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第14章 やっぱり先輩は…

「雪合戦の時には、わがまま言ってすみませんでした。チョコ戴けて、凄く嬉しかったです」
 ミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)は、真田 佐保(さなだ・さほ)を誘って、空京に来ていた。
 今回は、チョコレートを貰ったお礼として、佐保を誘ったのだった。
「まあ、なんというか、必要に迫られたでござるよ」
「やっぱり仕方なくでしたか……。チョコを贈りたくなるような後輩になれるよう、頑張りますから!」
 またよろしくお願いしますと言わんばかりに、キラキラ目を輝かせてミーナは佐保を見る。
「チョコでよければ、今日だって食べるでござるよ。食事の誘いも是非お願いしたいでござる」
「はい!」
 ミーナは元気に返事をする。
 ホワイトデー大感謝祭で賑わう街を、肩を並べて歩いて。
 主に2人は、露店を見て回っていた。
「今日はチョコレートはいいです。先輩からもらったチョコの味を忘れないためにも!」
 言ってミーナは、チョコレート味以外の食べ物を購入し、食べながら歩いていく。
「先輩からのチョコは独特の風味があって天に舞い上がりそうな気分になるくらいおいしいチョコでした」
 そう語る彼女に、佐保は少し照れくさそうに微笑みながら、うんうんと頷く。
 しかしチョコレートを受け取ったミーナが本当に、天に舞い上がりそうになっていたことを、佐保は知らない。
 一口食べた後、感激やらなんやらで、ミーナの意識がふっとび、壮絶な事態に発展していたことは……パートナーしか知らない事実だ。
「あっ……。ちょっと見てもいいですか?」
 ミーナがアクセサリーを扱っている露店の前で立ち止まった。
「洒落た装飾品でござるな」
 佐保も興味を持ち、バングルやチョーカーを見ている。
「全部手作りよ。2人ともとても可愛いから、こういったものが似合うんじゃないかしら?」
 店主は女性だった。
 可愛らしいブローチや、ブレスレット、髪飾りを勧められる。
「ホント……これ可愛い。ください!」
 ミーナは、桜の花の飾りがついた髪飾りを手に取った。
「はーい。ありがと。袋に入れる?」
「いえ、すぐ使いますから……あ、でも袋もください」
「はいどうぞ」
 ミーナは代金を支払って、髪飾りを受け取った。
「良い買い物ができたようでござるな」
 嬉しそうなミーナを見て、佐保が微笑みを浮かべる。
「はい……。先輩に似合う髪飾りを見つけられました」
「ん?」
 不思議そう顔をする佐保に、ミーナは手を伸ばして。
 黒い髪に、買ったばかりの髪飾りをつけてあげた。
「プレゼントです」
「な、なんか照れるでござるよ……」
 自分の目では見えなかったが、髪飾りのわずかな重さを感じて、佐保は微かに赤くなる。
「とっても似合ってます……ほら」
 ミーナは佐保を近くの店の前に連れていく。
 窓ガラスに映った自分の姿に、佐保はますます照れて苦笑のような笑みを浮かべた。
「そなたにも似合うと思うでござるよ……」
「チョコレートのお礼ということで、受け取ってください」
「そうか、ではありがたくいただくでござる」
「はい!」
 元気に返事をして、2人はまた一緒に歩き出す。

 夕方まで、街の中を歩き回って。
 食べ歩いて、笑いあって過ごした後。
 互いに別の用事があることから、駅でお別れをすることになった。
「それでは、また明日学校で」
「はい、お気をつけて」
 改札に向かう佐保をミーナは笑顔で手をぶんぶん振りながら見送って……。
「……やっぱり先輩は素敵です」
 彼女の背に向かって、声が届かないよう小さな声で呟いた。