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空を観ようよ

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空を観ようよ
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流れゆく世界

 世界の危機が過ぎて、100年位時が流れた。
 タシガン空峡に浮かぶ小さな島に、世界樹の苗木ちゃんが根付いてから100年近く経っており、成長したその樹の下に、洋館が存在していた。
 そこで暮らしているのは、1人の吸血鬼と眠れる森の美少年、ヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)早川 呼雪(はやかわ・こゆき)であった。
「呼雪は座ってていいよーっ」
「わかった」
 と言いつつ、早川 呼雪(はやかわ・こゆき)はキッチンから離れようとしない。
 今日は大切な友人を家に招待したのだ。
 皆で食べる菓子を、呼雪も自分の手で作りたかった。
 呼雪は、クライン・レビン症候群のような病にかかっている。
 体内に寄生する花の力も一因なのか、体表に花が咲くと目覚め、散ると長い眠りに就く……そんな状態を繰り返していたのだが、意識のない期間が徐々に伸び、現在では、5年前後の傾眠期と短い間欠期を繰り返していた。
 間欠期は数週間、長くてワンシーズン程度。呼雪は、この時期だけ普通の生活が送れる。
 本人の体感では、数年くらいしか経ってないような認識ではあったが、彼が眠っている間も時間は流れており、季節は巡り、人々は成長していき、そして彼が知る多くの人がパラミタから消えて行った。
(俺にとってはつい先日の事なのに、実際には数年振りなんだよな……)
 複雑な思いを抱きながら、呼雪は焼き菓子の生地を練っていく。
 今日、家に招待した相手は神楽崎 アレナ(かぐらざき・あれな)
 呼雪を兄のように慕っていた子だ。
 十二星華として改造された彼女には、寿命というものがない。
 5000年の長き封印から、神楽崎 優子(かぐらざき・ゆうこ)との契約で復活した彼女は、100年経った今も当時とあまり変わらない姿で、パラミタで生きている。

 その日の午前中。
 ユニコルノ・ディセッテ(ゆにこるの・でぃせって)はペガサスでアレナを迎えに行き、その後ヴァイシャリーに訪れていた。
「ヘルからお茶会で食べるお菓子等を見てくるよう言いつかっているのです。
あちらでも準備はしているでしょうが、最近の流行りを呼雪に食べて欲しいのでしょうね」
 機晶姫であるユニコルノは現在18歳くらいの外見に成長していた。
 彼女は色々あって、現在宮殿で騎士をしている。アレナもよく宮殿に訪れる為、時々お茶をしたり、一緒に買い物をしたり、今でも姉妹の様に親しくしていた。
「糖質が多いものとか、乳製品は眠くなりそうですよね……。でもそうすると、ケーキもクッキーも、お煎餅も、ヨーグルトも買えません」
「そうですね……」
 街を歩いて、茶菓子を探していた2人だけれど。
「まぁ……雑貨の方も新商品が入ったようですね」
「ホントです。この小物入れ、使いやすそうです」
「アクセサリーも。これなんてどうでしょう?」
 ユニコルノはイヤリングを、耳に当てた。
「鈴蘭のイヤリングですね、可愛いです。ユノさんに似合ってます」
「こちらは、アレナさん向けですね。月と星のイヤリング」
「手頃な価格ですし、買ちゃいましょうか」
「そうですね。普段用に使いましょう」
 そして2人は、色違いの小物入れと、ユニコルノは鈴蘭、アレナは月と星のイヤリングを購入した。
「もう少ししたら季節もののセールもあるでしょうし、その時はまた一緒にお洋服を買いに来ましょうね」
「はい」
 早速イヤリングをつけて、ユニコルノとアレナは微笑み合った。
 それからユニコルノは茶菓子を、アレナは呼雪への贈り物を買って、タシガンへと向かったのだった。

