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昔を振り返り今日を過ごし未来を見よう

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昔を振り返り今日を過ごし未来を見よう
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リアクション

 現在、2024年。ツァンダ、あおぞら幼稚園の園庭、朝。

 ナコを含む数人の保育士と多くの園児達が騒がしく集まっていた。
 その中には
「私達も誘ってくれてありがとう」
 仲良くしている少女座敷童がいた。
「人が多い方が楽しいからね……今日は一緒に頑張ろう」
 酒杜 陽一(さかもり・よういち)は少女座敷童に答えてから屈み込み足元をちょろちょろと歩き回るてんの頭を撫でた。
「♪♪」
 てんは嬉しそうに鳴いた。
 その時
「春ちゃん!」
 少女座敷童を呼ぶ女の子声。
「あっ、呼んでるから行って来るね。えと、てんの事はお兄さんにお願いするね……あとありがとう。秋のお祭りに誘ってくれたおかげでお友達が出来たから……それじゃ」
 春はてんを陽一に任せ友達の所に行こうとする前に友達が出来るきっかけを作ってくれた陽一にお礼を言ってから行ってしまった。
「良かった。てんと一緒にいるからお友達と楽しんでおいで」
 陽一は友達の所に行く春を見送った。彼女に新しい友達が出来た事を喜びながら。
 そして
「陽一お兄ちゃん」
 絵音がやって来て
「わぁ、可愛い動物がいっぱい」
 絵音は陽一が連れて来た動物達に目を輝かせパラミタセントバーナードの頭を撫で撫でした。
 そんな彼女の傍には陽一が関わった事件で仲良しになった大きな友達である三姉弟がいた。
「誘いを受けたからには存分に楽しませて貰うよ」
 ハルトが楽しそうに言い
「誘ってくれて感謝するわ」
 イリアルが誘ってくれた陽一に礼を言い
「……最初の説明の時に言ってたけど今日の遠足先予約してくれたとか」
 ナカトが言った。
「……遠足先に困っているのを聞いて力になれたらと思ってね。今日は存分に楽しもう」
 皆が楽しそうに陽一は言った。
 そして
「……農園にはさつまいもに栗に柿に林檎……秋の味覚沢山ね」
 隣にいた高根沢 理子(たかねざわ・りこ)は最初に聞いた本日狩る内容を繰り返しクスリとすると
「そうだね。何たって秋は……」
 陽一がうなずき、秋の定番文句を口にしようとするが
「……食欲の秋だからね。芋や栗は釜で焼いて食べるとか。楽しみだね」
 ジークリンデ・ウェルザング(じーくりんで・うぇるざんぐ)が遮り口にした。すでに食べるところを想像してすでにわくわくしている。
「……頑張らねばな」
 セレスティアーナ・アジュア(せれすてぃあーな・あじゅあ)はもう狩る気満々である。
 理子達三人は事前に陽一に誘われ何とか今日に向けて時間を空けるために仕事を頑張った。
 ここで
「折角だから童心に返って楽しんでみようか。ハロウィンの時のように。大人の役目は他に任せてさ」
 陽一は悪戯っぽく理子達に言った。
「それはいいわね。ハロウィンの時は楽しかったし、子供なら許せる事もあるしね」
 理子はハロウィンの時子供になった事を利用して陽一の警告を破った事を思い出しニヤリと笑んだ。
「あの時は大事にならなかったけど、姿は変わっても中身は大人なんだから気を付けてくれよ」
 陽一はやらかしそうな理子に釘を刺すが
「陽一、かたい事言わないの」
 理子は茶目っ気を見せるばかりで大人の振るまい云々ははぐらかしたまま。
「大丈夫なら遊ぶ事に集中したいね。いつもいつも忙しいから」
 ジークリンデは少し疲れたような溜息を出した。
「私も賛成だ。となれば満場一致、頼む」
 セレスティアーナがまとめた。
「では」
 陽一は自分に『ちぎのたくらみ』を使い理子達三人を『タイムコントロール』で子供の姿になり園児達と完全に混ざった。
 そして
「それでは農園へ遠足に行きますよ。よそ見をせずにきちんと付いて来て下さいね」
 ナコの合図で目的の農園に向かって出発した。陽一達は、ナコ達の手伝いを連れて来た特戦隊に任せ本日は本当に遊ぶ事だけに集中する事に。
 農園に向かう道々。
「お姉ちゃん、一緒にしようね! お芋も栗もいいけど、林檎狩り頑張ろうね」
 赤好きのキリスがセレスティアーナに楽しそうに話しかけた。ハロウィンと秋の祭りにて仲良くした事もあってだろう。
「ふむ、赤好きとしては林檎狩りは特に頑張りたくなるようだな」
 すでにキリスの好みを周知済みのセレスティアーナはニヤリと言った。
「当然だよ! お姉ちゃん達また小さくなったから一緒に楽しめるね」
 キリスはにこにこ。大人と子供と子供同士はやっぱり違うらしい。

