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聖戦のオラトリオ ~覚醒~(第1回/全3回)

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聖戦のオラトリオ ~覚醒~(第1回/全3回)

リアクション


(・チャーリー)


『こちらチャーリー1。チャーリー小隊も、全機戦闘態勢移行完了。作戦行動に移るよ』
チャーリー1――【クリムゾン】の 葉月 エリィ(はづき・えりぃ)エレナ・フェンリル(えれな・ふぇんりる)は、戦闘移行の旨を連絡した。
『こちらチャーリー5。葉月さん、秋穂ちゃん、打ち合わせ通りにお願いね』
 チャーリー5――【ユルグ】の相沢 理恵(あいざわ・りえ)がコームラント二機に対して確認をとる。
『チャーリー2、了解だよー』
 チャーリー2――【シトリン】のユメミ・ブラッドストーン(ゆめみ・ぶらっどすとーん)が返答する。端守 秋穂(はなもり・あいお)は攻撃担当として操縦に専念しているようだ。
『チャーリー1、了解』
 エリィも答える。
 あとは、敵機に対して行動するだけだ。
「それじゃ、敵を誘導しないとね」
 【クリムゾン】がビームキャノンを構え、こちらに向かう敵小隊の一つに向けて放つ。
「誘導とはいえ、無駄にはしたくありません――当ててみせます!」
 時間差で、【シトリン】の秋穂もトリガーを引いた。
「行くわよ、狐くん!」
「了解でござる!」
 ビームキャノンによって敵が回避したところに、【ユルグ】が飛んでいく。もちろん彼女一機だけではない。
『こちらチャーリー3。ここからさらに敵を分断しますよ〜』
 チャーリー3――【バンシー】の玉風 やませ(たまかぜ・やませ)が連絡を行う。
 敵が小隊単位でこちらの小隊それぞれに対応しようというのは見て確認している。とはいえ、敵の小隊と正面からぶつかり合うのはまだ早い。
 味方小隊の位置を確認しながら、敵の誘導を行う。
『チャーリー4、チャーリー3、5を援護するよ』
 チャーリー4――【キャスパー】の矢野 佑一(やの・ゆういち)はビームライフルのトリガーを引きながら、最前の【ユルグ】と【バンシー】の援護射撃を行う。
 敵小隊の六機をまずは分散させる。その上で各個撃墜していくというやり方でなければ、敵と互角に戦うのは難しいだろう。
『佑一さん、敵の射程に入るよ』
『了解。上昇してくれ』
 ミシェル・シェーンバーグ(みしぇる・しぇーんばーぐ)が機体を上昇させる。敵機との間合いを維持した上で、ビームライフルを放つ必要がある。
「とりあえず、二機は小隊から離れたね。さあ、いこう」
 チャーリー小隊は敵機を引き離すことに成功した。
「ここを取らせるわけにはいかないからね。全力で叩かせてもらうよ」
 【クリムゾン】がビームキャノンを構える。
 チャージは完了した。まだ敵小隊は他に四機残っているため、出力は少し控えめに設定する。
 シャープシューターで狙いをつけ、一機を確実に狙う。狙いは機関銃の銃口だ。
 トリガーを引く。だが、敵はギリギリのところでかわす。とはいえ、機関銃をわずかにかすめたようだ。
「戦争なんてしたくねぇが、お前らを止めないと沢山の命が失われるからな。全力でいかせてもらうぞ!」
 【バンシー】の東風谷 白虎(こちや・びゃっこ)がビームサーベルを引き抜き、回避行動を取ったシュメッターリングに斬りかかる。
 その斬撃は、敵の機関銃ごと右腕を斬り落した。
(まだ頭部バルカンもあるから、安心は出来ませんよ〜)
(分かっている。確実に撃破するまでだ)
 サーベルを構え直し、続けざまに斬りつける。直撃を食らった敵機は、黒い装甲服の随伴歩兵がうごめく荒野へと落下していった。
(エネルギーチャージ完了したよー)
(では、いきます!)
 【シトリン】の秋穂はもう一機のシュメッターリングに照準を合わせて、ビームキャノンのトリガーを引いた。
(避けられましたか。でも……)
 回避行動を取れば隙が生じる。
 そこに付け込めるのが、前衛にいるイーグリットだ。
「今がチャンスよ、狐くん!」
 【ユルグ】では理恵が機体を敵機に接近させ、フォックス・エイト(ふぉっくす・えいと)がビームサーベルを操作する。
 敵が【シトリン】のビームを避けた瞬間、【ユルグ】は急接近し間合いを詰め、ビームサーベルで両断する。
「よし、撃墜完了!」
 これで敵小隊六機のうちの二機を倒した。
 だが、本当の勝負はここからだ。
『チャーリー3から各機へ。敵指揮官機が動きました〜』
