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【選択の絆】消え去りし火の表裏

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【選択の絆】消え去りし火の表裏
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第1章 旧シャンバラ王都の探索

エメネアがSNSに情報をばらまいてしまったことで、
大勢の契約者が、旧シャンバラ王都へやってきていた。

アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)がネットで発見した情報を、
パートナーのルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)に確認してもらったところ、
5000年前から生きている魔女のルシェイメアの知識で、
宝の地図に信憑性があるとわかり、
こうしてやってきたのである。

「……で」
アリス・ドロワーズ(ありす・どろわーず)は、
アキラの胸ポケットで、マッピングや情報管理を引き受けながら、頭を抱えていた。
「アキラもミャンルー隊も好き勝手に動きすぎヨ!
同じところを行ったり来たりシナイデ!
時間と体力の無駄デショ!」
などというアドバイスを聞いているのかいないのか、
アキラと、ミケ、ポチ、タマ、トラのミャンルーたちは、
自分たちに興味のあるものだけを片っ端から探していた。
「えー、だって、古王国時代の珍しいものたくさんあるし。
でっかいお宝狙うより、小さいお宝いくつも持って帰れたらいいだろ?」
「そうかもしれないケド、無節操すぎなのヨ!」

そんな漫才の横で、
ルシェイメアは、日記や雑貨などの、
当時の生活の様子や滅亡の原因などがうかがえるものも、重要な資料になると考えて、
探索を行っていた。

「まるで、昨日まで人がおったようじゃ……」
ルシェイメアがつぶやく。
旧シャンバラ王都の中は、
まるで、ゴーストタウンのような雰囲気であった。
当時の生活感はそのままに、
そのまま、住人だけがいなくなったかのような。
突然の滅亡に、街だけが取り残されたかのような。
それが、余計にもの悲しさを感じさせた。

なのに。

「なあなあ、ルーシェ、この立体映像、古王国時代のエロ本じゃね?」
アキラの差し出したホログラムには、翼を持つ裸体の女性の姿があった。
ルシェイメアは、無言で、パートナーを殴った。
「いってえ! こういう物も、当時の生活の様子の資料だろ?」
「じゃかましいわボケえ!」
「……」
アリスも、ジト目でアキラを見上げている。



一方、そのころ。

「さかさま、ってどうして逆様なんだろう。
もともとそういう風に……古王国の地下に今の世界がつくられてたの? 
大地が反転したの?」
三笠 のぞみ(みかさ・のぞみ)は、そんなふうに独りごちながら、
単独での探索を行っていた。
聖邪龍ケイオスブレードドラゴンの華子に乗って、散歩感覚で来てしまったのは、
ネットの情報を斜め読みしてしまったからである。

(でも“パラミタの地下”にあるのはザナドゥだよね?)
ジジッ。
(で、シャンバラとカナンの下なんじゃないかって推測されてるんだよね?)
ジジジジッ!
(どういう位置関係なのかな?)
ミーンミンミンミンミンミンミンミンミン……。

「ていうか、さっきから、セミの鳴き声うるさいような……。
って、でっか!?」
のぞみは、目の前に現れた蝉人間を見て驚愕した。
蝉人間のことは予想外だったので、
のぞみは軽くパニックになる。

「た、たすけてー!
ロービーンー!!」
パートナーの悪魔を召喚、と思いきや。

「呼ばれたって、無理な範囲もあるんですから、
最初から一緒に連れて行ってくださいね」
ロビン・ジジュ(ろびん・じじゅ)は、
建物の陰から現れた。

実は、ロビンは、のぞみが家を出るときから、こっそりストーキングしてきたのである。
「来てくれてありがとう!
……って、今、そこから出てきたよね?」
「細かいことは気にしなくていいです」
「う、うん。
なんだかピンチかもだし。
早くやっつけちゃおう!」
のぞみは、エメラルドセイジを構えた。
「ええ。けっこう大勢でてきましたね。
……囲まれると面倒ですね」
ロビンも、天を裂く傍観者を構えて言った。

その場に、バウンティハンターを自認する、
十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)が、スレイプニルに跨り、さっそうと現れる。
「手を貸そう。
そのかわり、宝は山分けだからな」
宵一は、ハードボイルドな感じで言って、戦闘に加わった。

