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リアクション
現在、2024年。イルミンスール魔法学校、昼。
「しかし、ここまで細々と準備するとは優秀な生徒会書記になりそうじゃな」
アーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)は生徒会の書記をする事になったザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)の手伝いとして必要情報をまとめていた。
「……会議などの時に議事録を取るのが書記ですが、それを効率的に行うために学内の内情を把握する必要があると思いまして、始まってから慌ててはいけませんからね」
ザカコは今度自分が担当する事になった役目を十二分に発揮できるよう事前準備に精を出していた。
「そうじゃな」
アーデルハイトはうなずきながらも作業の手は止めない。
ザカコはふと口元に笑みを洩らしながら
「イルミンスールの内情把握と言えばあの双子ですかね。それ以外にも彼らのようにいつどんな事件が起きるか分かりませんし必要になってからでは遅いので生徒の連絡網的なものも用意しておいた方がいいかもしれませんね」
と言った。これまで色々と巻き込まれた馴染みの双子を思い出しつつ。
「そうじゃな。あの二人は本当に落ち着きが無いからの……あの双子だけでなくこれからも色々あるかもしれぬから用心に越した事はなかろう」
アーデルハイトも双子に迷惑を掛けられた事を振り返り溜息を吐いてからザカコの提案を受け入れた。
「この作業も少しすれば終わる故、連絡網についてはこちらでやっておこう」
アーデルハイトが連絡網に関して引き受けた。
「お願いします」
ザカコはすっかり任せて連絡網関連以外の作業を進めた。
そして何やかんやと奮闘したおかげで作業に一区切りつき
「っと、もうこんな時間ですか……お昼にしましょうか、アーデルさん」
ザカコはふと時間を確認するなり昼食の時間をすっかり過ぎている事に気付いた。
「そうじゃな。にしても時間が過ぎるのは早いの」
声をかけられアーデルハイトも時間を確認し作業に没頭する内に随分時間が経った事を知った。
「アーデルさんのお陰で大分仕事が捗りました。有難う御座います」
ザカコは改めて自分の仕事を手伝ってくれた事に礼を言った。
「いや、学校運営に関わる者として当然の事じゃ」
アーデルハイトは笑いながらさらりと流し
「……しかし、今日は天気も良い。情報まとめるのも今日絶対にせねばならぬ訳でもない。出掛けたりと外で過ごしても良かったのではないかの」
アーデルハイトは窓の外に広がる晴れ渡った青空を見た。
「本当に今日は良い天気ですね」
つられるようにザカコは窓の外を見てからそっと空を見るアーデルハイトの横顔を一瞥してから
「……外に出掛けたりせずともこうして窓の外を一緒に見ているだけで十分幸せです」
ザカコは微笑して言った。窓の外を見るという日常の一コマであっても愛する人と共にいられるのなら十二分過ぎる幸せである。
「……そうか」
アーデルハイトは少し複雑そうな心持ちで一言だけ洩らした。複雑なのは以前にザカコに自分と共に生きたいと伝えられ渡された指輪を受け取ったという事があったからだろう。
「……せめて食事は外で食べるかの。ちょっとした気分転換にも良いはずじゃ」
アーデルハイトはあえて告白の返事はせずに食事に誘った。
「いいですね」
ザカコもあえて告白の事は口にしない。無理強いするつもりはなくこうして日々を一緒に過ごしながら気長に待つつもりだから。
ともかく二人は食事を取りに動いた。
その道々
「……アーデルさん、何か騒がしくありませんか? もしかしてあの双子だったり……」
ザカコはどこからか騒がしい音が聞こえ、一瞬にして心当たりが脳裏に浮かぶ。
その間アーデルハイトは近くの生徒から事情を聞き
「そのようじゃ。様子を見に行きたいのじゃが良いかの?」
双子が騒ぎを起こしている事を知り気になったり。気になるのはこれまでの事で二人共双子の事をよく知っているから。
「えぇ、構いませんよ。すっかりあの双子を叱りに行くのもココ最近の楽しみの一つになってしまいましたね……あちらにとってはたまったものじゃないのかもしれませんが」
ザカコもまた気になるため寄り道を快諾すると共に口元をゆるめて双子が聞いたら文句を言いそうな事を言った。
「それなのにあの二人は悪さを繰り返すからの。案外説教されるのが好きなのかもしれんな。こちらは趣味の説教が出来て大歓迎じゃが」
アーデルハイトはカラカラと笑った。
とにもかくにも二人は中庭で茶会をしている双子の様子を見に行き、双子と会っている四人の来訪者が上手に対応している事を確認するなり邪魔をしてはいけないと声を掛けずに離れた。
そして
「……取り越し苦労だったみたいですね」
「そうじゃな。改めて食事に行こうかの。美味しい物を食べてまた作業を頑張ろうかの」
ザカコとアーデルハイトは散々な目に遭っている双子に笑みを洩らしてから食事を楽しみに行った。
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