんて思いもしなかったものね」
 ヘリワードとリネンはミュートの姿を目で追いながらしみじみと空賊時代、ミュートの空賊団と直接対決した時の事を思い出していた。義肢だらけのミュートではなく生身の体でリネンが現在の伴侶とまだ大切な相棒という関係でヘリワードが現役だった頃の事。

 現在の2024年から数年前、タシガン空峡。

「今日こそ仕留めてやるわ、『喧し鳥』」
 『シャーウッドの森』空賊団副団長リネン・エルフトと
「残虐な強盗殺人で亡くなった犠牲者のためにも」
 リネンの大切な相棒フリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)
「このまま追跡し上手く討伐するわよ。一匹残らずね」
 『シャーウッドの森』空賊団団長ヘリワードは商船を狙い残虐な強盗殺人を繰り返す空賊団『喧し鳥』を討伐すべく追跡していた。

 一方。
「ぞろぞろやって来たみたいですねぇ。ここで陽動をかまして分断しましょうか」
 追跡されている事なんぞすでにお見通しの『喧し鳥』はちょっとばかり数を減らそうと陽動作戦を実行。

 それにより空賊団 親衛天馬騎兵は『喧し鳥』の追撃を交わしては反撃をしたり激しい空中戦を繰り広げる事となり
「親衛天馬騎兵が相手にしている隙に行くわよ!」
「あのままではいずれ……」
 リネンは追撃を続ける事を決めヘリワードは激戦の末を予見し僅かに眉をピクリと動かす。
 ここで
「親衛天馬騎兵の事は私に任せて」
 フリューネが親衛天馬騎兵を助けるべく駆けて行った。
「フリューネ!?」
 単身突っ込むフリューネを止めようとするリネンに
「心配無いわ。ここを片付けてから追いかけるから」
 そう言い置きフリューネは槍を握り締め行ってしまった。
同時に
「リネン、手勢は僅かとなったが追跡を続けよう」
「えぇ(フリューネ、無事でいて)」
 ヘリワードの指示通りリネンは大切な相棒の身を案じながらもわずかな空賊団員を率いて追跡を続けた。

 そして、とうとう
「追い詰めたわよ、『喧し鳥』」
「観念する事ね」
 リネンとヘリワードは『喧し鳥』を追い詰める事に成功し、相手を睨み付けた。
「……観念ですか」
 『喧し鳥』には慌てる様子は一つも無く
「……ふふ、かかりましたねぇ……」
 寧ろ余裕の笑みさえ浮かべリネン達を睨んでいた。
 それを見た瞬間
「ま、待ち伏せ!? それじゃ、あれはもしかして陽動!?」
「罠っ……つまり追い詰めたつもりで、追い詰められてたようね……!」
 リネンとヘリワードは悟った。地力でリネン達に負ける『喧し鳥』は陽動でリネン達の仲間を巧みに分断し各個撃破が出来るまでに手勢を減らしたのだと。陽動の仲間を犠牲にしてもリネン達を追い詰めようと冷徹かつ巧みな指揮で。
「さすが、察しがいいですねぇ。そうです、今日の獲物はあなたたちですよ、『シャーウッドの森』」
 『喧し鳥』はにやにやと嫌な笑みを浮かべつつ銃火器の照準をリネン達に向けると同時にぞろりと『喧し鳥』に負けるとも劣らぬ非道な仲間の空賊達が現れ、リネン達を囲んだ。
「では皆様、存分に♪」
 『喧し鳥』はパチンと指を鳴らして合図を送るやいなやリネン達を血祭りに上げようと襲いかかり始めた。
「ヘイリー、このままでは、私達……」
「分かってる。親衛騎兵は……まだ合流に来ないわね。本当、やってくれるわ」
 リネンとヘリワードは剣を振るい、襲い来る敵を葬っていくのだが、数が圧倒的にこちっらが少なく脳裏に嫌な未来がよぎる。
 それでも
「はぁぁ!!(フリューネは大丈夫かな)」
「てやぁぁぁ!!(まずいな。この手勢では全滅も時間の問題)」
 リネンとヘリワードは必死に戦う。傷を負いながらも一人でも多く倒そうと。陽動に行ったフリューネの心配と自分達の未来を案じながら。