「また前みたいに約束破っちゃおうか?」
 理子がこそっとシュウヤの耳元に悪い誘いを囁く。
「いいの?」
 シュウヤは思いっきり振り返り聞き返した。
「いいの、いいの。でも陽一には内……」
 さらに余計な事を言おうとする理子は
「理子さん、聞こえてるよ」
 近くにいた陽一の耳に入り注意が入り
「あらら、残念♪」
 理子は悪戯っぽく言った。
「……全く理子さんは(仕事が仕事だから解放感に溢れているな)」
 陽一は最愛の人の自由ぶりに溜息を吐きつつも西シャンバラ代王という重責を務める身を考えると仕方が無いかと思ったり。自分よりも自由は少ないだろうから。
「ほらほら、子供らしく笑わないと、陽一くん」
 理子はにぃと笑ってからかうなりたぁと走った。
「理子さん」
 つられるように陽一も走り出した。

「ねーちゃん、ついたらどっちが沢山とれるか競争しようぜ!」
 勝負好きのウルトはジークリンデに挑戦をふっかける。
「いいよ。でもお姉ちゃんも負けないからね」
 優しいジークリンデはウルトの挑戦を受けていた。

 とにもかくにも近くの農園に到着した。子供達は保育士や特戦隊やイリアル達など大人達を引率にして思い思いに好きな秋の味覚狩りを始めた。

「ちょ、おい、引っ張るな」
 到着するなりセレスティアーナは
「お姉ちゃん、行くよ!!」
 自分を気に入っているキリスに手を引っ張られ林檎狩りに連行された。

「ねーちゃん、栗に行くぞ!」
「負けないからね」
 ジークリンデはウルトと共に栗拾いに直行した。

「二人に負けないように私達も楽しまないとね」
「そうだね。沢山秋の味覚を狩ろう」
 理子と陽一もセレスティアーナ達を見送った後動き出した。
 そして秋の味覚狩りが始まった。

 林檎狩り。
「ほらほら、お姉ちゃん沢山取ったよ! 大好きな色がいっぱい!」
 キリスは農園から渡された子供用の小さなバケツ一杯に林檎を入れていた。
「入れすぎだ。こぼれている」
 セレスティアーナがキリスのバケツを見て呆れた。何せ沢山入れ過ぎて幾つもの林檎がバケツから落っこちていたから。
「……どうしよう」
 キリスは困っていた。お持ち帰りはバケツに入る分だけだから。
「……ふむ。こぼれた分は私のバケツに入れるがいい」
 セレスティアーナは空きのある自分のバケツを差し出した。
「ありがとう。お姉ちゃん!!」
 キリスは嬉々としてこぼれた林檎を全てセレスティアーナのバケツの中に入れた。
 これで問題解決かと思いきや
「……お家に沢山持って帰りたいのにどうして子供用のバケツなのかなぁ」
 お持ち帰り用が少ない事に問題を言い出した。
 そこに
「俺の林檎を分けてあげるよ」
 声を聞きつけた陽一が現れ、林檎がまだほんの少しのバケツを見せた。隣にはパラミタセントバーナードがいた。
「本当!?」
 キリスは嬉しい話に顔を輝かせた。
「本当だよ。ただ俺のバケツにはまだ林檎はあまり入っていないから手伝って欲しいな」
「手伝う!」
 キリスは陽一のお手伝いを求める話に元気な大声で答えた。よほど赤色が好きらしい。
 それに対してパラミタセントバーナードが一声鳴き
「わんちゃん!」
 キリスは思わずもふもふした。
「手伝ってくれてありがとうって言ってるんだよ」
 陽一は犬語は分からないがパラミタセントバーナードが楽しそうな様子からキリスを喜ばせようと言葉を選んだ。
「そっかぁ」
 キリスは嬉しそうにもふもふしまくった。
 それから陽一はキリスとセレスティアーナと一緒に林檎狩りを楽しんだ。

