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君を待ってる~封印の巫女~(第2回/全4回)

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君を待ってる~封印の巫女~(第2回/全4回)

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第8章 図書館を守りぬけ!(図書館)

「図書館にはあたしの大好きな『秘密の占いブック』が! あれを燃やされたらあたしは後悔する!」
 大好きな本を守る為、図書館に駆けつけた初島 伽耶(ういしま・かや)アルラミナ・オーガスティア(あるらみな・おーがすてぃあ)
 サラマンダーズとの小競り合いというか戦いは既に始まっていた。
 周りには、巻き込まれたと思しき生徒や戦いで傷ついたらしい生徒たちの姿もある。
「この人はまだレアだわ!」
 ちょい焼けな生徒に駆け寄った伽耶は直ぐにヒールで治療を始め。
「伽耶達には指一本触れさせないわよ!」
 アルラミナはサラマンダーを足止めするべく、氷術を放った。
 足を縫いとめられるサラマンダー。それは直ぐに溶けてしまうが、こちらに意識を向けさせる事が出来た。
「アルラミナかっこ良い!……って、どうしたの?」
 何故か自分の手をじっと見つめていたアルラミナは、叫んだ。
「うおぉー! 初めて魔法使ったかもしんない!」
「な、な、なんですって〜!」
「ウイザード最高! ウイザード万歳!」
 その場でくるくる回りながら、大興奮である。
 その様子に違う意味で驚く伽耶。
「……ウイザードだったの!?」
「知らなかったの!?」
「バニーガールだと思ってました……」
 赤いツインテールのバニーさんは一瞬沈黙し。
「さっ、残りもちゃっちゃとやっちゃいましょうか」
 何事も無かったかのように、スルーしたのだった。
「非戦闘員の避難が最優先であります!」
 比島 真紀(ひしま・まき)の弾丸が、サイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)の氷術が、追いすがろうとしたサラマンダーを粉砕する。
「今の内に逃げるのであります!」
 教導団軍服に身を包んだ真紀に驚いたらしい生徒は、直ぐに頷き駆け出した。
「ありがとう! 気をつけて!」
 軽く首肯しつつ、真紀は図書館入り口を冷静に見据えた。
 ポツポツと出てくる避難者達を守る……傷つけさせない為に。
「避難が完了したら、あのデカブツを仕留めるぜ」
「当たり前であります」
「おおっ既に始まっていますね」
 ようやく辿り着いたルイ・フリードとリア・リム。
「もう大丈夫です」
 逃げ遅れたと思しき図書委員に、キラン♪、『ルイ!スマイル!』を向けるルイ。
 スキンヘッドの大男が繰り出す、爽やかすぎる笑み。室内の温度が1、2度上がった気さえする。
 向けられた哀れな犠牲者……もとい要救助者はピキンと固まった。
「その、ええと……」
「はいはいはい、無意味に笑ってないで、さっさと避難させるのである」
「無意味……いや、ワタシはこの人を安心させようと……」
 みなまで聞かず、リアは図書委員の手を引いた。
「どうやらここはこれから、これまで以上に危険になりそうだからな……言ってる側から」
「足止めしている間に、連れていってくれ」
 サラマンダーと目が合ったリアが図書委員を背後に庇う。と、そこに頭上から声とダガーが降ってきた。
 ローグの赤月 速人(あかつき・はやと)である。
「小さけりゃ何とかなるんだが……ん? 足に怪我してるか」
 気づいた速人は上っていた本棚から飛び降りると、図書委員の傍らに膝を突いた。
「ちょっと待て……ん、これで良し」
「慣れたものですね」
 手早く応急処置をする速人に感心したようにルイ。
「まぁね。それより、この人を頼んだ」
 頷き、リアとルイは立ち上がった。