「『シャーウッドの森』と聞いて多少期待しましたが、こんなにもあっけないとは残念ですねぇ。もう少し面白い物を見せてくれると思ったのですがねぇ」
 『喧し鳥』は銃火器を操り容赦無くリネン達の手勢を葬りじりじりと追い込んでいく。口調は現在と同じだがその様子は現在とはかけ離れおり残虐なドSな性格を惜しげもなく披露していた。
「……やっぱり、ここは大きい獲物のさえずりが聞きたい所ですよねぇ」
 『喧し鳥』は雑魚ではなく手下の相手で手一杯のリネン達を狙い、銃火器をぶっ放そうとした瞬間
「待たせたわね!!!」
 フリューネの高らかな声が響き渡り
「フリューネ!?」
「どうしてここに」
 リネンとヘリワードは一様に驚いた。
「……嫌な予感がして、戦闘を途中で切り上げ追いかけて来たのよ……そしたら案の定」
 戦闘している内に何かおかしいと感じたフリューネは急いでリネン達を追いかけたのだ。
「……みんなは、みんなは無事?」
 リネンは親衛天馬騎兵の無事を確認した。現れたのフリューネ単体だったから。
「えぇ、何とか。でも人員は割けないからここに来る事が出来たのは私だけ」
 フリューネは口元に僅かな笑みを浮かべて答えるなり『喧し鳥』に視線を向けた。
「一人増えた所で運命は決まってますよぉ。しかも傷だらけ」
 『喧し鳥』は嗤うと同時に銃火器で攻撃を仕掛けた。言葉通りフリューネは割と強い陽動との戦いで軽傷ではあるが身体中に傷を負っていた。
「フリューネ!!」
 リネンの声が響く中、
「……」
 フリューネは容易く回避すると同時に
「非道は今日限りよ」
 槍を構え、光よりも早く『喧し鳥』目がけて空を駆ける。
 自分を狙い飛ぶ攻撃を巧みに避け、間合いを詰め
「はぁぁぁ!!!」
 フリューネが一閃を繰り出そうとするが
「チャンスはそちらだけじゃないんですよ」
 槍の射程の範囲まで攻められたというのに慌てる様子は無く
「ふふふ、これなら外す事はないですねぇ」
 『喧し鳥』は攻撃を放つ。
「!!」
 フリューネは攻撃を引っ込め、急いで回避をするが
「フリューネ、後ろ!!!」
 手下の相手をするリネンの声が響く。
「!!」
 慌ててフリューネは敵の背後からの攻撃を回避し、難を逃れ
「……助かったわ、リネン」
 礼を言った。
「あらら、分かっちゃいましたかぁ」
 『喧し鳥』は背後からの不意打ちが失敗し、残念な様子。
 それだけでなく
「しかも元気になっちゃって、このままだと万が一が起きたり……厄介な人が乱入したせいですね」
 『喧し鳥』はフリューネの乱入によりリネンの勢力がわずかに士気を取り戻し自身の力以上を発揮し、予期しない事が起きる匂いが僅かにしてきた。
 結果
「こりゃダメですね。今日の狩りはこれまでですか」
 引き際も肝心とばかりに素速く撤退をしてしまった。

 『喧し鳥』の撤退後。
「……助かったわ。フリューネのおかげで何とか持ち堪える事が出来た(恐るべき敵だったわね。この次こそは……)」
 リネンはこうして生きている事にほっと胸を撫で下ろしつつ『喧し鳥』を強敵と意識し始めていた。
「……いいえ、結局は取り逃がしてしまったから何の役にも立たなかったわ」
 フリューネが力不足に溜息を吐き出すが
「フリューネの乱入で皆士気を取り戻し、予想以上の粘りを見せる事が出来た」
 頼りになるフリューネの乱入で場の空気が変わり助かった事にヘリワードはさすがと感心しする。
「……ありがとう」
 励まそうとしてくれているヘリワードにフリューネは僅かに笑んで見せた。
 この後、『喧し鳥』と再び巡り会い戦いを繰り広げるはずが、訪れた巡り合わせは思いも寄らぬ展開をもたらせた。
「……リネン」
「……えぇ、まさか……こんな形で再び会うなんて」
 ヘリワードとリネンの先には部下に裏切られ瀕死の状態となった『喧し鳥』がいた。かつて遭遇した時のあの悪辣な笑みはどこにもない。
「……ひどいな……」
 ヘリワードが思わず声を洩らすほど『喧し鳥』の肉体の欠損は酷く左翼以外は全て失っていた。
「……」
 リネンはそっと『喧し鳥』に近付き始めた。
「……リネン」
 何をするのか見当がつきつつも決めるのはリネンであり自分ではないためヘリワードは静かに見守っていた。万が一を警戒しながら。
 ヘリワードに見守られながらリネンは『喧し鳥』に
「……従属するならば、救助をするわ」
 と囁いた。瀕死とはいえ『喧し鳥』自身危険人物のため、ただ助けては再び悪行を繰り返す可能性もあるため救助の代価に従属を交渉の場に置いた。
 すぐに『喧し鳥』は風前の灯火の中、残った僅かな力で必死にリネンの交渉に対する答えを伝えた。
 『喧し鳥』が発した答えは
「……答えは伝わったわ、『喧し鳥』」
 しっかりとリネンに伝わった。
 そして
「……ヘイリー」
「えぇ」
 リネンはヘイリーと共に行動を開始した。『喧し鳥』を救助するために。
 その際、『喧し鳥』が何かに目覚めてしまったのかドMに覚醒し、これ以降二人をご主人様と慕う事に。
 『喧し鳥』の体は両手足、右翼、左目は機械化された異形の姿となり残された左翼から辛うじて有翼種天使と判別出来るという有様に落ち着いた。
 当時の通り名の『喧し鳥』は罪状が多いため表向きに別人扱いをするためミュートと偽名に変えて『喧し鳥』は裏切り者に殺された事にした。
 その後、ミュートはリネン達と共に歩く新たな人生を始めた。

 現在、2024年。

 回顧を終えた後。
「……もしかして手術、失敗してたのかしらね……敵対していた時と契約した時でキャラが違うもの……すっかり慣れたけれど」
「そうよね。味方になれば心強い、とはいえねぇ」
 リネンとヘリワードは昔を思い出すと今のミュートの変わりように戸惑ってしまう。何せ悪辣なキャラがすっかりほえほえドMキャラになってしまったのだから。