 栗拾い。
「絶対にねーちゃんには負けないからな」
「私も負けないからね」
 ウルトとジークリンデは正々堂々と栗拾い勝負をしていた。

「本当に負けず嫌いなんだから」
 友人の様子を少し呆れながらシュウヤが見守っている所に
「勝負はどうなってるかな?」
 陽一が登場。
「まだ分からないよ。二人共すごくて……お兄ちゃんは拾った?」
 シュウヤは肩を竦めながら答えて案配を訊ねた。
「まだ少しだけかな」
 陽一は栗少しだけのバケツを見せた。
 その時
「♪♪」
 足元からてんの鳴き声がし
「?」
 視線を落とすと拾った栗を陽一に渡そうとするてんがいた。
「……拾ってくれたんだね。ありがとう」
 陽一は笑み、栗を貰ってバケツに入れた。
「……その生き物って妖怪のてんでしょ?」
 てんを見た聡明なシュウヤはすぐに正体を察して陽一に確認すると
「物知りだね」
 陽一にはにこにこと褒めた。大人の姿ならここでシュウヤの頭を撫でていただろうが今は同じ程度の丈なので褒めるだけで子供同士のお喋りだ。
「いいなぁ」
 シュウヤが羨ましそうにしているとケルベロスジュニアがやって来て
「……ん……栗?」
 拾った栗を渡そうとするが戸惑うシュウヤは答えを欲してちろりと陽一を見た。
「あげるって言ってるんだよ。人懐っこい子だから」
 陽一は笑いながら答えると
「ありがとう。ねぇ、この子と一緒に栗拾いしてもいい?」
 シュウヤは嬉しそうに栗を受け取り一緒に栗拾いを楽しみたくなったのか陽一に訊ねた。
「いいよ。頑張って」
 ケルベロスジュニアが楽しそうなのを見て一緒の栗拾いを許した。
「ありがとう!」
 許可を貰うなりシュウヤはケルベロスジュニアと栗拾いに行った。
「さてと俺も頑張るか」
 陽一も栗拾いを楽しんだ。

 柿狩り。
「じゃーん、こんなにとったよ!」
「沢山ね」
 キーアがバケツ一杯の柿を理子に見せて自慢していた。
「だって、家とおばちゃんといつも行く喫茶店のマスターさんとあと色んな人にあげるって約束したから!」
 キーアはあげると約束をした人を列挙するが多過ぎて途中で口にするのをやめた。
「沢山の人と仲良しなのね」
 理子がキーアの幼いながら知り合いが多い事に驚くと
「うん。だって……」
 キーアは理由を言おうとして言葉を止めた。
 なぜなら
「あら、陽一」
 陽一が来たからだ。
「二人共沢山とったね」
 陽一は二人のバケツを見ながら言った。隣にはペンギンアヴァターラ・ヘルムのペンタがいた。
「当然よ。来たからには楽しまなきゃ損でしょ」
 理子は語調強めに当たり前だと言わんばかりに言った。
「確かにね……話の途中だったね」
 陽一は理子にうなずいてから自分が二人の話の中に介入した事を謝ると
「ううん、いいよ。続きはね、人と仲良しは楽しいからだよ。こうしてお姉ちゃんとお兄ちゃんと一緒にいるのも楽しいから。だから色んな冒険をして色んな人と会って仲良くするのが好き」
 キーアは気を害した様子はなく言おうとした事を紡ぎながらペンタを撫でた。
「そう言われると嬉しいわね」
「……出会えて良かったと思っているよ。こうして楽しい時間を過ごす事が出来たから」
 理子と陽一は大人の顔でキーアだけでなく園児と関わり賑やかな時を過ごしたこれまでを振り返っていた。
 そして
「楽しむわよ!!」
「あぁ」
 理子と陽一は柿狩りに精を出した。


 芋掘り。
「……そこかい?」
 畑の前に立つ陽一は自分を導いたてんに訊ねると
「♪♪」
 そうだと言うように鳴いた。
「よし、掘ってみようか」
 陽一は仲良しのてんを信じててんが立つ場所を掘った。
 すると
「……大きくて多い……もしかして分かったのかい?」
 大きくて大量の芋がごろごろと現れた。
 それを見て陽一はもしやと感じて訊ねると
「♪♪」
 てんは嬉しそうに鳴いて別の場所へと大好きな陽一の力になろうと駆けて行った。
「……次はそっちか(獣の勘なのか何か俺達には分からない物で察したのか……でも妖怪だから普通の動物とは違うというのもあるのかな)」
 陽一はてんに付いて行きながら胸中で思考を巡らしていたが当然答えは分からなかったが、それほど気に留めなかった。

