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 お盆といえど、夏祭り。
「夏祭りと言えば、女の血が騒ぐってモンですよねぇ」
 出店を眺めながら、レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)は楽しそうにミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)へと笑いかけた。
「レティ、血が騒いだとしても大股で歩かないよう。着崩れますよ、浴衣」
「あらら。それは風情がなくなっちゃうねぇ。気をつけないと」
 しゃなりしゃなりと大和撫子さながらに、歩幅を小さくして歩く。
 今日のレティシアの格好は、夏祭りということもあって浴衣姿である。ピンク色の生地に花の模様がちりばめられた浴衣だ。帯は浴衣の色よりも濃いピンクの単帯と、レモンイエローのへこ帯を併せて締めている。
「ミスティも着ればよかったのに」
「レティが引っ張るから着付ける時間がなかったんですよ」
「ああ。それもそっか」
 お盆だ! 祭りだ! とテンションが上がってしまって、自分の着付けを終えてすぐにミスティを祭りへと誘ったんだった。
「じゃあ、次は二人で浴衣を着てこなくちゃねぇ」
「次、ですか?」
「そう。今年別の祭りに行く時でも、来年でもねぇ。どう? 楽しくなってきたり、しない?」
 笑いかけると、ミスティが思案気な顔をしてから頬を緩めた。
「ええ。いいと思います」
 ミスティの答えを聞いて、元々良かった機嫌がさらに良くなった。
「ふっふふ♪ 今日はもう、楽しみ倒そうかねぇ♪」
「……まあ、私もたまには羽を伸ばしたいんですがね」
 ぽそり、ミスティが呟いたけれど気にしない。
 だってひとりよりふたりの方が楽しいじゃないか。
 レティシアの心情を察したように、ミスティが嘆息した。
「だって、結局私はレティの世話係になってしまいますから」
「そんなこと」
 ない、と言おうとした瞬間、下駄の鼻緒が切れた。
 ほら。と言いたげなミスティの視線から、目を逸らして逃げる。
「もう。少しは痛い目に遭った方が良いのかもしれませんね。怪我しない程度の」
 鼻緒を直し、ミスティが言った。
「んー。でも、ミスティが居るから。安心しちゃうんだよねぇ、どうにも」
「……それはそれ、です」
「うーん、じゃあ祭りのあとまた考えるとするかねぇ。ほらミスティ、たこ焼き買いに行こう!」
 ミスティの手を取り、屋台目指して早足に。
 夏祭りの日を充実に導く。