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ゴチメイ隊が行く2 メイジー・クレイジー

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ゴチメイ隊が行く2 メイジー・クレイジー

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「刀真、急ごう、図書室が危ない!」
 樹月 刀真(きづき・とうま)の腕を引っ張りながら、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が叫んだ。
 図書カードを作ってもらい、なにかと利用させてもらっているイルミンスール魔法学校の大図書室がゴチメイたちに破壊されては大変と、漆髪月夜はかなり焦っている。
「そんなに焦らなくても、いくらあいつらでも、世界樹の内部を破壊なんてしないだろう」
 ちょっと諭すように、樹月刀真が言った。
「だってえ、ヴァイシャリーの生け簀警備のときに、あれを見たでしょう?」
 漆髪月夜が言うのは、ココ・カンパーニュ(ここ・かんぱーにゅ)が星拳エレメントブレーカーと呼ぶ光条兵器のことだ。樹月刀真が自分の目で見た限りでは、属性攻撃を吸収して、それをカウンターとして放出することで攻撃をする特殊な武器のようだった。光条兵器としてもかなり強力だし、カウンター攻撃は凄まじい威力を誇っている。とはいえ、その使い方はあまりに特殊だ。むしろ、偏っていると言ってもいいだろう。所有者のココ・カンパーニュの技量でかなりカバーしているようだが、ドラゴンアーツが使えなければ、通常攻撃の間合いはかなり狭い。もっとも、遠距離から魔法などが飛んでこようものなら、それこそ使い手の思うつぼなのであろうが。かと言って、全方位をカバーできているようにはとうてい思えなかった。
 クイーン・ヴァンガードたちは、それが十二星華たちの持つ星剣の一つではないかと噂し、調べているらしい。さらに、アルディミアク・ミトゥナと名乗る十二星華が現れ、星拳エレメント・ブレーカーの対になるとしか思えない、星拳ジュエル・ブレーカーという光条兵器を使ったらしい。こちらは、明らかに星剣の一つであろう。
 ただ、樹月刀真としては、いくつもの疑問があって釈然としない。なぜ、同じ形の星剣が存在しているのだろう。噂では、アルディミアク・ミトゥナが、双星拳スター・ブレーカーという名を口にしたと言うから、元は一つの光条兵器だった疑いもある。だが、だとしたら、なぜ二つに分かれてしまったのか。疑問は尽きない。
「でも、あの光条兵器は異常です」
 漆髪月夜が、自分の持つ光条兵器とくらべて言った。普通の剣の花嫁が持つ光条兵器に、星剣のような特殊能力はない。それに、それぞれの星剣の持つ力は、はっきり言ってバラバラだ。特化している分、それぞれの星剣は、実に使い勝手が悪い。
「それを自在に操る十二星華たちが凄いということなのか。それとも、何か、俺たちがまだ知らない秘密が星剣にあるというのか……」
 いずれにしろ、調べなければ分からないことだ。その意味では、ココ・カンパーニュは最も重要な情報源でもある。
「なんとしても、見つけだすぞ」
「ええ、本を守りましょう」
 目的は違えど、手段は同じだ。
「まずは、この音楽室から。その次に下宿枝を……」
「最初は、図書室です!」
「あ、こら、月夜……。しょうがないなあ」
 一人走り出していく漆髪月夜を見送って、樹月刀真はちょっと迷った。だが、漆髪月夜はここの図書室をよく知っているはずだと自分を納得させると、単身音楽室の中を調べ始めた。可能であるならば、手分けした方が効率はいい。
 さて、図書室にむかって走り出した漆髪月夜であったが、階段の所で思わぬものを見つけてしまった。
「ふふふ、やっとケイたちをまけたぜ。このまま、大浴場にまっしぐらだ〜。おねいちゃ〜ん!」
 意気揚々と地下へむかうシス・ブラッドフィールド(しす・ぶらっどふぃーるど)の姿を見た瞬間、漆髪月夜の猫センサーが敏感に反応してしまった。
「猫ちゃんだぁ〜」
 ほとんど本能的にその後を追いかけていく。
「はっ、しまった。いけないいけない。今は、猫ちゃんよりも、本の方が大事だわ」
 地下へと下りていく階段の途中でなんとか正気に返った漆髪月夜は、あわてて図書室へと足をむけなおした。
 
    ★    ★    ★
 
「まったく、酷い目に遭ったのじゃ。これだから、世界樹は、油断も隙もないのじゃ」
 キネコ・マネーの顔面に激突したおしりをさすりさすりしながら、ビュリ・ピュリティアは自分の部屋にむかっていた。
