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イルミンスールの大冒険~ニーズヘッグ襲撃~(第1回/全3回)

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イルミンスールの大冒険~ニーズヘッグ襲撃~(第1回/全3回)

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「……ふむ。君の話は理解した。イルミンスールの危機とあれば、私等も協力しよう」
 『精霊指定都市イナテミス』中心部、町長室ではカラムと五精霊、そしてイナテミスに援軍要請を行うために訪れたアキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)の姿があった。
「だけどさ、今回のってえっと何だっけ、コールド熱湯?」
「コーラルネットワーク、ですわ。カヤノ、全く合ってない上に意味が分かりませんわ」
 カヤノ・アシュリング(かやの・あしゅりんぐ)の回答に、セイラン・サイフィード(せいらん・さいふぃーど)が容赦無いツッコミを入れる。
「うっさいわね、一言多いわよ! ……そう、そのコーラルネットワークって、ここにないんでしょ? どうやってあたいたちが手を出すわけ?」
「ふむ、確かアーデルハイトには、『いんたぁねっと』のようなものじゃ、と言われた記憶があるな。……そう言われた所で、何を指しているのか俺にはいまいちピンと来ないわけだが」
 ケイオース・サイフィード(けいおーす・さいふぃーど)の発言にあるように、コーラルネットワークは言わば、世界樹専用チャットのようなものである。回線のことを『根』と呼んでいるのは慣習であったが、生徒たちの一部にはコーラルネットワークを実際の根が繋がって出来たものと捉えたようである。
「えっと、よく分かんないんだけど……じゃあ、イナテミスからは何も出せないってこと?」
「……簡単に言えばそうなってしまうな。私たちとしても助けに行きたい所だが、コーラルネットワークがどういうものか分からない以上、手の貸しようがないのだ」
「済みません……ですが、こちらでも状況の把握に務めます。事態が変わって、私たちとイルミンスールが共に力を合わせる必要が生じた場合には、お応えしますので」
 サラ・ヴォルテール(さら・う゛ぉるてーる)セリシア・ウインドリィ(せりしあ・ういんどりぃ)の申し訳なさそうな表情に見送られて、アキラとルシェイメアが町長室を後にする。「当てが外れてしもうたの。さて、これからどうするのじゃ?」
「どうするって、ひとまずイルミンスールに戻って――」
「えっと、アキラさん?」
 これからどうするかを話し合っていた所へ、アキラが声をかけられ振り向くと、そこにはうっすらと羽を浮かばせた少女がいた。
「……? えっと、誰だっけ?」
「あっ、ごめんなさい。私、『ナイフィードの闇黒の精霊』ヨンです。アキラさんには、私が道に迷った時に案内してくれました」
 ヨンに説明されて、ああ、とアキラが思い出したように頷く。
「ああ、あんときの……今日はどした? また迷子になってるのか?」
「ふふ、そうそう迷子にはなりませんよ。私、案内してくれたお礼をまだアキラさんにしていませんでしたから。もしよければこれからお時間を頂ければと思いまして」
「そっか……でも悪ぃ、今忙しくて――」

 アキラが申し訳なさそうな表情をした、その直後。
 凄まじい轟音と衝撃波が、街を襲った――。
 
 
「……うぅ〜ん」
 鼻をつく異臭に、顔を歪めてるるが目を覚ます。辺りを見回すと、同じように顔をしかめた終夏と未憂、それぞれのパートナーの姿もあった。
「えっと……私たち、ニーズヘッグに会いに行って……話をしようとした所で凄い地震が起きて……」
「気を失っちゃったんですよね……。えっと、ここはどこでしょう?」

「ふぅ〜ん、なるほど。そういうことだったんだ。
 いやいや、ニーズヘッグに話をしようと思うなんて、キミたち変わってるね」

 突如かけられた声に、一行が振り向く。そこには出っ歯の栗鼠が、一行を面白がるような目つきで佇んでいた。
「気分はどうだい?」
 そう声をかけられて、一行は自分たちを包んでいたと思しき黒い鱗のようなものに気付く。
「キミたちはニーズヘッグの口から出てきたんだよ。あのニーズヘッグがこんな配慮するなんて、どうしちゃったんだろうね?」
 栗鼠の言葉と、鱗が半分溶けかかっていることから、一行はこの鱗に包まれてニーズヘッグに飲み込まれ、吐き出されたのだと察する。
「あの……済みません、ここはどこでしょう?」
「どこって、キミたちが来たがっていた場所だよ。あれ、それとももしかして、来るつもりなかったけど巻き込まれちゃったってヤツ? うわー、それは災難だねー。何が起こるかわからないよねー」
 未憂の問いに、どこかからかうように言葉を響かせる栗鼠の言葉に、いち早く気付いたるるが声をあげる。
「もしかして、ラタトスクさん? それに、ここがユグドラシル?」
「そう! まあ、ユグドラシルへようこそ、と行っておくべきなのかな。別に何かあるわけじゃないけどね」

 ラタトスクがそう言葉を響かせた、その直後。
 凄まじい轟音が、一行の耳に届く。

「な、何?」
 慌てる一行へ、ラタトスクが事も無げに言い放つ。
「ああ、始まったんだね。……ま、実際に見てみるのがいいと思うよ。……終末の始まりをね」
 ラタトスクに言われて、一行は音のした方角へ視線を向ける。
 
