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バレンタイン…雪が解け美しき花びら開く…

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第30章 挙式の余韻

「さっきまでここで挙式をやっていたのよね」
 ピンクのアフタヌーンドレスを着てヒールを履いた愛らしい姿の歌菜が、羽純を誘ってグリプスヒルフェ大聖堂の中を観て回る。
「4人とも、もう町を出ているだろうな」
 羽純の方は白いワイシャツにシルバーグレーのネクタイを締め、その上にダークスーツでビシッときめた姿だ。
「柱の灯りは蝋燭だけみたいね。この蝋燭台、キレイ〜っ」
 純金の蝋燭台が火の灯りでキラキラと光っている。
「祭壇の上の方にあるオルガンは、銀と金を使っているみたいね。オルガンに乗ってる小さな人形みたいな石像が可愛いなぁ」
「こんだけ贅沢な装飾品があるというのに。金持ちが財力をひけらかすような、いやな感じはないな」
「そうなのよね・・・。またそこが素敵なんだけど♪」
 今はもう観光地として一般公開されて誰でも入れる大聖堂の雰囲気を楽しむ。
「こっちに来てっ」
 祭壇の傍にあるステンドグラスの下で歌菜が彼を手招きする。
「羽純くん、ハッピーバレンタイン♪」
「ありがとう」
「(バレンタインって渡す時、いつも緊張しちゃうな。今日こそ私から・・・)」
 チョコを受け取って礼を言う彼に、歌菜は照れながら微笑み、自分から先に告白しようと彼を見上げる。
 いつも先に言ってしまう彼に対して、今度こそ私が言いたい、というふうに口を開いた瞬間・・・。
「・・・いつか、・・・いや、必ず・・・俺が幸せにする」
 意識せずに言葉が出てしまうのか、不意打ちでまたもや先に言われてしまった。
「どうしてまた先に言っちゃうの」
「後から歌菜が言ってくれればいいじゃないか?」
「そ、そんなこと出来ないよ!私にだって、心の準備っていうものがあるんだからね」
「そんな言い方、まるで俺がただの直球なやつみたいだろ」
「(えっ。羽純くんたら、まったく分かってないの!?)」
 顔が真っ赤にした歌菜は、恥ずかしさで沸騰したように頭から湯気が出てしまいそうだ。
「羽純くんはズルイよ・・・でも、大好き」
 笑って抱き寄せる彼の手から抵抗せず、腕の中に納まった。