「2人ともいらっしゃーい♪」
 ドアを全開にして、ヘルはユニコルノとアレナを家に迎え入れた。
「よく来てくれたな」
 呼雪も外へでて、2人に微笑みを見せた。
「呼雪さんこんにちは! ヘルさん、お久しぶりです」
 アレナはぺこりと頭を下げた。
「こんにちは、お邪魔しますね」
 ユニコルノは挨拶を済ませた後、茶菓子の準備をする為に家に入る。
「ユノちゃん、ケーキ出すのも手伝ってくれる? あ、アレナちゃんは呼雪と一緒にお庭に行っててね!」
 そう言葉を残して、ヘルもキッチンへと向かっていった。
「こっちへどうぞ」
 呼雪はアレナをセッティング済みの庭へと案内した。
 ヘルと呼雪の家の庭には、様々な花や草木が綺麗に茂っている。
 薄いピンクの可愛らし薔薇も控え目に咲いていた。
「俺が世話出来ない間は、ヘルがよくやってくれているみたいなんだ」
 椅子に腰かけて、花に優しく触れて呼雪は言った。
「ヘルさん、頑張ってますよね」
「頑張ってる?」
「呼雪さんがお休み中の奮闘記、色々聞いてるんですよ」
 くすくす、アレナは笑っていた。
 ユニコルノを介して何か聞いているらしいが、呼雪には話してくれなかった。
 実は呼雪は、傾眠期にゾンビのように徘徊したりして、ヘルを困らせているのだ。
 呼雪が寝ている間は、お手伝いさんを何人か雇って、皆で呼雪の世話をしたり、庭の手入れを含む、家のことをしているらしい。
 お手伝いさんは、ヘルの趣味で可愛い男の子ばかり。これも呼雪には言わない方がいいんだろうなとアレナは笑ってごまかすのだった。
「最近私、華道の勉強をしてるんです。もっと綺麗に、お花を活けられるようになりたくて」
 アレナは活き活きと近況を呼雪に語っていく。
 彼女は呼雪と出会った頃、死ぬことを願っていた。
 今の時代を生きている自分の姿など、思い浮かべることさえなかっただろう。
「アレナ、この花を覚えているか?」
 テーブルに招き、花瓶に活けてある花を呼雪はアレナに見せた。
「はい」
 薄いピンクの、可憐ながら凛とした強さを持つ花――。
 100年ほど前、薔薇の品種改良に成功した呼雪が、アレナに名を貰った花だった。
「帰りに持って帰ってくれ」
「はい! ……実は、このお花も可愛く自分で活けられたらいいなって思って、それで勉強を始めたんです」
 椅子に腰かけて、アレナは嬉しそうにピンクの薔薇を眺める。
 向いに腰かけて、彼女の顔を見なら、呼雪はかつて彼女の周りにいた人々や、かつての知り合い達の姿を思い浮かべる。
(あの頃、知り合った人々の多くは、もういなくなってしまった)
 アレナのように、変わらず在ってくれる人の方が少ない。
 親しみを抱いていた人々や、尊敬していた人達の姿を思い浮かべると、切なくなってしまう。
「アレナ、家族が増えて良かったか?」
 神楽崎家に入り、結婚をして家族を増やしていったアレナに呼雪は尋ねた。
「もちろんですよ」
 アレナはとても幸せそうな笑みを見せた。
「人は、1人では幸せに生きていけないんです。大好きな人と2人だけでも幸せに生きていけないんです。この世界に、沢山人がいるから、皆と一緒に生きているから、幸せを感じられるんです。
 一緒に幸せを感じあえる家族が増えたら、たくさん、幸せなんです」
 アレナの外見は、出会った頃より少し成長していた。
 彼女の精神も、今では大人になっている。
 かつて、娘や妹のような存在だった彼女が、今では呼雪と対等に意見が交わせるようになっていた。
「あいつは……こんな殆ど抜け殻みたいな俺の傍にいてくれる。
 でも、やっぱり寂しいんじゃないかって」
 今の技術なら、同性同士でも子供を儲ける事が出来る。
「子供がいれば少しは違うかな、と」
「寂しくないですよ。ヘルさんは毎日忙しくしています。ヘルさんには呼雪さんが一番で、誰も呼雪さんの代わりにはならないんです。子供は欲しいかもしれないけど、呼雪さんと話しが出来ない寂しさを埋められるのは呼雪さんだけ。だから、ヘルさんに聞いたら、子供は呼雪さんが元気になってからって言うと思います」
「……そうか」
 はっきりというアレナは、年上の女性のようにも見えた。
 いや、元々年上なのだが……。
「お待たせー! 今日はチーズケーキとベリーパイでーす☆」
 ヘルとユニコルノが、ケーキとパイ、ヴァイシャリーで買った茶菓子を持って訪れた。
 ケーキをテーブルの中央に置き、食器並べて、紅茶を淹れて。
 それから2人も席について、お互いの近況について話しをしていく。
 それは呼雪にとって、本の中の出来事のような話。
 自分が眠っている間に、世界は変わっていくけれど――。
 記憶の中の、少し昔の過去も、こうしてお茶を楽しんでいた。
 記憶が混同し、過去が今のようにも思えてくる。

 変わらない幸せな一時を楽しんだあと、呼雪はまた、眠りに落ちいていった。


「呼雪……呼雪……」
 誰かが呼ぶ声が聞こえる。


 ――俺はここにいるよ、ずっと――

担当マスターより

▼担当マスター

川岸満里亜

▼マスターコメント

川岸満里亜名義の、単独では最後のシナリオにご参加いただきまして、誠にありがとうございました。
皆様の過去や未来のお話、私自身もとても楽しませていただきました。

長い間、ゲームを盛り上げてくださいまして、本当にありがとうございます。
皆様にとても感謝しております。

貴重なアクション欄を割いてのメッセージ等頂きました方、ありがとうございます。
まだ提出前の合同シナリオが3本ありますため、そちらがラストとなる方につきましては、最後のご挨拶はそちらで…と考えております。

もう皆様の新たなアクションをいただくことはないのだな……と考えると、とてもとても寂しくなってしまうのであまり考えないことにしています。
でも、まだこれで終わりだとは思っておりません!
クリエーター有志のファイナル企画にて、皆様とお会い出来ましたら嬉しいです。
詳しくは、川岸のマスターページ等から、企画用ブログ『空の都の遊園地』へお越しくださいませ。

それでは、またお会いしましょう……。