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終わりなき蒼空、涯てることなきフロンティア

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終わりなき蒼空、涯てることなきフロンティア
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リアクション


●サンタが金元家にやってくる

 なんともなんとも賑やかな、金元 シャウラ(かねもと・しゃうら)の家の様子を見てみよう。
 今日はクリスマス。あれから数年経った聖夜である。
 シャウラは現在も軍人を続けている。主として四つ子の面倒を見ているのは、育児のため休業状態……といってもなかば引退したに等しい妻金元 ななな(かねもと・ななな)だ。
 それにしても、四つ子だ。
 双子三つ子のレベルではない! 四つ子なのだ。
 それだけでも大変さが想像できよう。
 しかそれが四人そろって、現在わんぱく盛り、遊びたい盛りの年齢なのである。毎日が保育所状態、てんでバラバラな個性の四人の子どもたちに、なななもシャウラも振り回されっぱなしなのだ。
 長男は健二(けんじ)、いわゆるヒーロー格で、
 次男は浩(ひろし)、顔は健二そっくりだが正確はクールな参謀系だ。
 三男の輝(ひかる)はやや顔立ちが違って社交的、
 末娘で長女、かおりは、紅一点すなわちヒロインの立場である。
 この全員が、未来の宇宙刑事として日夜訓練(という名の遊び)に励んでいるのだった。
 宇宙刑事名も決まっていて、順に、宇宙刑事ソード、宇宙刑事ワールド、宇宙刑事シャイニング、宇宙刑事キューティーだということである。これは、母であるなななの公認なのだからそういうものだと思うほかない。
 今夜最初の来客、ユーシス・サダルスウド(ゆーしす・さだるすうど)が、両手にいっぱいご馳走を提げて現れた。
「やあ今夜は、クリスマスパーティへのご招待、ありがとうございました。ご馳走はうんと買ってきましたからね」
「それは嬉しいな! さあ入れ入れ」
 外は寒かっただろう、とシャウラは彼をいたわった。
「ええ。でも、この家は暑いくらいですね」
「そりゃあまあ、体温の高い子どもが四人もいると……な」
 シャウラが苦笑いしたとき、今度はナオキ・シュケディ(なおき・しゅけでぃ)が姿を見せた。
 といってもそれは、ナオキにあってナオキにあらず……付けひげの白ひげを生やしたサンタクロースなのである。
「ホーホーホー、良い子にしてたか子どもたち−」
 芝居がかった口調で、白い袋を担いだナオキが姿を見せるやいなや、
「でたな宇宙怪獣!」
 と健二が叫んだ。
「速やかに無力化する!」
 浩の合図で、四人は一斉にナオキに飛びかかったのである。
「あいたた! マジか!? この格好がなんで宇宙怪獣に見えるんだ!?」
 ナオキが抗弁するも無駄な抵抗に終わった。彼は引き倒され、子どもたちの容赦ない攻撃にさらされるのである。外の雪で濡れて、赤い衣装が黒っぽく見えたのが悪漢ちっくに映ったのかもしれない。南無。
 とうとうナオキは「降参! 降参!」と叫んで小さな宇宙刑事たちの軍門に降った。
 シャウラとなななが、「宇宙警察の担当に渡すね」と言いながらズタボロになったサンタ衣装ごと彼を引きずって別室に連れて行った。こうしてナオキは虎口から逃れたのである。
「せっかくのサンタクロースが……」
 トホホという顔でナオキは、普段着になって戻ってくる。
 するとようやく、子どもたちから歓声と歓迎の言葉を受けた。
「おう、それじゃ子どもたち、サンタから預かったプレゼントを配ろう」
「サンタ?」
「サタンの仲間?」
 輝とかおりがそんなことを言う(金元家の常識は一般のそれとは多少……いや、かなりずれている!)のだが、ここでなななが、
「それはね、『正義の味方・サンダークロース』のことなんだよ」
 と、とっさの作り話で説明した。
「なるほど」
「それなら、いいね」
 これでようやく四つ子は納得して、それぞれプレゼントを受け取ってはしゃぐのであった。
 さらには宇宙刑事ポムクルさんたちが大挙して押し寄せ、金元家のクリスマスパーティは、賑やかすぎるほどに賑やかになった。
 ディナーが終わり、ケーキも終わって、一段落ということころで、
「よし、じゃああっちで遊ぼう!」
 シャウラは四つ子を、リビング内に設置した遊具に誘導した。
 屋内用の子どもアスレチック遊具が置かれており、エネルギー有り余る子どもたちにとっては最高の遊び場だ。
「パパが宇宙怪物の役だ! さあ四人の宇宙刑事よ、決戦のときだぞー」
 そんなことを言って、子どもたちをキャッキャと喜ばせている。
「いいパパですよね。本当」
 と言いながらユーシスの目は、どうしてもなななの腹部に向いてしまうのだ。
「ええと……いま……何ヶ月だったっけ、ひいふうみい……」
 ナオキが指折り数えようとしたが、なななは先に答えてくれた。
「もうじき七か月! 生まれるのは春の予定だよ」
 そうなのだ。
 なななはさらに一人、新しい命を授かったのだった。ますます金元家は賑やかになりそうだ。
 このときリビングでは、
「パパ、宇宙遊泳してー」
 と、かおりが言っていた。
「よしきた」
 シャウラは仰向けになって両脚を伸ばし、かおりを足に乗せて遊んであげるのだった。
 すると我も我もと、他の三人も同じ扱いを要求した。
 やらずには、すませられそうもない。
 なななはその様子を見て微笑むと、
「こうなれば野球チームができるくらい子どもがほしいかな、なんてゼーさんは笑ってる」
「……あながち、冗談にも思えないな」
 シャウラとなななに似た子どもたちが団体行動しているところを、ナオキはありありと想像してみたりもする。
 ――いいんじゃないかな。
 その想像の中では、シャウラも、なななも、子どもたちも、みんな笑顔なのだった。
「……さてと、俺たちはそろそろ、おいとまするとしますかね」
 ナオキは立ち上がってコートを取った。
「そうですね。お腹、大切にしてください」
 ユーシスも続く。
「そんなに急がなくても……」
 いつの間にかまた怪物役に戻り、子どもたちに倒されたシャウラは、首だけひょいと起こしていた。
「そういうわけにもいかない。今日はクリスマスだ。『寝付いた子どもたちを眺め、金元夫妻が熱いキスを交わす』という必須のオヤクソクをやってもらわないとな♪」
 とナオキが言うと、なななはほんのりと頬を染めた。
「それを見物するわけには参りませんのでね」
 ではお達者で、とユーシスは手を振った。
 早くも来年のクリスマスが楽しみだ。
 なぜならそこにはもう一人、小さな宇宙刑事が加わっているであろうから。
 その翌年はどうなるだろう。
 さらにその翌年は? 三年後は? 十年後は?
 なんとなく、もっともっと賑やかになっている気がユーシスはするのである。ナオキも。
 なにはともあれ、メリークリスマスだ。
 そして……良いお年を!