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【創世の絆】その奥にあるものを掴め!

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【創世の絆】その奥にあるものを掴め!

リアクション

 水晶が砕かれたこと自体のダメージは、三郎が考えたようにそう大きくはない。
 だが、砕かれた水晶があった場所からは分厚い外皮に覆われていないイレイザーの肉体へ、直接ダメージを与えられる。この化け物にも痛みを感じることはできるらしく、生物的に「ひるむ」姿が見て取れるようになってきた。
「これなら……!」
 勝利の予感に、相田 なぶら(あいだ・なぶら)の声が明るさを帯びる。強力な契約者たちが何人もそろったこと、イコンにすら通用する武器の存在、そしてこのイレイザーを足すために展開された作戦が功を奏し、戦果を挙げ始めている。
「今度こそ、逃がさないように! 倒せます!」
 リファニーの指揮もますます勢いを増している。
「油断するな、手負いの時こそ、何をするか分からないぞ!」
 その言葉に違わず、イレイザーの目は戦意を失わず、それどころか反撃の機会をうかがっているようにすら見えた。
「……ここで退くわけには、いかない!」
 イレイザーの体勢が変わった。口から何かをはくつもりだ……と判断して、なぶらはその眼前に飛び出した。癒しの魔法を準備しながら、自分の体力が保つようにと祈った。
 だが、イレイザーの攻撃はなぶらの想像を遙かに超えたものだった。
 ごうっ! と帯状のビームブレスが、なぶらの体を通り抜けるように噴き出された。それは周囲一体を巻き込んで照らし……
 痛みはなかったが、異様な感覚があった。体がぴくりとも動かない。
「……なぶら! その姿……!」
 はっとした。彼の身につけているもの……武器や服に至るまで、そのすべてが水晶化しているのだ。
「……非生物を……いや、無機物を水晶化するブレス……!?」
「考えてる場合じゃない、今のはたぶん、奥の手だ」
 体が動かないのは、身につけているものすべてが水晶化しているせいだ。身体に異常は見当たらない。なぶらがかばったリファニーはともかく、周囲の仲間が身につけている者や、地面まで水晶に覆われているのが分かった。
「……今、とどめを刺さなければ逃げられるぞ……!」
 こうして、敵(イレイザーの敵は無機物を身にまとっているのか?)を動けなくして逃げるのだろう。この機会を逃すわけにはいかない。リファニーもそれを悟った。
「よっしゃあ! 勝負をつけてやるぜ!」
 答えたのは、ラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)だ。動けないなぶらの脇をすり抜け、水晶の地面を踏みしめる。彼にとっては、いっそ硬くなった地面は都合がよかった。
「せえ……のっ!」
 イレイザーが振りかざした前肢に向けて分厚い拳をたたきつける。その衝撃を利用して腕を押し返し、足払いじみた一撃を逆の前肢にも打ち込む。体勢を崩したら次は腹へと周り、体表をつかんで駆け上る……
 目にも止まらぬ八連撃。イレイザーの巨体にとりついたノミのように飛び回り、ついにはそのノミが背の硬皮を打ち砕いた。
「もらった……! リイム、援護を!」
 その巨体がかしいだことを認めて、十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)が叫んだ。怒りを表すように震える剣を構えて、まっすぐにイレイザーに突っ込んでいく。
「了解でふ!」
 リイム・クローバー(りいむ・くろーばー)は、パートナーの言葉どおり、両手の銃から弾丸を放つ。イレイザーに通用しないことは百も承知だが、それでも目や耳をかすめて獣を威圧する効果はある。
「かあっ……!」
 叫びを上げて、宵一の剣が突き出された。イレイザーを恨むように深々と、胸の巨大な傷に突き刺さった衝撃が、イレイザーの体中を切り刻み、全身を貫くようですらあった。
 びりびりと空まで震えるような悲鳴を上げて、イレイザーがのたうち回る。
「逃がすかよ!」
「いただいた!」
 ラルクが、宵一が、何人もの契約者が獣を囲む。
 イレイザーの絶命まで、それほどの時間はかからなかった。


「やった……のか?」
 水晶化した装備をなんとか剥がし、体の自由をとりもどしたなぶらは小さく呟いた。
「……ええ。私たちが倒しました」
 リファニーはつぶやき、かがみ込んだ。その足下に転がる赤い水晶……イレイザーの胸に埋め込まれたもののかけらを拾い上げる。
「あのイレイザーは、ものを水晶化する力を持っていた。……この水晶と何か関係があるのかも知れない。解析できれば、水晶化を解く方法も分かるかも知れない」