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そして、蒼空のフロンティアへ

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そして、蒼空のフロンティアへ
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空京商店街へ



 オリュンポスが暴れたためにいろいろと壊された空京でしたが、大晦日までにはすっかり修復も終わり、空京商店街ではそれを祝って盛大にお祭り兼年末大売り出しを行っていました。
「へーえ、パラミタには、いろんな集まりがあるんだなあ」
 シャンバラ宮殿の貸し会議室のフロアで行われていたのがコミュニティ・フェスティバルでした。
「ゴチメイ隊・プチ、新規隊員募集中でーす」
「新たな能力にめざめた方。新能力について、語り合いませんか?」
自由研究発表サークルでは、過去の自由研究の資料公開中でーす」
 様々なギルドが、それぞれ趣向を凝らした研究発表の呼び込みをしていました。
 シンロン・エウテルペが、物珍しそうに、それぞれのブースを巡っていきます。今日は遊びに来ているので、ちょっと着崩したTシャツにスラックスに編み上げのロングブーツというラフな出で立ちの上に、分厚いダッフルコートを引っ掛けています。細くてフワフワした金髪の下で大きな瞳がくりくりと動き、ふくよかな唇がブースの説明員にいくつもの質問というか、世間話を浴びせかけていました。

    ★    ★    ★

 空京公園では、ペットレースが開催されています。
「そうれ、頑張れー」
 黒いレギンスを垣間見せるように白いワンピースを風にはためかせながら、タンサ・メルポメネが、背中に取りつけた翼で宙に舞いました。眼下には、小さなペットたちが、一所懸命に、レースを展開しています。
『さあ、折り返し点を過ぎました。おおっと、トラ、猫カリカリに引っ掛かった。その間に、納羽がトップに躍り出る。それをドタドタと追うのは、ミニうさティー軍団だ。トビネズミゆるスター、思わずそれを避ける。穴からようやく這い出たむるんがレースに復帰します。先頭集団から離れた中央集団、ふぎむに上目遣いの半分こキャットユズシャクヤクナイト黒猫と、真っ黒軍団だ。これは見分けが難しい。その後を、ポチが一匹だけ離れて、孤高のランニング。さあ、最後尾集団は猫溜まりだ。ミーシャミケタマ、ススキ、モミジボタン、アンズ、三毛猫タマが組んずほぐれつで団子になっている。すでにリタイアした、たくさんのゆるスターや、ポムクルさんや、パラミタペンギンや、ゴーストやゴーレムたちの無念を晴らし、この混戦を制するのはいったいどのペットなのかあ!』
 臨時バイトで実況に入った卜部 泪(うらべ・るい)の声が、響き渡りました。
 はたして、優勝するペットは誰なのでしょうか。

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 空京大学のキャンパスでは、ビューティー・コンテストが行われていました。
「いいなあ、知ってたら、絶対に参加したのにぃ」
 観客席で、もの凄く残念そうにしているのはチュチュエ・テルプシコラです。踊りに長けた彼女は、ウェーブのかかった豊かな黒髪にリボンを編み込み、薄い紗の布を重ねた服の上からでも、シルエットでしなやかなボディラインがはっきりと見てとれます。もう、ステージに上がりたくてたまらないという感じで、うずうずしているようでした。
 ステージでは、ラナ・リゼット(らな・りぜっと)を魔鎧として纏った泉 美緒(いずみ・みお)が、ちょうど挨拶をして戻っていく所でした。相変わらずの露出の高い装備で、観客の目は、その豊かすぎるたっゆんと、ボリュームのある縦ロールの銀髪野崎からチラチラと垣間見えるヒップに釘づけです。
 続いてステージに登場したのは、マレーナ・サエフ(まれーな・さえふ)です。衣装は、エプロンと……ええと、一応ちゃんと下着というか水着というかはつけているようですが、正面からだとエプロンしか着けていないように見えます。観客大興奮です。
「凄い歓声だな……」
 ステージ裏でスタンバっていたダイヤモンドの 騎士(だいやもんどの・きし)が、ちょっと緊張しました。けれども、全身鎧の着ぐるみを着ているため、その表情は分かりません。というか、なぜ参加している……。
 そこへ、野太い歓声に送られながらマレーナさんが戻ってきました。
「いよいよ、私の番であるな。緊張する……」
「まあ。でも大丈夫ですよ。そうだ、クルリと一回転すると、とても受けますよ」
 緊張するダイヤモンドの騎士に、マレーナ・サエフが天然のアドバイスをしました。
「クルリと一回転だな。よし、わかった」
 そう答えると、ダイヤモンドの騎士は、ステージへと登っていきました

    ★    ★    ★

「パラミタって、いろいろなファッションがあったんだね」
 美術館にいたのは、パイフ・エラトでした。金髪を頭の高い位置で短いツインテールにし、ミニ着物を着てぽっくりを履いています。見た目と一緒で、とても可愛らしい声をした少女です。
 ちょうど、美術館ではパラミタの衣装展が行われていました。
 各学校の新旧制服や公式水着、また、かつてろくりんピックで使われたユニフォームなど、さまざまな制服が展示されていました。
 蒼空学園の展示では、雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)がバイトで新制服を着て説明をしていました。
 百合園女学院の展示では、イングリット・ネルソン(いんぐりっと・ねるそん)が新制服の説明をするなど、各ブースにモデルさんがいます。
 葦原明倫館では、真田 佐保(さなだ・さほ)ゲイル・フォード(げいる・ふぉーど)が忍者衣装で注目を集めていました。
「なんで、私だけ季節外れな……。この、よすぎる、スタイルのせい? くしゅ、はくちゅん!」
 なぜか、教導団の公式水着を着るはめになった李 梅琳(り・めいりん)だけが、ちょっとぼやいていました。

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「まったく、みんなどこに行ってしまったのやら。せっかく、散楽の翁様が、見聞を広めるようにと見学を許可してくださったのに……」
 一緒に来た十二天翔の仲間たちが全員いなくなってしまったことに、ショワン・ポリュムニアが眼鏡を指先でちょっとあげながら、深い溜め息をつきました。もともと先生ふうの見た目もあって、今回の引率役となったわけですが、みんなフリーダムすぎて、あっという間にバラバラです。
 探し回っても仕方ありませんので、集合時間までは自分もゆっくりと見学することにします。つくづく、集合時間だけは決めておいてよかったと思います。
「これは、興味深いですね」
 シャンバラ宮殿前広場で行われていたイコン博覧会に出品されていたイコンを、ショワン・ポリュムニアが興味深そうに見あげました。すぐ横では、シミュレータによって、イコン戦機動要塞戦も楽しめるようです。
 広場に設置された大型スクリーンには、イーグリットのレーザーブレードで一刀両断にされて爆散するコームラントの姿が映し出されていました。どうやら、試合が一つ終わったようです。
「くっそう、今のはインチキだぜ!」
 シミュレータから出てきた山葉 聡(やまは・さとし)がぼやきました。どうやら、負けたようです。
「試合前にナンパしてフラれたりなんかするからですよ」
 サクラ・アーヴィング(さくら・あーう゛ぃんぐ)がやれやれという感じで言います。
「まっ、これもそなたの実力だ」
 もう一台のシミュレータから出てきた、アリサ・ダリン(ありさ・だりん)が、容赦なく山葉聡に言いました。一緒に、辻永 翔(つじなが・しょう)も出てきます。こちらは、勝ち組のようです。
「まあまあ、またいつでも相手してやるぜ」
 アリサ・ダリンをなだめつつも、ちょっと勝ち誇って辻永翔が言いました。