 そこには、遥か地平線の先まで続く、一本の筋が大地に刻まれていた。

「終末の始まりって……どういうことですか?」
「あの道は、イルミンスールまで続いている。あの道を辿って、ニーズヘッグがイルミンスールに向かおうとしているんだ。死すら食らい、死をその身に背負う彼がね」
 意味ありげな言葉をラタトスクが漏らした矢先、出来た道を黒い物体がゆっくりと進んでいくのが見えた。
「彼もいきなりのことだからね。今は蛹と言ったところかな? おそらく向こうに着く頃には、本来の姿……死者を連れて飛翔する黒き竜になって、イルミンスールを喰らい尽くすだろうね」
「そ、そんな!」
 事の次第に気付いた一行がイルミンスールに連絡を取ろうとするが、携帯は一向に繋がらない。
「国が違うから、連絡は難しいんじゃないかな? それに、キミたちがここにいることがエリュシオンの方に知れたら、どうなるかな? ボクには予想もつかないけどね」
 ククク、と笑うラタトスクが、まさに他人事と言わんばかりに言葉を響かせる。
「ま、せっかく来たんだし、天辺まで行ってみるのもいいかもね。フレースヴェルグは厳つい顔してるくせに案外お人好しだから、キミたちに力を貸してくれるかもね。さ、どうする?」
 言うだけ言って、ラタトスクが一行に行動の選択を迫る――。
 
 
「大ババ様。今回の様な騒動が再び起こらない様に、イルミンスールそのもの……ひいてはミーミルさんを成長させる必要があると思います。可能ならヴィオラさんやネラさんにも力を貸して貰えればより良いですが……大ババ様はどうお思いですか?」
「そりゃそうじゃが、こうすればよい、とは私も知らんぞ。聖少女事件の時同様、エリザベートとミーミルの問題じゃろうよ。……じゃが、ミーミルはまだ――」
 ザカコの言葉にアーデルハイトが答えていた矢先、扉が開いて、室内にミーミルとソアが入ってくる。
「……私はもう大丈夫です。アーデルハイトさん、お母さんを助けに行かせて下さい」
 はっきりとした口調で言うミーミルの身体は、アメイアに攻撃を受ける前と同じ状態にまで回復していた。むしろ、三対の羽がほのかに燐光している様は、以前より力が上がっているようにも見受けられた。
「あの、私がミーミルの治療をしている所に、ヴィオラさんとネラさんが来たんです。私たちが出来ることはこれだと言って、ミーミルに自ら持っていた力を――」
 ミーミルが回復した理由を、ソアが言葉に詰まりながら告げる。聖少女として回復しかけていた力を、今一度ミーミルに託したヴィオラとネラは、今はミーミルが寝ていたベッドに二人仲良く眠っていた。
「……そうか。分かった、二人のことは私に任せよ。あやつらも今は家族同然なのじゃからな。……その代わり、折り入って頼みがある」
 アーデルハイトが改まって、ソアと、生徒たちに頼むように口を開く。
「ミーミルを守り、エリザベートへ会わせてやってくれ。『親子』が離れ離れなのは、辛いからの」
「……はい!!」
 滲ませていた涙を拭って、ソアが告げる。一方ミーミルへはミニスが歩み寄り、自ら直したエリザベートの人形を渡す。
「これ、ミーミルのだよね? 直しておいたから、今度は無くさないようにしなさいよねっ」
「ありがとうございます……! はい、二度と無くしません、絶対に」
 嬉しさに涙を浮かばせて、ミーミルが受け取った人形を仕舞う。
「さて、私も急いで対策を講じねばの――」

 アーデルハイトがそう告げた直後。
 凄まじい轟音と衝撃波が、一行を襲った――。
 

担当マスターより

▼担当マスター

猫宮烈

▼マスターコメント

猫宮・烈です。

『イルミンスールの大冒険〜ニーズヘッグ襲撃〜 第1回』、いかがでしたでしょうか。
猫宮さんがようじょを出さない時の容赦なさ振りが垣間見えたと思います。
(バッサリ、というわではなく、ちゃんと次に続くようにしたつもりではありますが)

(PC視点で見て)行方不明になったPC、アメイアを追って地下に行ったPCは、次回アクションを掛ける際は予め決められた状況からとなります。
どういう状況かは次回のシナリオガイドで明記します。本文中に登場機会もあると思います、ご了承下さい。

全体的に厳しい判定をしたつもりではありますが、逆に緩くした判定もあります。
『籠手型HC』と『銃型HC』は、『仲間と情報の共有をする』という目的に対しては両方共使え、その上で探索サポートプログラムと戦闘サポートプログラムで区別化する、といったように、「これくらいは使えるだろう」と幅を持たせてあります。
アーデルハイトの予備の身体についてもそうですが、ただこれらはあくまで自分の独自解釈なので、注意してくださいね。

反省点としては、コーラルネットワーク内の世界は現実の世界でない(インターネット世界のようなものですね)というのをはっきり明記しなかったことでしょうか。
『根』と書いているのは、コーラルネットワークでは回線のことをそう表現しているという意味でした。
なので、次回の舞台の一つにイルミンスールの根がありますが、同じ場所ではないですよ。
こっちはちゃんとした現実の世界です。

後はリアクション中、個別コメント等でフォローしていると思います。
……どこかに穴がありそうな気がすると常に思ってしまうのは、まあ、性分です。

15ページ目から先が、ころころ場面が変わってしまう都合になってしまい、見辛くて申し訳ございません。
読み易い文章を心がけたいと思います。

それでは、第2回をお楽しみに。
例の掲示板企画等の影響がどうなるか、といった所でしょうかね。