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「神楽崎先輩。ご回復、おめでとうございます」
 未憂は取り囲まれている優子に挨拶をして。
「百合園の方々も、若葉分校の人達も皆楽しそうです」
「そうだな」
 一緒に、会場を見回した。
 パートナーのリンは今もゼスタの側にいる。
 笑い合ったり、からかい合ったりしているように見えた。
(ゼスタさんとリンが一緒にいる様子も、もうずいぶん馴染んでみえるなあ)
 続いて。
「ご回復おめでとうございます。若葉分校の皆は、見てのとおり元気にやっています」
「おめでとーございまーす。いやあよかった。ロイヤルガード続けられてるようで」
 牡丹・ラスダー(ぼたん・らすだー)が、ブラヌ・ラスダーと共に優子の側へと訪れた。
「今日来ているのは吉永番長に従順な子たちだけですので……少し騒がしいけれど、許してください。
 他の皆も優子さんの元気な姿を待ちわびているでしょうし……待ってますね」
「顔を出すのは、たまにでいいんだけどな。けど、ごくたまには顔を出してくれよ」
「ありがとう。そのうち顔を出すよ、突然行くかもしれないがよろしく」
「いや、事前に連絡はくれ。連絡は! ほら、そーちょーサマをお迎えするには、準備が必要だからな」
 優子に突然来られたら、何かと都合が悪いのだ。
 慌てるブラヌ見て、優子はくすっと笑みを浮かべた。
「こんにちは」
 牡丹は優子の後ろにいるアレナにも挨拶をした。
「こんにちは、牡丹さん、ブラヌさん」
 アレナはペコッと頭を下げ、あっとスカートを抑える。
 お辞儀をすると中が見えてしまうほど、スカートが短いのだ。
「ふふ、アレナさん外見は変わらない様ですけど、雰囲気が変わりましたね」
「そうですか?」
「なんと言うか、一本、芯が通った感じがします」
 アレナに何か変化があったことは、風のうわさで聞いていた。
「これからも優子さんや他の皆と協力しあって、楽しい生活を送れるよう頑張っていきましょうね」
 牡丹のその言葉に「はいっ」とアレナは元気に返事をした。

「ドリンクいかがですか?」
 鈴子と、百合園の生徒会長であるアナスタシア、そして生徒会役員たちがドリンクを乗せたトレーを手に近づいてきた。
「ありがとう」
「いただきます」
 優子は緑茶を、未憂は紅茶を貰った。
「今日はありがとう。百合園のホールで行わせて貰えて、とても嬉しい。
 本来なら主催者として私が仕切るべきなのに、全て任せきりですまない。
 それに、快気祝いも兼ねてるとかで、沢山いただきものをしてしまって、恐縮だ」
 優子が、百合園の皆を見回して感謝の気持ちを語った。
「神楽崎さんがこうして企画してくださったからですわ。私はお手伝いをさせていただいただけですもの、お礼を言うのはこちらですわ」
 アナスタシアは少し上気した顔でそう言った。
 今年3月まで優子は百合園に生徒として所属していたけれど、生徒会役員は既に引退していたため、アナスタシアとはあまり話をする機会はなかった。
「百合園女学院とラズィーヤ様を守ってくださってとても感謝していますの」
「そう言ってもらえると、とても嬉しいよ。百合園やラズィーヤさんを守ってくれているのは、キミたちの方だ」
 自分は大した事は出来ていないと優子は言うが、アナスタシアは首を左右に振った。
「それは、神楽崎さんが率先垂範してくださっているからですわ」
「だから、こういう日くらい、お客としてゆっくりしていってくださいね」
「ええそうです。今日は雑務は気になさらず、ただ楽しんでくださると嬉しいですわ」
 アナスタシアと鈴子の微笑みに、優子も微笑んで「ありがとう」と頷く。
「優子さん」
 声を掛けられて優子が振り向くと、ラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)桜井 静香(さくらい・しずか)と共に、側に来ていた。
「後遺症は全くありませんの?」
「もうあまり無茶しないでね。でも、あの時はラズィーヤさんを庇ってくれてありがとう」
 静香は花束を優子に差し出した。
「ありがとうございます。後遺症はもう残っていません」
 優子はカップをテーブルに置くと、両手で花束を受け取る。 
「あの時は、咄嗟に庇ったんだけれど……もっと上手な対処法があれば、な」
 優子の表情が少し暗くなる。
「良かったのですわ。死なない程度に優子さんが倒れていてくださって。あの場で無茶をしていましたら、間違いなく殺されていましたわよ」
「そうですね。庇わせてくださってありがとうございます、というところでしょうか」
 ラズィーヤと優子は軽く笑い合う。
「神楽崎さん、ラズィーヤさん!」
