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秋のシャンバラ文化祭

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秋のシャンバラ文化祭

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文化祭開場

 
 
「今回は、本学を舞台にしたイベントで、主に美術室、図書室、キャンパスのメインストリート、及びグラウンドで様々な催し物が行われる。大型生物なども多数参加するので、大学内の保安は重要だ。各自、しっかりと対応してもらいたい。以上だ」
 空京大学職員のアクリト・シーカー(あくりと・しーかー)が、警備担当の者たちを前にして言い渡しました。
「まあ、俺たちは、それが仕事みたいなものだからな」
 こういうときには真っ先に駆り出される皇 彼方(はなぶさ・かなた)が、いつものことだという顔で答えました。
「負傷者は、私が主に面倒を見ますので」
 テティス・レジャ(ててぃす・れじゃ)が、星槍コーラルリーフを手にして言います。
「うむ、よろしく頼む」
 アリクト・シーカーが、頼もしいなとうなずきました。コーラルリーフの癒やしの力があれば、何があってもそこそこは大丈夫のような気がします。まあ、気がするだけではありますが。
「まずは、屋内の催し物から回って行くとするか。行くぞ、テティス」
「うん、彼方」
 皇彼方に名前を呼ばれて、テティス・レジャがちょっと嬉しそうに小走りで駆けていきます。
「それじゃ、俺たちの方は外の催し物から見て回るとしますか。分散して見回った方が、効率がいいでしょうから」
 バイト警備員の紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が、皇彼方たちを見送ってから言いました。
「その通りだな。頼むぞ」
 問題ないと、アリクト・シーカーがうなずきます。
「じゃあ、私たちも、さっそく出発しょ、しょ」
 リーズ・クオルヴェル(りーず・くおるう゛ぇる)が、紫月唯斗の腕を掴んで言いました。ちょっと何か勘違いしているみたいですが、皇彼方とテティス・レジャも大差ありませんでしたので、問題ないでしょう。
「大丈夫なのか、あの四人で……」
 急に心配になる、アリクト・シーカーでした。大丈夫です。多分……。
 
 
イベントミュージアム2

 
 
「空京大学の美術室かあ、なんでも飾ってもらえるんだったら、私もを持ってくればよかったかなあ」
 この間描いてもらったイラストのことを思って、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)がつぶやきました。
 蒼空学園の新制服を着た小鳥遊美羽の姿なのですが、相変わらず鉄壁のスカートが。――「……てないから大丈夫」なのかどうかは、よく分かりません。
 美術室にはツァンダ桟橋に停泊するエリュシオン帝国の大型飛空艇や、小ババ様乱舞の絵などが飾られています。
「一通り見て回ったから、何か食べに行こうかな」
 移動する小鳥遊美羽と入れ替えに、アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)が入ってきます。
「そこの人、さあ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。今なら、たっぷり可愛い魔法少女の絵が見られるよー」
 魔法少女コスチュームに身をつつんだネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)が、ひょいひょいと、アルティア・シールアムを手招きしました。
 そこには、「【2020修学旅行】秋葉原魔法ガールズ」という絵が飾られています。ネージュ・フロゥがパートナーと一緒に、地球の秋葉原に修学旅行に行ったときの一コマです。
 二人とも魔法少女の格好をしていますが、そこは秋葉原なのでまったく違和感がありません。絵のシチュエーションとしては、周りから携帯で写真撮られまくりで、ついついポーズをとってしまっているという感じです。
 よく見ますと、説明のネージュ・フロゥは絵と同じ衣装を着ていました。薄紫のワンピースは、胸の蝶ネクタイとバルーンスリーブとふくらんだペダルドレス風のスカートの先が濃い紫になっています。紫のパニエでふくらんだスカートの下には、紫のレースのついたストッキングが絶対領域の上の太腿を飾り、右手首には紫のリボンを結び、左手首には大きなコサージュをリボンで結んでいます。ピンクの髪の毛は、紫の花のついたリボンで短いツインテールに結んでいました。まるで、花妖精のような衣装です。
「こ、これは……。写真撮られてしまっていますが、よろしいのですか?」
 ちょっといいのかなあと言う感じで、アルティア・シールアムがネージュ・フロゥに訊ねました。路上の撮影会というのは、ちょっと慎みがない気がします。
「うーん、秋葉だからしょうがないんだよー。だって、たくさんのカメコさんに囲まれちゃったんだから」
「亀ですか?」
 この携帯を持つ人たちは、みんな甲羅を背負って修行しているのだろうかと、アルティア・シールアムが小首をかしげました。多分、違います。
「ええと……、とにかく、この絵は一時期イラスト描く人の画廊に飾られたりとか、いろいろしたんだよ」
 微妙に話がかみ合わないまま、ネージュ・フロゥが説明を続けました。
 なんとなくそのときのことを思い出すかのように、ネージュ・フロゥが絵と同じポーズをとります。
「ええっと、これは、写真を撮らないといけない……、それとも、こうでございましょうか」
 戸惑いつつ、アルティア・シールアムがネージュ・フロゥと腕を組んで絵と同じポーズをとります。なんとはなしに、ピンクツインテールのコンビのできあがりです。
 ちょうどそこへ、美術室を一周した小鳥遊美羽が戻ってきました。
 ぴたっと、ネージュ・フロゥとアルティア・シールアムが背後の絵と同じポーズをとって止まります。
「えっ、えっ!?」
 これは、写真を要求されているのでしょうか。思わず空気を読んだ小鳥遊美羽が、持っていた携帯で写真を撮りますと、二人の携帯に転送しました。