リアクション
強敵である涼介を打ち破り、暫定王者となったパンツマシンに流れは向いていた。 ※ ※ ※ (本当、やりにくいですね……) レオタード風のリングコスチュームを身に纏った水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)は、表面上冷静を保っているが内心では焦りが生じていた。 ゆかりのとった作戦は小技を繰り返し相手の消耗を狙うというもの。だが相手となるパンツマシンにその全てをガードされ、合間に反撃を食らってしまう。 更にはボディスラムでゆかりを転がすと、パンツマシンはすぐにフォールを仕掛ける。大したダメージは無いゆかりは直ぐに返すが、何度も転がしてはフォールという事を繰り返しスタミナを削る。 「ちまちまと男らしくありませんね、恥ずかしくないんですか? ああ、そんなマスク被るくらいだから羞恥心なんてありませんね」 内心の焦りを隠しつつ、ゆかりは相手の冷静さを失わせようと蔑むような目で小馬鹿にするが、言われたパンツマシンは「はいはい」と軽く流す。現在劣勢なのはゆかりだ。そんな状況で挑発したとしても流されて終わりだ。 (こちらも効果はありませんか……なら一気に決めてしまいましょう) ゆかりがパンツマシンに浴びせ蹴りを放つ。奇襲気味の一撃に、咄嗟にパンツマシンは腕で受け止めるが体重の乗った一撃にバランスを崩し膝を着く。 すぐさま起き上がったゆかりはパンツマシンが立ち上がろうとした瞬間を狙いシャイニングウィザード。だがこれも腕でガードされてしまい、倒れた直後に覆い被され抑え込まれる。カウントは2。 フォールを返したゆかりが地獄突きを放つがパンツマシンは咄嗟に腕でガードする。 ゆかりはその手を取ると、素早く飛びつき体重をかけてパンツマシンを転がし腕十字の体勢に入る。だがパンツマシンは反対の手でクラッチし、腕が伸びきるのを防ぐとそのまま起き上がり押し潰す様にゆかりをフォール。危うい所であったがカウントは2。 起き上がったゆかりの呼吸は乱れていた。攻め疲れに加え、連続してのフォールを返す事によりスタミナが消耗してきているのである。 息を切らしつつ、パンツマシンを睨み付けたゆかりは再度地獄突きを放つ。 「んぐぉッ!?」 こちらは防ぎ切れず、パンツマシンは呻き声を出すと喉元を抑え身を屈める。そんなパンツマシンにゆかりはボディスラムのように持ち上げると、パンツマシンの頭が下になる様にその身体を抱える。 ツームストーンパイルドライバーの体勢になるが、パンツマシンは足をバタつかせて抵抗する。そのまま落とそうとするが、抵抗されバランスを崩したゆかりはそのまま後ろに倒れてしまい、パンツマシンが抑え込む。 「くっ……このぉッ!」 強引にパンツマシンの身体を押し上げフォールを解く。ゆかりの息は更に乱れ、立ち上がるのにも時間を要するようになった。 そこを狙ったパンツマシンのラリアットがゆかりに叩きこまれる。ダウンするゆかりをそのままパンツマシンがフォールする。 これにはゆかりも返す事は出来なかった。3カウントを取られ、ゴングが鳴り響いている間もゆかりは大きく呼吸を繰り返し、立ち上がる事が出来なかった。 ○パンツマシン(6分20秒 体固め※パンツマシンラリアット)水原ゆかり● ※ ※ ※ 続いての登場はマリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)。以前プロレスに参加したことでプロレスへの魅力に目覚めた事、そしてつい先ほどパートナーのゆかりがやられてしまったこともあり意気込んでの登場となる。 マリエッタはキックを始めとした足技で果敢にパンツマシンを攻め立てる。狙いは足へのダメージの蓄積。フィニッシュのリバースインディアンデスロックへと繋ぐ為の布石として攻める。 だがパンツマシンは打撃を徹底的にガードし、逆にマリエッタを攻め疲れさせる。 これに焦ったマリエッタは流れを変えるべくドロップキックを放つ。