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【未来シナリオ】大切な今日

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【未来シナリオ】大切な今日
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ありがとう

 2025年の秋。
 契約者として、ロイヤルガードとしても、明るく元気に精力的な活動をし、様々な伝説を築いた小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は、女の子を出産した。
「美羽、身体の具合はどう?」
 夫のコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が、横になっている美羽の手に、そっと自らの手を重ねた。
「ん、大丈夫」
 出産から数日経ち、体調も随分と落ち着いてきた。
 横になったままだけれど、今日は元気な笑顔をコハクに向ける事が出来た。
「よかった」
 美羽とコハクは顔を合わせて微笑み合う。
 何もない時間でも、笑みが零れてしまう。
 今、2人は凄く幸せだった。
 美羽がパラミタに訪れてから、今まで、楽しいことや幸せなことばかりではなく、苦しいことや辛いことも沢山あった。
 明るくて元気な彼女だけれど、笑えない時期だって、泣いて過ごした日だってあった。
 でも本当に、パラミタに来てよかったと思う。
 友達と出会えて、仲間と出会えて……コハクと出会えて。
 彼との間にできた、大切な大切な存在と出会えて。
「すやすや、眠ってるね」
 コハクは美羽の隣にある、小さな小さなベッドの中の愛しい命を見つめた。
 美羽とコハクの愛娘。
 美羽の面影と、コハクと同じような白い翼をもつ、ヴァルキリーの女の子だった。
「美、奈」
 優しくコハクは娘の名前を呼ぶ。
 その名を提案したのはコハクだ。最愛の妻、美羽の名前から1文字取った名だった。
 美羽も喜んで同意してくれた。
「……ふあーん、ふあーん」
 美奈が小さな声を上げて泣き出した。
「目が覚めちゃったのね。お願いできるかなパパ」
「うん」
 コハクはそっと愛娘に手を伸ばして、少し緊張しながら、助産婦に教えてもらった通りに抱き上げた。
「おやすみ、美奈。沢山眠って、大きくなって。それから一緒にいっぱい楽しい事をしようね」
 美奈の小さな重みと温もりを感じながら、コハクは自分が父親になったのだと実感していく。
(僕が、家族を支えていくんだ)
 しっかりと思いながら、美奈を優しく抱いていた。
「私もだっこするー」
 コハクが赤ちゃんを抱く姿を見ていたら、美羽も腕の中に抱きたくなって。
 体を起こして手を伸ばした。
「そおっと、そおっとね」
「うん、大丈夫だよ、授乳してるから頻繁にだっこしてるしね」
「いいな、美羽」
「ふふ、ママの特権だね」
 まだ小さな声を上げている美奈を、持ち上げて、美羽は自分の身体に引き寄せた。
 そして正面から縦に愛娘を優しく抱いた。
「ぎゅーって抱きしめたくなるけど、今はまだ我慢」
 優しく優しく撫でているうちに、美奈はまた眠りに落ちていった。
「かわいい……ほんとにすごく、かわいい……」
 再び、そっとベッドに寝かせて、2人で顔を覗き込む。
 その天使のようにかわいらしい容姿に見とれながら、美羽はコハクと手を繋いだ。
「生まれてきてくれてありがとう」
「ありがとう」
 美奈にお礼を言って、それから2人はまた顔を合わせて微笑み合う。
「美羽、抱っこできる特権もあるけど、泣き声で起こされたりして、あまり眠れてないんじゃない?
 休める時にちゃんと休んで」
「大丈夫だよ。仕事も家事もお休みしてるから、美奈が寝てる時はホント暇で〜」
「でも、無理したらダメだよ」
 優しく気遣う夫の言葉に、美羽はいつもの元気な笑顔で頷いた。
 コハクの翼の向こう。窓からは、澄んだ青空が見える。
 いつか3人で、微笑み合いながら空の散歩をするのだろう。