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【蒼フロ3周年記念】パートナーとの出会いと別れ

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【蒼フロ3周年記念】パートナーとの出会いと別れ
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 ■ 『人』と『モノ』 ■
 
 
 
 年齢が二桁になる前に、レギオン・ヴァルザード(れぎおん・う゛ぁるざーど)は既に家族全員を失っていた。
 いわゆる戦災孤児、というものなのだろうが、レギオンは戦争の犠牲者に収まってはいなかった。
 一人で生きる為、戦争を食い物にしてきた。
 
 そんなレギオンがカノン・エルフィリア(かのん・えるふぃりあ)に会ったのも、やはり戦場だった。
 
 数年前、とある国境沿いの荒野で、過激派団体の制圧戦が行われた。その過激派団体には契約者も多く所属しており、社会問題に発展しないよう、作戦は極秘裏に遂行された。
 命令に従い敵味方問わず何十人と殺し、野草、動物、果ては兵士の歯肉を喰らって休むことなく戦場に居続ける最高の『駒』として、レギオンは制圧する側に雇われ、その作戦に参加していた。
 そしてカノンは……敵方の構成員の1人だった。
 
 
 
 初めて出会ったのはその戦いの中。
 他のメンバーとはぐれ、夜間に単独行動していたカノンをレギオンが奇襲したのだ。
 カノンが突然取り出した光の剣にレギオンは少々驚いたけれど、剣を手にしたカノンの方が驚いているように見えた。その剣を扱いきれず、明らかに持て余していた。
 
 ……その頃のカノンはレギオンと違い、己の意思で戦場にあった訳ではなかった。
 気付いたら、大人たちに無理矢理闘わされていたのだ。
 契約を結んでいないパラミタ種族がどのくらい力を発揮できるかを調べていたらしい、と後で聞いたが、カノンは光条兵器を出すことさえままならなかった。
 だからこの時、カノンは何故か取り出せた光条兵器に戸惑うばかりだった。
 死なない為にはこれで応戦しなければならないと必死になりはしたが、いきなり手にした剣を使いこなすことは出来ず、あっという間に負けてしまった。
 倒れた時には死を覚悟したが……次に意識を取り戻したとき、カノンはそこから少し離れた草むらに寝かされていた。倒れている姿を隠してくれていた草の陰から起きあがり、カノンは自分の身体を確認した。
「どうして……」
 怪我の出血を止める為、布がきつく巻かれている。
 手当をしてくれたのがあの敵なのか、それとも別の誰かなのかさえ解らず、カノンはその布を見つめ続けた。
 
 
 
 2度目の出会いはそれからしばらく後。
 過激派団体の制圧に成功し、レギオンが報奨金をふんだくった後のことだった。
 団体の拠点が襲撃された騒ぎに乗じて閉じこめられた部屋から逃げ出したカノンは、どうしたらいいのか解らず荒野を彷徨っていた。
 そのときレギオンに再会したのだ。
 
 着の身着のままで逃げ出したカノンは丸腰だった。けれど突き刺すような敵意をレギオンに向けてきた。
 その瞳の敵意を受け止めながら、レギオンは何故自分がカノンを殺せなかったのかに気付いた。
 カノンを自分が『モノ』になる前、『人』だった頃の自分と重ねているのだと。
 ふ、と力を抜くと、レギオンはカノンの前で武装を解除した。それだけでなく、そのうちの1本だった刀をカノンを渡す。
「……俺を殺してみろ」
 レギオンは、『殺す恐ろしさ』が『殺される恐ろしさ』に劣った為、人の死に対して何も感じなくなった。もしここで、類似した状態のカノンに『殺す恐ろしさ』を教えることが出来たなら、カノンは『人』であれるのか。
 それを試みんが為に。
 
 カノンは飛びつくように刀を取ると、レギオンに斬りつけた。
 一撃、二撃……。
 刀を振るってもレギオンは動かない。
 三撃目を加えようとして、カノンの手はぴたりと止まった。無抵抗なレギオンを攻撃するのが突然怖くなったのだ。
 どれだけ腕に力をこめても、震えるばかりでレギオンを斬ることが出来ない。今までこんなことはなかったのに……。
 
 凍り付いているカノンを眺め、レギオンは小さく呟いた。
「……どうやら『モノ』にならずに済んだらしい……」
 結果を確かめると、レギオンはそのまま場を離れようとした。が、それをカノンが呼び止めた。
「待って……アタシをもうひとりぼっちにしないで……」
 
 その後、押し負けたレギオンはカノンと同道することとなった。
 一般人としての生活に慣れる為に約1年を地球で過ごした後、2人はパラミタに渡ったのだった。
 
 
 
 ■ ■ ■
 
 
 そんな過去見から戻った後。
 もう何も見えなくなった水盤をまだ覗き続けているカノンに、
「これで解っただろう……俺がいかに『人ならざるモノ』か」
 出会いの時に戻ったような無感情な喋り方でレギオンは言った。
 カノンは『モノ』にならずに踏みとどまったが、レギオンはもう疾うにその先に来てしまっている。
「……カノンは俺のような『人ですらないモノ』ではなく、もっと真っ当な人間と一緒にるべきだ。何より……俺が幸せになることなど、許されないだろう……?」
「アタシはレギオンから離れない……!」
 カノンは勢いよく水盤から顔をあげ、レギオンをまっすぐに見る。
「だってアタシは……レギオンのこと……好きだもん! 幸せになって欲しいもんっ!」
 絶対に離れない。
 そう断言するカノンを前に、レギオンはひたすら戸惑い続けるのだった。