 またてんの案内で畑を掘り大きくて大量の芋をゲットした所で
「……?」
 陽一は聞き覚えのある声が耳に入って来た。
 それは
「う〜ん」
 絵音のうなる声だった。
「これは絵音ちゃんの声……何かあったのか? 確か三人と一緒のはず」
 陽一は心配して声のする方へ様子を見に行った。

 絵音がいる畑。

「……随分てこずってるみたいだが」
 陽一が現れた先に広がるのは絵音とナカトとハルトがつるを引っ張りイリアルが付近の土をスコップで掘っていた。
「なかなかしぶとくて」
 イリアルが土を掘りながら
「さっきからこうして引っ張ってるんだけどなかなか抜けなくて」
「これ絶対に大物だぜ」
 ナカトとハルトはつるを引っ張りながら言った。
「……俺も手伝うよ」
 陽一はスコップを取り出しイリアルと共に周辺の土を掘り始めようとすると
「犬さんが来た……応援してくれてるのかな」
 シャンバラ国軍軍用犬がやって来て一声鳴き絵音の目を引いた。
「そうだよ。だから絶対に掘るよ」
 陽一はシャンバラ国軍軍用犬の様子から絵音の言う通りだと判断するなりスコップで掘り始めた。
「ありがとう、陽一お兄ちゃん!」
 絵音は陽一の手助けに喜びさらなる力を発揮した。

 陽一が手伝いに加わって少しして
「抜けた!!!!」
 勢いよく抜けてつるを引っ張っていた三人は後ろによろめいた。
 なぜなら現れたのは
「うわぁ、大きいよ!! お化け芋だよ!!!」
 絵音の歓声でも足りぬほどの馬鹿でかい芋が一つ生えていたのだ。
「すげぇ、こんな芋あるのかよ」
「頑張った甲斐があったな」
 ナカトとハルトは芋の予想外の大きさに驚き
「すごいわね」
 イリアルは手を叩き、シャンバラ国軍軍用犬も褒め称えるように鳴いた。
「……凄い芋が眠っていたな」
 陽一も育ちまくった芋に驚きと感心が混じった声を洩らした。
「みんなで食べようね!」
 絵音はにこにこと大きなお友達に言った。
「あぁ、食べよう」
 陽一も笑顔で誘いを受けた。当然イリアル達もだった。
 この後も陽一は芋掘りを楽しんだ。
 秋の味覚狩りの狩りの時間はあっという間に過ぎ、みんなの大好きな秋の味覚を味わう時間がやって来た。

 秋の味覚を味わう時間、農園の施設で収穫した芋や栗を釜で焼いて外で食し中。
「おいしいねぇ」
「うむ、おいしいな」
 キリスとセレスティアーナは仲良く芋を食べほっこりしていた。

「くそぉ、同点かよぉ」
「同点だったね。でも自分が拾った栗は最高点だよ」
「確かにお店のよりずっと美味しい気がする」
 ウルトとジークリンデとシュウヤは自分の拾った栗を食べて想像以上の美味しさに和んでいた。
「……お化け芋、おいしいねぇ」
 絵音がほくほくと五人で分けたお化け芋を幸せそうに頬張っていた。
「あぁ、うまいな」
「こんな美味しい芋に出会って運が良かったよな」
 ナカトとハルトも満足げに食べた。
「確かに美味しいけど、それはこの芋の味だけでなくみんなで力を合わせて掘ったからだよ」
 お化け芋を食べながら陽一は四人の顔を見回した。芋の味以上が加味されていると。
 陽一の言葉を受け
「そうだね。幸せの味だね!」
 絵音は分かったと言うようににっこり笑った。
「……そうね」
 イリアルはしんみりとうなずいていた。陽一の尽力で何とか踏ん切りをつけた亡くした両親や妹の事を振り返っていた。

「……秋の味覚狩りで自分が狩った物を食べる……何気ない日常だけど……とても平和でいいわね。こういう時間」
 理子は今流れる平和な時間を愛おしみつつ芋を食べていた。
「そうだね。こんな時間がこれからも続くといいね……いや俺達で護って行きたいね」
 隣に座る陽一も理子と同じ気持ちを抱きつつ芋を頬張っていた。この笑顔溢れる日常を護らなければと。
 この後も秋の味覚の味わう時間は賑やかであった。

 愛しき平和な日常はゆっくりと過ぎていくのだった。