 2人を見つけて、パーティドレスを纏った遠野 歌菜(とおの・かな)が、月崎 羽純(つきざき・はすみ)と共に駆け寄ってきた。
「怪我、すっかり良くなられたんですね……よかった!」
 元気そうな優子の姿に、歌菜の顔に安堵の笑みが浮かぶ。
「ラズィーヤさん、ご無事で……本当に良かったです……!」
 そして、歌菜はラズィーヤには切々とした喜びの目を向ける。
「あの時は、本当に助けられた。ありがとう、遠野。そして、無事でよかった、月崎」
「あの時、神楽崎さんが居てくれたから、一緒に頑張れて羽純くん達を助ける事が出来たんです。改めてありがとうございました!」
「本当に助かった。ありがとう」
 歌菜と羽純は優子に感謝の気持ちを伝え、全快を喜ぶ。
「無事で居てくれて、本当に良かった」
 羽純はラズィーヤのいつも通りの顔を見て、安堵感を覚え、素直な気持ちを口に出した。
「これ、ささやかですがお礼とクリスマスプレゼントです」
 歌菜は感謝の気持ちを込めて作ってきた、クリスマス仕様の歌菜特製クッキーを2人に渡した。
「ありがとう」
 受け取って優子は中を確認して笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。お2人にも辛い思いをさせてしまいましたわね。こうしてまた、皆で集まることができまして、わたくしも嬉しいですわ」
 ラズィーヤも普段通りの優雅な笑みを浮かべている。
「はい!」
 ラズィーヤの言葉に、歌菜は強く頷いた。
「あの……以前教えて頂いたヴァイシャリーの可愛いベビー用品のお店、行く日が近いんです」
 歌菜はちょっと頬を染めて話す。
 彼女は妊娠しているのだ。
「子供が生まれたら、ラズィーヤさんにも是非、会って欲しいのです」
「ああ、そうだな。俺達の子供に、是非会って欲しい」
「ええ、是非連れてきてくださいませ。楽しみにしていますわ」
 歌菜と羽純はラズィーヤとそう約束を交わして微笑み合った。

「優子ォォォォォメリィィィィィクリスマスゥゥゥゥゥゥ♪」
 大きな雑音、もとい歌を発生しているサンタが近づいてきた。
 取り巻いていた女性陣がさっと避けて。
「竜司」
 優子が親しげな笑みを向ける。
「優子には特別なプレゼントがあるぜェ!」
 言いつつ竜司が取り出したのは、お菓子と特製のCD『オレの優子は最強だぜ〜プレミアムバージョン〜』だ。
「ははは……っ。元気が出る曲をありがとう。部屋に飾らせてもらうよ」
「喫茶店のBGMとしても流してるんだぜェ。オレのソロと、分校生達の合唱の2曲入りだ」
 ちなみに歌詞は『神楽崎優子という人物がいかに最強で、でもカワイイとこもあって、実にいい女であり最高の総長である』といった内容だ。
「そうか、ええと……キミの歌声はタダで聞かせるのはもったいないから、分校生の合唱の方だけ流すと良いかもな」
「ああ、皆にもそう言われてなァ! 合唱の方だけ流してるぜェ」
「それならよかった」
(優子の奴……オレの歌を独り占めしたいんだなァ! ホントかわいいやつだぜ)
 竜司は優子の可愛らしさをまた一つ知った……。
「体の調子はどうだァ、こんどいつ分校に来れる?」
「身体はもう大丈夫だ。分校と農家の方の家には、新年の挨拶に行ければと思ってる。数年前のように」
「そうか、楽しみにしてるぜェ! ヒャッ……ホー!」
「竜司」
 優子が竜司に優しい目を向けた。
「なんだァ?」
「ありがとう。ラズィーヤさんを助けに、行ってくれたんだってな。ブラヌたちも」
「ヨメを手伝うのは、当たり前のことだからなァ! 優子が無茶しないですんで、良かったぜェ」
「ありがとうございます」
 ラズィーヤも竜司にお礼を言う。
「若葉分校のこと、これからも応援していますわね。新年には皆様が喜びそうなものを優子さんに持って行っていただきますわ」
 ラズィーヤからの積極的な支援は、かえって問題になる可能性があるから。感謝の気持ちと、ささやかなお礼の約束だけをするのだった。
(オレにプレゼントだとォ!? ラズィーヤ・ヴァイシャリーにまで惚れられてしまったぜェ……)
 もてる男はつらいよと、竜司は一人苦悩するのだった。
「……彼にも感謝すべきなのでしょうかね」
 ラズィーヤはすっと、会場の隅に目を向けた。
 そこには――ラズィーヤを殺そうとした人物。そして、手段はともかく救出にも向かった国頭 武尊(くにがみ・たける)の姿があった。
「ラズィーヤさん、実は国頭のことで少し相談があります」
 優子が声を落として、複雑そうな表情で言った。
「わたくしも、優子さんにお話ししておきたいことがありますの」
 ラズィーヤは扇を休憩室の方に向けた。
「少々外させてもらうよ」
 頂き物を預けてくるためと言い、優子はラズィーヤと共に別室に向かったのだった。