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リアクション
■ 夜の街を飛ぶ ■
夏侯 淵(かこう・えん)が、ほくほくと機嫌の良い顔をしているのを見て、カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)は「どうした?」と声を掛けてみた。
すると、「昨日、良い夢を見ての!」と返事が返る。
「夢でそんなに機嫌がいいのか? どんな夢を見たんだ」
不思議に思って、再度訊ねた。
「そうだな、五年も前の話だ。
あの頃は飛空艇がまだ珍しくてな……。それを手に入れたのが嬉しくて、皆で夜空のツーリングをしたのだ。
傑作なのが、カルキ、お前が自力飛行をしていてな」
ふふふ、と淵は笑った。
「俺が? それはまた、妙な夢を見たな」
ドラゴニュートであるカルキノスは、自力で飛行することはできない。
龍は飛べる、という、淵の生きていた頃の常識が見せた夢なのだろう。
「そうじゃ、俺の夢の中では、御主は自在に、だがいつも一人寂しく飛んでいた。
あの日我らと一緒に夜空を飛んで、御主のあの、嬉しそうな顔、今も鮮明に思い出せるわ」
「勝手に人の感情を作らないでくれ」
ああ、でも、それが実現したら、本当に楽しそうだ。カルキノスは内心でそう思う。
「競争をしたら、誰が勝つかという話になってな」
「……競争したのか」
「したとも。ダリルは、『小型飛空艇の性能テストとして』などと抜かしたが」
「奴らしい言い訳だな。誰が勝ったんだ」
「むむ、俺はルカと相乗りだったからな。一人で乗っていたら負けなかった」
一位はカルキノス。淵の夢の中では、一番飛行に慣れていた。
「一人なら負けぬ!」
と、淵が再戦を提案したところで目が覚めた。
「惜しかった……。もう一度やったら勝っていた」
「で、結局負けた夢なのに、そんなに機嫌がいいのか?」
首を傾げたカルキノスに、淵は笑う。
「そうとも!」
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