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第七章  対蒼空学園戦線



《VS 学徒》

「うわ……一緒だ……!10年前の、あのお話と……」

 一面に広がる学徒兵を前に、六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)は思わず胸を熱くしていた。
 今から10年前、スーパー戦隊第35作品目を記念して作られたあの番組。
 その第一話、雲霞の如く押し寄せる敵兵と、200人近い戦隊ヒーローが戦いを繰り広げるシーン。
 当時まだ小学生だった優希の記憶に、はっきりと刻み込まれたあのシーンと全く同じ光景が今、彼女の目の前で繰り広げられている。

(今から私も入るんだ、あの戦いの中に。……そして私もなるんだ、あのヒーローに!)

 子供時代の感動を忘れることなく、今も密かに特撮ファンであり続ける優希。
 その彼女にとって、これ以上の喜びがあるだろうか。
 優希は震える手で、そっとキャラクターキーを握り締めると、突撃してくる学徒兵に向かってキーを突き出した。

「これ以上、貴方たちに悪い事はさせません!「キャラクターチェンジ!
「マーーーサラァ!」

 光と共に雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)に変身した優希。

「ほ、本当に雅羅さんになっちゃったんだ……」  

 変身したのが信じられない、と言った様子で、自分の身体をシゲシゲと眺める優希。

「アブナイっ!」
「え……!」

 頭上からの声に優希が顔を上げると、ちょうど羽根学徒が、手にした剣を振り下ろそうとした所だった。
 スローモーションのように、迫ってくる剣。
 だが、その剣が優希の頭を捉えるよりも早く、【ジェットドラゴン】で横合いから突っ込んで来たコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)の【龍殺しの槍】が、学徒を串刺しにする。

「ギガガーーー!」

 吹っ飛ばされた羽根学徒は、悲鳴を上げて地面に墜落する。

「ダメだよ、戦闘中によそ見なんかしちゃ!」
「ご、ゴメンナサイ……」

 開口一番叱られ、しゅんとする優希。
「落ち込んでるヒマはないよ!今キミ、変身中でしょ?」
「あ……!た、大変!」

 慌てて、《バーストダッシュ》で駆け出す優希。
 その後を、コハクがドラゴンで追う。

「キミ!よかったら、力を貸してくれないか?ニセ校長と戦ってる仲間を、学徒から守らないといけないんだ!」
「は、ハイ!モチロンです!」
「よし、それじゃ決まりだ!みんなは、あっちに向かってる、付いてきて!」
「ハイ!」

 【バントラインスペシャル雅羅式】を連射しながら、《バーストダッシュ》で敵に突っ込んでいく優希。
 彼女の変身ヒーローとしての戦いは、まだ始まったばかりである。