 実は、先ほどまで世界樹の中の閉鎖空間に閉じ込められていたのだ。世界樹の変化は予測不可能なので、時々他の部屋や通路とは隔絶されたブロックが生まれてしまうことがある。なんとも物騒な話なのだが、たいていはエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)校長がなんとかしてくれることになっている。だが、運が悪いと何日か閉じ込められたりすることもあるらしい。
 今日のビュリは、運良く外へと開く扉のあるブロックに閉じ込められたというわけだ。結局、その扉ごと、そのまま転落してしまったのだが、下にいたキネコ・マネーをクッションにしたおかげで、なんとか怪我をせずにすんだのだった。
 通路のど真ん中で巨大な方眼紙を広げて突っ立っている、金髪縦ロールの派手な少女の横をすり抜けると、ビュリ・ピュリティアは自分の部屋へと戻っていった。
「まったく、マッピングするのも一苦労ですよね」
 巨大な方眼紙片手に、ロザリィヌ・フォン・メルローゼ(ろざりぃぬ・ふぉんめるろーぜ)が眉根を潜めた。
 ココ・カンパーニュを捜してはいるのだが、やはりマップがなければ話にならない。結局、マッピングしながら端から捜索しているのだが、どうにも思い通りに捜索は進まなかった。
「アルディミアク様が恨んでいるというココ様に会って、ぜひ真相を確かめたかったのですけれど、見つからなくては話が始まりませんわ」
 幸いにして、遺跡の事件で海賊たちの所にいたことは、あの場所にいた者にしかバレていない。この際、ゴチメイたちともパイプを作っておけば、後々役にたつかもしれなかったのだが。
 それにしても、アルディミアク・ミトゥナはひどくココ・カンパーニュを憎んでいるようだが、実際に二人の間には何があったのだろうか。詳細を聞かされなかったため、ロザリィヌ・フォン・メルローゼとしては、それが気がかりだった。どうせなら、二人の手を結ばせて海賊を乗っ取るのも素敵だと考えていたのに、つぶし合いをされたのではあまりに美しくない。
「せっかく、綺麗な衣装を着ていらっしゃるのですから、それを傷つけてはいけませんわ。できれば、わたくしも着てみたいと思っていますのに。とにかく、ココ様を見つけなければ……。こうなったら、手当たり次第ですわ」
 面倒くさいとばかりに、ロザリィヌ・フォン・メルローゼは、手当たり次第に個室のドアを開けて中を確かめだした。
「きゃあ!」
「誰よ、あなた!」
 たちまち、あちこちで悲鳴があがる。
「こ、ココにもココ様はいらっしゃいませんわね……。ゼェゼェ……」
 少し疲れ始めてきたが、ロザリィヌ・フォン・メルローゼは手を休めなかった。
「ああ…! ココにも! ココにも! ココ様は……」
「な、なんなのじゃー。ぎゃー、早く閉めるのじゃー!!」
 いきなり部屋のドアを開けられて、服を脱いでおしりに湿布を貼っていたビュリ・ピュリティアは、真っ赤になって叫んだ。
 
第3章 
 
「さて、こういう場合は、上から順に調べていくのが基本ですわよね」
「ええ、そのとおりですとも」
 箒を持ってエントランスから外に飛び出したナナ・ノルデン(なな・のるでん)鷹野 栗(たかの・まろん)は、そう言って顔を見合わせた。
「ああ、待ってよね」
 ちょっと遅れて、同じく箒を持ったズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)が駆けつけてくる。
「遅いですよ。さあ、では、頂上の展望台にむかって、出発でーす」
 全員が揃ったのを確認して、ナナ・ノルデンが号令を発した。三人でそれぞれの箒にまたがって、一斉に飛翔する。
 そこは、世界樹が自分たちの庭であるイルミンの生徒である、巧みに大小の枝を避けて、どんどんと上昇していった。
 無数に枝分かれした世界樹は、その枝のドームの中もまた立体の迷路であると言えた。やや上むきにのびた枝は、最も太い物は中に居住区が入るほどで、寝台列車を連想させるほどの太くて巨大な物だ。逆に、最も細い物は、通常の木の枝とまったくかわりがない細い物であった。
 だが、世界樹の特徴的なところは、その巨大さゆえの汎用性にあった。普通に住居として使用できるほどであるから、太い枝の上には厚く水苔が生えているところもあったりして、普通に別の植物が生えていたりするのだ。宿り木タイプの物は、双花と呼ばれるようなかなり特殊な物まで含めて数多いが、本来他の木に寄生しないはずのごくありふれた木や草までもが、さもあたりまえのように生えていたりする。そのため、世界樹からは、一年中、まったく違う種類の果物や木の実が採れたりするのだ。