宵一のパートナーの
ヨルディア・スカーレット(よるでぃあ・すかーれっと)も、
アンダーグラウンドドラゴンに乗って、蝉人間たちに対峙する。
「ナイスバディーになれるお宝が
アトラスの傷跡の地下にあるらしいと聞きましたわ!
よく見れば、蝉人間たちも、ボディービルダーのように、筋骨隆々ですわ!
虫なのに、あんな姿になれるということは、
きっと効果てきめんなはず!
絶対に手に入れなくてはなりませんわ!」
そのように、ヨルディアが信じ込んでしまったせいで、
宵一はバウンティーハンターなのに
トレジャーハンターみたいなことをすることになったわけだが。

「さあ、あの蝉人間を食べておしまいなさい!」
ヨルディアが、アンダーグラウンドドラゴンに命じるが、
アンダーグラウンドドラゴンは、蝉人間を前に、嫌そうに顔を背ける。

「幼虫なら食べたかもな。ほら、セミの幼虫って地中にいるし」
「しかたないですわね」
宵一に言われて、ヨルディアは、
群青の覆い手で、一気に蝉人間を押し流そうとする。

「じゃあ、あたしは皆を癒すから!」
のぞみは、仲間が増えたのを見て、回復役に専念することにする。

「なんだ、蝉人間だと?」
「けたたましい羽音がすると思ったが……敵対するのなら容赦せぬぞ」
「これって、アールキングの配下とか言ってる奴らじゃないカシラ?」
アキラと、ルシェイメア、アリスも戦闘に加わる。

「いかにも、我ら、悲願を叶えてくれたアールキングに恩を返そう!」
蝉人間たちが、ポージングしながら羽音を響かせ、
攻撃してくる。

「なにい、あのアホキングの言うこと聞いてるのか!?」
「どのような敵であれ、立ちふさがるなら容赦はしない」
アキラが怒りに燃え、
宵一が、冷徹なまなざしを向ける。
神狩りの剣を一閃、蝉人間は、宵一に斬り捨てられた。

そこに、轟音が響いた。
壁を突き破って現れたのは、
牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)であった。

「レアアイテムと聞いてやってきました」

「何やつだ、貴様!」
「あれ?」
アルコリアは、てっきり、自分を見て相手が悲鳴を上げるかと思ったが、
古王国時代から地中にいた蝉人間たちは、
アルコリアのことは知らないため、
恐れは抱かずに襲い掛かってくる。

「我が主君に寄るな、虫ケラ」
それを阻んだのは、
ユニオンリングで合体した、
ナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)シーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)であった。
ナコトとシーマの性格を足して割ったような感じになっており、
アルコリアを妄信する騎士になっている。
さらに、ナコトの性格のために尊大であった。

もっとも、その言葉は、口先だけのものではない。
光明剣クラウソナスで、一撃のもとに、数体の蝉人間が弾き飛ばされ、
建物に叩きつけられて動かなくなった。

「虫ケラは虫らしく、木にでもとまって鳴いているがいい。
我が主君に傷をつけようとする者は、誰であれ容赦はせぬ」
「言わせておけば!」
蝉人間たちが、群れを成して、合体したナコトとシーマに襲い掛かるが。
「夏だと思ったか? 冬だ……凍えて眩め、ホワイトアウト!」
ホワイトアウトにより、蝉人間が吹き飛ばされていく。

もう1人のパートナーの
ラズン・カプリッチオ(らずん・かぷりっちお)は、
アルコリアに魔鎧としてまとわれている。

「くきゃはは、ホントこの世は地獄だね。
右に転べど、左に転べど変わりなど有りはしない」
そんなことを言いつつ、
ラズンとアルコリアも戦闘に加わる。
「あはははー、やる気ないでーす。今日は騎士様にお任せモード」
などと言っているアルコリアだが、
蝉人間が襲い掛かってくるのである。

「今日は平和主義者なので、……いや。いつも平和主義者ですね」
そうは言いつつも、
グラビティコントロールで、
蝉人間を地面に叩きつけたりしているアルコリアであった。

「なんか、アルコリアさんに任せとけばよくない?」
のぞみがぼそっとつぶやく。
「多分……って、いや、さすがにダメだろ!」
宵一がツッコミを入れる。
「俺にも賞金稼ぎの矜持というものがだな!
それに、宝を分配するためにも、ちゃんと力を示す必要があるだろう!」
「けっこう律儀ですわね、宵一は」
ヨルディアが、肩をすくめてみせる。

こうして、蝉人間たちは、撃退されるのであった。