「させるかぁぁぁぁぁぁっ!?」
 目を血走らせた七枷 陣(ななかせ・じん)が、バーストダッシュを応用した跳び蹴りでサラマンダーを蹴り飛ばす姿。
 パートナーのリーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)は大きな目を更に見開いた。
「死ね! 漫画に群がるトカゲは死んでまえ!……あ、どうでもいい政治家の自伝とかは別に構いませんよ?」
 サラリと聞き捨てならない事を言っている気がする陣。
 そう! 陣にとって大事なのはあくまで漫画本。漫画達は陣にとって、休み時間の一服の清涼剤なのであ〜る。
「こっち来ないでよー! まだ4部の途中までしか読んでないのにぃ〜!」
 それはこちら……我に返って応戦するリーズも同じだったが。
 しかし、小物とはいえ図書館に侵入を許した以上、駆逐は大胆且つ速やかに行わねばならない!
 ただ不利なのは、サラマンダー達は好き勝手出来るが、陣達はそうはいかない……漫画達を守りながら戦わねばならないという事だった。
「あってめぇ、何しやがる!」
 ぽっと火を吐かれた先……漫画を守るべく火を手の平で受けた陣は、キレた。
「あっつぅ!……こんのぉ、熱いんが何やっつの! ヲタ舐めんなー! 埋めっぞコラーー!」
 握り固めた拳、力の限り蹴っ飛ばされたサラマンダーが、風に吹き消されるように昇天する。
「……こんなに必死になってる陣くん見るの、ボク初めてかも」
 その気迫に、再び呆然としてしまうリーズ。
 すごい、ってか人変わってますよ?
「リーズ! 何ボーっとしてん! 早うそのトカゲやってまえ!」
「う、うん分かってるよ!……漫画関係で陣くん怒らせないようにしよう。ホントに」
 慌ててサラマンダーに突撃しながら、リーズはそう心に刻んだ。
「ふはははー! 向かってくるトカゲは敵やー! 向かってこないトカゲは訓練された敵やー!」
 いっちゃった表情で高笑いする陣。
「彼、先に大人しくさせた方が良いんじゃないかしら?」
「一理ありますが、まぁ彼も頑張っているという事で」
 物陰から見守る心配そうなさつきに、ライ・アインロッドはしみじみと呟いた。
「良かったです、先に本を移動させておいて」

 ドゴン。

「あっ、ごっめ〜ん」
 と、そんな陣の後頭部にめり込むモーニングスター。
 サラマンダーと戦っていたセシリア・ライトの流れメイスだった。
「……う〜ん、バタン」
「ああっ大丈夫ですか、しっかりして下さい!」
 バタンキュ〜、な陣にメイベル・ポーターは慌てて駆け寄り、治療を始める。
 ……このまま放っておいた方が図書館の為な気もするけれども。
「陸斗殿、危ないっ!」
 更に倒れる際に陣がぶつかった本棚が、サラマンダーと戦っていた井上陸斗に向かい倒れこんでくる。
「おわっ!?」
 瞬時にディフェンスシフトを使用してくれた藍澤 黎(あいざわ・れい)のおかげで、何とかたんこぶくらいで済んだ、らしい。
「また陸斗殿は騒動に?! 無意味に酷い目にあうに決まっているのに、ええい、見過ごせるか!」
 と、すっかり陸斗の守護者と化している黎、不幸体質っぽい陸斗のフォローがどんどん板についてきている。
「なんでまた、またこないなことに巻き込まれてんや、このムッツリー! もっと頭つこうたらどないやねんー!」
 黎のパートナー、フィルラント・アッシュワース(ふぃるらんと・あっしゅ)は本日も切れの良い突っ込みを疲労しつつ、テキパキ本を片付ける。
 燃えたら困るし、何より……放っておくと陸斗は確実にけっ躓き、酷い事になるに決まっているのだ。
 そんな判断がつく位には、フィルラントも陸斗との付き合いが長くなってきた。
 ついでを装い陸斗にヒールをかけながら、
「ほんま、気をつけるんやで。この位のケガなら治せるけど、世の中には治せんケガもあるんやで!」
「悪い、悪い……で、あいつがそうか」
「そのようだが、その前に……」
「キミらボクの話聞いとらんやろ!」
 フィルラントの怒鳴り声をBGMに、黎はファイアプロテクトをかけたのだった。