「ひゃっほー」
 軽く奇声をあげて、ズィーベン・ズューデンが細い枝の間を、箒をローリングさせてすり抜けていった。
 密集している枝を避けて飛んでいくとなると、必然的にアクロバティックな空中機動となる。日々のそういった遊びに近い箒の使い方も、学生たちの飛行技術の上達に一役かっていたりするわけだ。
「痛い、いたたたたたたた……。もう、ベルナデット、痛いですわよ」
 容赦なく顔や身体にあたってくる小枝に、千石 朱鷺(せんごく・とき)が悲鳴をあげた。
「そんなことを言われても、こんな所を飛ぶのは慣れてないので、最初から無謀なのじゃ。だいたい、二人乗りでは、うまく扱えぬ。ううっ、重いのじゃ……」
 唸りながら、力一杯箒の柄を引っ張って方向転換しようと努力するベルナデット・アンティーククール(べるなでっと・あんてぃーくくーる)の言葉に、千石朱鷺は軽く彼女を睨みつけた。
「な、なんじゃ、その目は。わらわは、何も朱鷺が重いなどとは、一言も言っておらぬぞ。ただ、単純に、二人乗りだから重くて……」
「いいわけはいいから、ちゃんと前を見て飛んで……うぷっ、いたたたた、痛い、痛い……」
 後ろを振りむいていいわけするベルナデット・アンティーククールに、千石朱鷺はあわてて注意した。けれども、ときすでに遅く、密集した枝葉の中に思いっきり突っ込んでしまう。盛大な葉音とともに、世界樹の葉が何枚も舞い散った。
「いました!」
 幹からさらに上にのびた複数の枝に支えられるように載っているドーナッツ状の展望台に人影を見つけて、鷹野栗が歓声をあげた。
 細い枝が編み込まれるようにしてできあがった階段が、内部階段のなくなった枝の外周に螺旋を描いてのぼるようにして展望台へと続いている。まるでサークレットを枝が掲げ持っているかのような外観の展望台は、全面ガラス張りの室内を、手すりのついたバルコニーがぐるりと取り囲んでいた。そのバルコニーに、ナナ・ノルデンがふわりと着地した。
「捜したんですよ」
 ナナ・ノルデンが、ペコ・フラワリー(ぺこ・ふらわりー)に呼びかけた。
「編集部から救助命令が出ています」
「それは、大げさなことになっているようですね。私は、迷ったとだけ伝えたのですが」
 風にほつれた鬢の毛を軽くかきあげて、ペコ・フラワリーが鷹野栗に言った。
「遭難したということになってますよ」
 ナナ・ノルデンが告げた。それは、ペコ・フラワリーとしても、初耳だった。
「また、不必要に話が大きくなって……」
 まさに頭が痛いとばかりに、ペコ・フラワリーは額に手をあてた。
「こんな変なバイトに手を出すからですよ」
「やっぱり変なバイトだったのですね。簡単なバイトと聞いて引き受けたのですけれど……」
 ナナ・ノルデンに突っ込まれても、ペコ・フラワリーには返す言葉がなかった。
「それで、他の人たちはどこに行っちゃったんですか?」
 周りを見回しながら、鷹野栗が訊ねた。
「はぐれたきりです。とりあえず、この高い場所に来れば捜せるかと思ったのですが、ちょっと考えが浅かったようですね。見えるのは、どこまでも広がる森ばかりです。世界樹の下は、厚い葉に阻まれて、皆目見ることができませんから」
 展望台にいくつか設置してある望遠鏡に軽く手を添えながら、ペコ・フラワリーは言った。さすがに、この望遠鏡で透視できるわけでもなく、ましてや角度的に下にはあまりむかない。
「そうだよね。ここの望遠鏡は、遠くは見えるけれど、近くはさっぱりだもん」
 望遠鏡のレンズをのぞき込みながら、ズィーベン・ズューデンが言った。
「ここからは、いろいろな物が見えますから」
 鷹野栗は、以前ここから巨大スライムを探したことを思い出した。あのころにくらべて、世界樹はさらに大きく成長をとげている。今だったら、いったい何が見えるのだろうかと、鷹野栗も望遠鏡をのぞいてみた。
 北は、国境――と呼ぶにはまだ早いかもしれないイルミンスールの森が広がっており、どこまでがイルミンスールの影響圏内なのか、その先がどうなっているのかははっきりしない。
 東は、蛮族や獣人などの小部族がひしめくジャタの森を経て、パラミタ内海がえんえんと続き、これもまた果てがない。コバルトブルーに輝いて見える海には、水妖が振り乱した髪から零れた水滴の数にも勝る小島があるのだろう。
 西には、サルヴィン川に分断されたシャンバラ大荒野が見える。その先にかすかに見えるのは、タシガン海峡の雲海であろうか。
 南には、エメラルド色にたたずむヴァイシャリー湖と、その先にあるヒラニプラの山脈が望める。さすがに見えはしないが、その先に広がる雲海には空京が浮かんでいるはずだ。
