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君を待ってる~剣を掲げて~(第3回/全3回)

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君を待ってる~剣を掲げて~(第3回/全3回)

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第5章 重ねた思い出
「大切な人を守るために、誰も悲しませないために……!」
神野 永太(じんの・えいた)がフィールドの端に移動している燦式鎮護機 ザイエンデ(さんしきちんごき・ざいえんで)の周囲に氷術を放ち、床を凍らせていた。
ザインに攻撃がおよばぬよう、守る為に。
 風天が舞い、恭司やアシャンテや朔が戦う。
 おぼろげに霞む、剣の大会の光景。
 ゆらゆらと、ゆらゆらと。
「このまま封印が解けたらマズいですよね」
 本郷翔や静麻、涼が花壇で虫退治に勤しんでいる。
「折角育った花が食べられちゃうなんてそんなの嫌っ!!」
 理沙が必死の面持ちで叫び。
「そんなことしたらウサちゃんが可哀想じゃない!!」
 必殺キックと共に空より舞い降りる美羽。

「これって、影龍の記憶……?」
「あなたが見てきた、世界なのですか」
 郁乃と翡翠に応えるように、映像が切り替わる。
 それは始まりの、記憶。

「にゃにゃにゃ、危ないにゃヒナ、ここはよくないのにゃ!」
「うん、でもね……誰かの声が聞こえる気がするの」
 始まりの少女はそう言って、我の声なき声を拾い上げた。
 それは或いは、この身に宿る魔剣の、封印の巫女の、仕業だったかもしれないが。
 それでもその瞬間、闇一色だった世界に色が生まれ。
 ココロが芽吹いた。

 そして、影龍のココロは生まれた。
 影使いの甘言に翻弄されながら、無意識に求めていたもの。
『……れか……居……あた……声……聞こ……』
 ココロの声を最初に聞いてくれたのは、同じ名前の少女達だった。
「うん、分かった! また明日も来る、来るから!」
 それがどんなに嬉しかったか、アリアはきっと知らない。

「私はコトノハ、こっちはルオシン……怖がらないで、あなたと友達になりに来たの」
初めて会話を交わしたのは、ママとパパ。
 恥ずかしくて、口に出した事は無かったけれど。
 ずっとずっとね、最初から大好きだったよ。

 それから。
 誠治や勇やアリシアや沙幸や輝樹や、皆でお茶会をしたよね。
 あれが初めての「楽しい」気持ちだった。
 あの時のあたし……ココロはその言葉を知らなかったけど。
 真人は「学校」の事を教えてくれて、壮太は「また会おう」って約束をくれて。
 それから政敏。
 政敏は「名前」をくれたね。
 あのね、政敏が名前をくれたから、あたしはあたしになったんだよ。
 影龍のココロは、『夜魅』になったんだ。

「ジュジュ?」
「うん。ずっと側にいたよ」
 ジュジュが迎えてくれて。
「みんな、信じてたぜ!」
 にゃん丸達が影龍とあたしを切り離してくれたから、あたしは……ココロは消えずに済んだ。
 コトノハが契約してくれて。
「私が夜魅ちゃんと友達になりたいんだよ」
 朱里や美羽と友達になって。

 リネンや陣や巽やカガチ達と雪遊びして。
 クルードが作った雪像とすごくカッコよくて。
 大地は肩車してくれて。

「夜魅が、影龍だったのね」
 抱きしめながら、コトノハは呟いた。
 白花が魔剣が封印剣が、願いと共に影龍に託した種。
 それは雛子と出会う事で芽吹き。
 コトノハやジュジュや壮太や翡翠や美羽や……たくさんの人と出会う事で、育って行った。
 だから。
「……ありがとう、ママ、パパ、みんな」
 そっと目を開き、夜魅は微笑んだ。
「あたしを育ててくれて。あたしを救い上げてくれて」
 ココロ……心は目覚め。
 同時に。
闇の中、淡い光をまとい、影龍がその形が、浮かび上がった。
 だがしかし、反発するように闇が……本来の意味で影龍と呼べる闇が、蠢き出す。
「させない!、影龍も夜魅ちゃんも、守るから!」
「強すぎる衝動は自身を、全てを滅ぼす。だから影龍は浄化を、世界に還る事を望んでいる……なら、私はそれを助けるわ」
 朱里がリネンが、影龍を……否、夜魅を通して心を得た蒼天を、守るべく身構えた。