ダウンしたパンツマシンにダメージを与えるべく、足4の字固めを仕掛けようとする。 しかしマリエッタが足を絡め、身体を屈めた瞬間パンツマシンは上体を起こし頭を抱えて丸め込む。 「へっ?」 何が起こったかわからず困惑するマリエッタ。状況を理解したのはゴングが鳴り、技を解かれた後であった。 「……え? あたしの負け? 何で?」 一瞬の首固めによる丸め込みによる逆転劇にぽかんと口を開け唖然とするマリエッタ。 レフェリーに退場を命じられても理解が追いつかず、只々唖然とするばかりであった。 ○パンツマシン(4分2秒 首固め)マリエッタ・シュヴァール● ※ ※ ※ 次に登場したのは、前半戦に過激な試合を繰り広げた綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)である。 リングに上がったさゆみは蛍光灯マッチの闘志そのままに、ダメージを感じさせない動きでパンツマシンに襲い掛かる。 打撃の小技を中心に相手を牽制しつつ消耗を狙うさゆみ。だがパンツマシンはその打撃を徹底的に防ぎ切り、ダメージにはつながらない。 (さっきの試合を見てても打撃は有効じゃなさそうか……ならこうするまでよ!) さゆみは一気にたたみかける事を決め、ドロップキックを放つ。 「へっ、その程度……お?」 自らダウンする事によりダメージを軽減させたパンツマシンを捕らえると、高々と抱えてパワーボムで叩きつける。 パンツマシンはカウント2で返すが、すぐにさゆみがキャメルクラッチで捕らえようとする。強引に絞り上げようとするさゆみを引き摺る様にしてパンツマシンがロープを掴みブレイク。 さゆみは起き上がるパンツマシンの背後を狙い、コーナーに上がってミサイルキック。予測のつかない一撃にパンツマシンが吹き飛ばされる。 「一気に決めるわよ! アデリーヌぅッ!」 大声で呼びかけると、花道からアデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)が駆けてくる。一気に花道を駆け抜け、エプロンへ飛び乗るとコーナーへと駆けのぼる。 その間にさゆみはパンツマシンを抱えてパイルドライバーの体勢に入っていた。このままアデリーヌが飛び降り、パンツマシンに体重をかければツープラトンパイルドライバーの完成となる。 だがこの乱入は反則行為となる。レフェリーがアデリーヌに駆け寄り、退場する様に止めに掛かる。 「ちょ、やめてくださらない!? わたくしはこの技を決めなくてはならないのですわ!」 アデリーヌがそのままコーナーから飛ぼうとするがレフェリーが強引に止めに入る。 「アデリーヌ! 早く!」 「わ、わたくしもそうしたいのですが……ああもう! 邪魔しないでくださる!?」 アデリーヌがレフェリーと一悶着起こしている間、パンツマシンは足をばたつかせて着地。 「調子に……乗るなよぉッ!」 そして逆にさゆみを持ち上げ、リバーススープレックスでコーナーに投げ飛ばす。 「へ……きゃあッ!」 衝撃でバランスを崩したアデリーヌが、コーナーから落下し場外に叩きつけられる。 「あ、アデリーヌ!」 コーナーに叩きつけられたさゆみは起き上がり、落下したアデリーヌに目を向ける。そこには目を回し気絶するアデリーヌの姿があった。 「よそ見してる場合か?」 アデリーヌに気を取られたさゆみに、パンツマシンはバックドロップを決めると起き上がりを狙いパンツマシンラリアットで抑え込みカウント3を奪うのであった。 尚次の選手はアデリーヌの予定であったが、コーナー落下のダメージは大きく試合続行不可能となり、パンツマシンの不戦勝となるのであった。 ○パンツマシン(7分23秒 体固め※パンツマシンラリアット)綾原 さゆみ● ○パンツマシン(不戦勝)アデリーヌ・シャントルイユ● |
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