 バラミタの周りを満たしている雲は、地球で言う雲とはかなり違う存在だ。巨大な大地を、浮き島としてその上に浮かべている。そのくせ、密度は確かに雲と呼べるもので、人が落ちれば遙か下の太平洋まで通過してしまう。まるで、意志をもって守るべき大地のみを支えているような存在だ。
「さすがに、浮き島まではここから見ることはできないようですね。伝説の彷徨う島が、この高みからなら見えるかもしれないと期待したのですが」
 ちょっと残念そうに、ペコ・フラワリーは言った。
 伝説には事欠かないここパラミタのこと、雲海にあるとされる雲流に乗って、幻の島が巡回しているという伝説もある。元々、雲海の中で固定されているわけでもない浮き島であるから、環境によって位置が変化したとしてもおかしくはない。むしろ、現在のように、変化しないということの方が不自然なのだ。
「旅する島かあ。それに乗って、ぐるりとパラミタ以外の大陸の場所へ旅できたら素敵かもしれないですね」
 ちょっと想像して、鷹野栗がうっとりと言った。
「見つけたのじゃー!」
 のんびりとした雰囲気を破壊するかのように、下からポンと飛び出してきたベルナデット・アンティーククールの箒が、展望台のテラスに叩きつけられるようにして不時着した。
「痛いですね、もう。もうちょっとうまく飛んでください」
 テラスに身体を叩きつけられた千石朱鷺が、軽く悲鳴をあげながらベルナデット・アンティーククールに文句を言った。二人とも、髪の毛といい衣服といい、身体中葉っぱだらけだ。
「これは、派手な登場ですね」
 思わず、ペコ・フラワリーが苦笑ともつかない微笑みを浮かべた。
「おや、あなたは……」
 見覚えのある顔に、ペコ・フラワリーが千石朱鷺に注視した。
「ああ、その件ですけれど」
 千石朱鷺は、すっとペコ・フラワリーの耳元に近づいてささやいた。
「実は、鏖殺寺院のことを調べていまして、どうも、あの海賊たちと関係があるようなのです。それで、今、わたくしのパートナーが潜入捜査しているところというわけでして。ちょっと行動が怪しく見えたりするかもしれませんが、御勘弁ください。もちろん、何か分かったら、あなた方にもちゃんとお知らせしますわ」
 ペコ・フラワリーだけに聞こえるように、千石朱鷺は告げた。
「それはそれは、忙しいことで。――何か分かりましたらぜひに」
 最初関心がなさそうなペコ・フラワリーであったが、途中からちょっと思いなおしてそう答えた。
 この前の遺跡探索で出会った敵たちの情報であるならば、リーダーのココ・カンパーニュに必要なものなのかもしれない。リーダーはまだ何も語ってはくれないが、仲間のためになることであるならば、積極的に調べる必要がある。ただし、踊らされてばかりでは面白くない。
 ニッコリと微笑むペコ・フラワリーに、うまく信用してもらえたと内心ほくそ笑んだ千石朱鷺ではあったが、その微笑みの中に隠されている注意深い警戒心には気づくことはなかった。
「それで、ゴチメイさんのパートナーはどうするのよ。ええと、マサラさんだっけ?」
 話を元に戻すように、ズィーベン・ズューデンがペコ・フラワリーに訊ねた。
「ええ、マサラ・アッサムと申します。今ごろ、私の目の届かないところではめを外してなければいいのですけれど」
 軽く溜め息をついて、ペコ・フラワリーは言った。
「なんで、彼女とパートナーになったの?」
「それは地球で。私にも、パートナーの輝きが見えましたから。しつこくまとわりつく不思議な輝きが彼女の物だと分かったときに、私たちはパートナーになったんですよ。まあ、性格はまったくの反対なのですけれどもね」
 自由奔放なマサラ・アッサムのことを思って、思わずペコ・フラワリーは苦笑した。
 トラブルメーカーのマサラ・アッサムの面倒をみすぎた結果が、彼女にまとわりついてきた不良をちょっと叩きのめしすぎたという理由でのパラ実送りだ。もっとも、ペコ・フラワリーの場合、手加減という言葉も容赦という言葉も知らないので、相手の命があっただけでも奇蹟と言えるのだが。これでも、ココ・カンパーニュたちと一緒になってからはずいぶん丸くなった方なのだ。
「とりあえず、エントランスに移動しましょう。他の人たちの所にも捜索隊が出むいているはずですから、じきに集まってくるでしょう」
 いつまでもここにいてもしょうがないと、ナナ・ノルデンが切り出した。
「私の箒がまだ一人乗れますからどうぞ」
 鷹野栗の勧めで、ペコ・フラワリーは彼女の箒に乗ることにした。さすがに、ベルナデット・アンティーククールの箒に乗る選択肢はなかったらしい。
「では、下に参りまーす!」
 元気なズィーベン・ズューデンの声とともに、一同はエントランスをめざした。