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終わりなき蒼空、涯てることなきフロンティア

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終わりなき蒼空、涯てることなきフロンティア
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リアクション


●涯てることなきフロンティア

 物語を締めくくるエピソードとして、姫宮 和希(ひめみや・かずき)のことを語りたい。

 和希の将来の夢は『歴史に名を刻む偉業を成し遂げる!』というものだった。
 もう少し具体的に言うと、『シャンバラ大荒野を昔の王朝時代のように豊かな土地にし、みんなが過ごしやすくする』ということだった。
 それがどれほど難しいことであるかは、専門家でなくてもすぐに理解できよう。
 
 最初、和希は単身だったという。
 とにかく自分の力で荒くれどもをねじ伏せて、波羅蜜多実業高校の王にでもなるつもりで彼女は挑戦を続けた。
 されど時が経つにつれ、その『野望』は薄れていった。
 正確に言えば、野望のほうが衰えたのではない。
 彼女に賛同し、活動に参加する者が、少しずつ増えていったことで、和希の考えに変化が生じたのだ。皆でともに汗を流し、工事や農作業を行うことの楽しさのほうが、王者になるという野望を上回っていったのである。

 イリヤ分校に集まり、和希と志をともにする者の数は日ごとに増えていった。
 ひとりでは何もできない――そのことを和希は痛感したという。
 契約者として超人的な力があったところで同じだ。ひとりきりではどうしても限界がある。
 しかし、たったひとりでは動かせない岩も、手が回らないほどの規模の農業も、仲間がいれば可能になる。事実、可能になる物事は加速度的に増えていった。

 人が増えるたびに、和希の視野は広がっていった。
 困っているのは大荒野の民だけではなかった。
 パラミタのあちこちに中央政府の目や手が届かないところがあり、大小さまざまなトラブルを抱えていたのである。
 求められれば和希はどこへでも行った。仲間たちと、逆境を覆してきた。

 そうして長い年月が流れたとき、和希は己に問い返した。
 自分はふさわしい人間だったのだろうか――と。
 生徒会長になった。
 ロイヤルガードにも任命された。
 しかし自分は、果たしてその名にふさわしい立派な行いができたのか?
 もうじき足を踏み入れることになる生死の境界の向こうで、道半ばにして散った仲間や仇敵、恩師らと再会できたとして、恥じることのない人生だっただろうか?
 その答は誰にもわからない。
 和希自身にもわからない。
 
 もし未来の連中にも俺たちみたいなやつらがいて――末期に和希は思った。
 ――かつて大荒野や住みにくい地方の村々を変えてきた人間がいた、って昔話ででも語ってくれたとしたら、こんなに嬉しいことはないな。

 ………………。
 ……。

 千年の後。
 肥沃な緑の大地に、彼女は素足で立っている。
 遠い遠い、遙か昔に『学ラン』と呼ばれた服によく似た上着を両肩に羽織って。
 過去の表現に従えば、半袖の白いシャツに真っ赤なネクタイ、それにチェック柄のスカートを合わせたという服装になるだろう。
 頭には、ややあみだに被った黒い角帽が乗っていた。見事なまでに思い思いの方向に跳ねた黒髪が、その下からのぞいている。
 脱ぎ捨てた靴と靴下が、彼女の横に転がっていた。
 バンカラ、という言葉はもう絶えて久しいが、そんな呼び方をしたくなる。
 千年の昔、この土地は荒野であったという。農作物はおろか植物は苔すらも生えず、朝夕の寒暖差がすさまじい死の土地であったと。
 いま、水豊かにして緑深く、息を吸えば胸に清涼な空気が満ちるこの場所が、まるで正反対の地であったとは、にわかには信じがたい話だ。
「うん……?」
 彼女は、声を聞いた気がした。

「未来にも俺たちみたいなのがいて、困ったときには助け合うことを学んでいてくれれば……未来はきっと住みやすい世界になることだろう」

 誰だ、とは訊かない。
 彼女はその声に導かれて、この場所に来たのだ。己の行動が間違っていなかったと信じる。

「今日は辛く厳しくても、明日はきっと良い日になる。いつでも希望を忘れちゃいけない」

 きっと先祖の声なのだと、彼女は信じている。
 自身に流れる熱い血潮、そこに細胞レベルで受け継がれてきた想いなのだと。
「よし、行くぜ!」
 彼女は上着をなびかせ、振り返った。
 数十、いや、百を上回るだろうか、彼女を慕ってついてきた人種男女年齢さまざまな者たちが、一斉に声を上げた。
「ここが俺たちのフロンティアだ!」

 新しい歴史が、はじまろうとしている。
 


 《完》

 
 
 

担当マスターより

▼担当マスター

桂木京介

▼マスターコメント

 マスターの桂木京介です。

 ありがとうございました。
 本当に本当に、ありがとうございました。
 猛烈に長いリアクションになったことをお詫びします……!

 目次・索引はつけられなかったので、ご面倒かもしれませんが検索などしていただいて、ご自身の関わった部分だけ読んで楽しんで頂ければそれで私は満足です。
 なお、あちこち前後している部分はありますが、全体的な流れとして、リアクションはほぼ時間軸順にならべております。

 もしあなたが、すべてを読んで下さるという酔狂な方であれば、申し訳ないので少しずつ、目を通して頂ければ充分です。
 (でも、そんなあなたのことが大好きです!)

 こうして結末を迎えるにあたって、なんとも寂しい気持ちで一杯です。
 愛着の湧いているキャラクターはたくさんいます。もっともっと、彼らに会いたいと思っています。
 今回初めてご参加いただいた方にしても、「次はこういう話を書けたらいいな」という方ばかりでした。
 でも、それはもう叶わないのですね……。

 社交辞令ではなく、心から名残はつきませんが、ともかくこうして、私ができることはほぼ完了しました。
 もう一度、ありがとうございましたと言わせて下さい。

 それではまたいつか、どこかで、再会できることを祈りつつ、締めくくりとさせて頂きます。
 桂木京介でした。



―履歴―
 2014年11月17日:初稿
 2014年11月19日:第二稿(誤記等訂正・コメント全員分追記)
 2014年11月21日:第三稿(誤記等訂正)
 2014年12月2日:第四稿(誤記等訂正)