「邪なる熱が我等を焼かぬように……」
 菅野 葉月(すがの・はづき)はファイアプロテクトで皆の炎への耐性を、ディフェンスシフトで防御力を上げつつ、ランスを振るった。
「あれが……あのサラマンダーだけは、本棚に近づけさせるわけにはいきません!」
「葉月! 無茶しないでよ!」
 一際大きな……大きすぎるサラマンダーに肉薄する葉月に、ミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)はつい声を上げてしまう。
「蒼い空からやってきて、静かな図書館護る者! 仮面ツァンダーソークー1!」
 そこに颯爽と現われたるは、風森 巽(かぜもり・たつみ)……いや!、銀色のヒーロー仮面に赤いマフラーを首に巻いて変身した今の彼の名は、仮面ツァンダーソークー1!
 図書館の平和を守る、正義の仮面ヒーローなのだ!
「とうっ!」
 気合と共にヒーローキックを決めると、仮面ツァンダーソークー1はスタッと葉月の横に着地した。
「共に戦おう! 愛と正義の名の下に!」
「ええっと……では、はい」
 ちょっとビックリはしたがこの仮面ヒーロー出来る、感じた葉月は肩を並べてデカサラマンダーを見上げた。
「あのね、あのサラマンダー達は怒りや不快感で大きくなるんだって。心配する気持ちも、食べられちゃうかもしれないよ」
 ミーナを落ち着かせるように笑顔を向けたのは、ティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)
 巽のパートナーである。
「こんな場所にあんなモンスターが現れたのも、誰かがケンカしたからじゃないの?」
 な〜んてね、というティアの言葉に、近くでサラマンダーと戦っていたセシリアとレイディスは反射的に顔を見合わせた。
「はははっ、まさかな」
「うむうむ、ただの偶然なのじゃ」
 そんなやり取りには気付かず、ティアはミーナに続けた。
「だから、楽しい事を考えるの。楽しい事、楽しい事……おお、巽がヒーローとして活躍してる!」
 興奮して目を輝かせるティア。パワーブレスを掛け巽を送り出したティアはさながら、ヒーローの介添え人か相棒か。
「葉月、頑張ってる……分かった、ワタシもワタシに出来る事、精一杯するわ」
 そうして、そんなティアに、葉月の姿に力づけられるように、ミーナもまた昂然と顔を上げた。
 デカサラマンダーの動きが僅かに鈍った、気がした。
「リア!」
「承知!」
 皆がデカサラマンダーに集中できるよう、ルイとリアは周囲のサラマンダーを駆逐にかかった。
 ルイがメイスで牽制しつつ動きを止め、リアが剣で仕留める。
 具体的にどう打ち合わせをしたわけではないが、戦いの中で自然と出来た役割分担だった。
 他の者達の為、他の者達が攻撃しやすいよう、デカサラマンダーの注意を引き付けるべくランスを振るう葉月。
 その胴をなぎ払おうと、サラマンダーの尻尾がヒュンっ、と鋭く動き。
「させないんだからっ!!」
 ミーナは氷術を放った。
 じゅっ!
 水と炎がぶつかり合い、蒸気と化す。
 尻尾を止められたのは、一瞬。
 けれど、その一瞬で葉月は攻撃に気づき、ランスでもって尻尾を打ち払う事が出来た。
「やっぱりワタシ達ってベストパートナーよね」
 不安とか心配を無理やり押さえ込み、ミーナは皆を守る葉月を守る為、再び氷術を放った。
「って、こっちも負けてられないな」
 図書館を守りたい、犬神 疾風(いぬがみ・はやて)もまた剣を手に戦っていた。
「やっぱ動きが鈍ってる。不安や恐怖は大好物でも、前向きパワーは大の苦手ってトコだな」
 周囲を見ると、他のサラマンダー達はほぼ一掃されたようだった。
 とすれば、残りはこのデカぶつだけ。
「そろそろ、仕上げと行こうか!」
「はい。一斉攻撃で決着を付けましょう」
「巻き込まれないで下さいね」
 そんな葉月達のサポートを受け、リネン・エルフトとガートルード・ハーレック、シルヴェスター・ウィッカー達はデカサラマンダーを仕留めるべく行動を起こした。
「……っ!!!」
 ブラインドナイブス。死角からの攻撃が、デカサラマンダーの胴を抉る。
 痛みは感じるのか、炎の尻尾を滅茶苦茶に振り回すが、隠れ身の効果で姿を隠すガートルードを捕捉する事は出来ず。
「先生!」
「あいよ親分」
 シルヴェスターからSPリチャージを受け、連続でブラインドナイブスを使用、ダガーの一撃が二度三度とデカサラマンダーへと突き刺さる。
「狙いは一点……そこだ! ツァンダー・ブルーフラッシュ!」
 同時に光条兵器を手にした仮面ツァンダーソークー1の必殺技が、葉月やリネン、陸斗達の攻撃がヒットし。
「……」
 そして、銃弾。
 光学迷彩で姿を隠したクリスフォーリル・リ・ゼルベウォント(くりすふぉーりる・りぜるべるうぉんと)が、シャープシューターでもって心臓部を撃ち抜いたのだ。
「ここはセシリアやレイディス達の学び舎、邪魔なモノは排除するであります」
 ドウッ、と床に倒れ、サラサラと火の粉を散らしていくデカサラマンダーを見下ろし、クリスフォーリルは胸中で呟いた。

 終わった。安堵に一同がそれぞれ気を抜く中。

 空が、ひび割れた。