 残りの四機には指揮官がいる。確実に倒すためには、今やったように連携を崩し、もう一度敵機を分断するほかない。
 敵の編隊は、前衛にシュメッターリング三機、後衛に指揮官が一機だ。前衛に飛び込ませて、指揮官がそれをカバーするように動くのだろう。
 前衛の三機が、学院のイーグリット三機に向かって加速してきた。
(音? いえ、これは――)
 超感覚によって強化された聴覚によって、外の音を聞くやませ。すぐに前衛イーグリットに連絡を行う。
『チャーリー3からチャーリー4、5へ。そのまま出力最大で上昇して下さい〜!』
 また、【バンシー】即座に対応する。
 次の瞬間、イーグリット三機を捉えられる位置に、敵指揮官のシュバルツ・フリーゲが出現した。
 三機を加速させ注意を向けさせた瞬間に自機は地面スレスレまで急下降し、そこから急襲しようとしたのだ。
 やませが気付いていなければイーグリット三機は撃墜されていた可能性もある。
 だがそれよりも、後衛のコームラントにさえ気付かせずに移動したことも考えれば、こちらの死角を完全に把握していたということだろう。
 レーダーにう映らなかったのは、三機のうちどれかの真下にいたため、重複して見えなくなっていたのである。レーダーは三次元的に表示されないのがネックなのだ。
 やはり、部隊を指揮する者は別格なのか、避けた思った三機にシュメッターリングが接近していた。
「僕達が避けることまで想定していたみたいだね。だけど、この距離なら――」
 敵の機関銃が火を吹く前に、シャープシューターでその中の一機を狙う佑一。その光の行く先は、敵の銃口だ。
 さらに、頭部バルカンでの牽制を行い、三機連携で敵機から離脱しようとする。
「これ、ちょっとヤバイかも……」
 一機の機関銃を破壊するものの、その場から動こうものなら今度は指揮官機に捕捉される。
(秋穂ちゃん、まずは今ならあの三機を同時に狙えるかもー)
(うん、やってみる!)
『チャーリー2から、チャーリー3、4、5へ。敵機に向けてビームキャノンを放ちます』
 巻き込まれないよう、連絡した上で砲口を敵に向ける。
 すると、敵指揮官機が気付いたせいか、【シトリン】狙いで動く。
「やらせないよ!」
 【クリムゾン】が指揮官機に対して実弾式機関銃で応戦する。直後、距離を取り、ビームキャノンに切り換える。
 【シトリン】の砲撃が、三機のシュメッターリングに向かっていく。敵機はそれに気付き、離脱した。
「エレナ、サンキュー。逃がさないよ!」
 【シトリン】が放つ前に、【クリムゾン】のエレナが機体を移動させ、彼女とは別方向からビームキャノンを放つ。
 三機が避けようとしたまさにその場所への砲撃であり、三機のうちの二機はそれに巻き込まれて、大破した。
『ありがとう、ちょっと危なかったよ』
 【ユルグ】から通信が入る。だが、まだ二機残っている。しかも、厄介なのが一機。
「目の前の一機はこのままイーグリット三機でいけるかもしれんが、向こうの機体は手強そうでござる」
 無論、敵の指揮官は残ったシュメッターリングを援護しに来る――のではなかった。
(敵の狙いはこちらですか!)
 【シトリン】に向かってくる指揮官機。シュメッターリングは見捨て、厄介な支援機を潰すつもりのようだ。
 だが、こちらにも機関銃がある。
「狙います」
 機関銃対機関銃。だが、練度は向こうの方が上だ。
「やらせないって、さっきも言っただろ!」
 【クリムゾン】がシュバルツ・フリーゲに向かって機関銃を放つ。だが、その弾幕すらも予測されていたように、かわされる。
 だが、敵の攻撃が当たっても、コームラントだ。多少ならば耐えられる。
(被弾、損傷率15%ー)
 コームラント二機が戦っているとき、上空ではイーグリットによって残りのシュメッターリングが撃墜された。
「あとは一機。五対一ならなんとかなりそうだね」
「だけど、あの機体は他とは別格だよ。気をつけないと」
 三機はそれぞれ距離を取り、指揮官機を囲む。
『チャーリー1からイーグリット各機へ。こちらでなんとか隙を作るから、それまではビームライフルで援護してくれ』
 さすがに指揮官とはいえ、五機相手に立ち回るのは難しいだろう。
「……秋穂ちゃん、大丈夫?」
「僕は大丈夫。ユメミは……?」
「ん、大丈夫だよー」
 そこから精神感応に戻す。
(まだ戦えるから、みんなと連携しよー。残りのエネルギーもそう多くないから、確実にね)
(うん。強いけど、頑張らないとね)
 敵指揮官機は急上昇した。
(機動力なら、こちらの方が上です〜!)
 【バンシー】が追撃しながらビームライフルを放つ。もちろん、敵も機関銃で反撃してくる。
 だが、回避性能ではイーグリットが勝り、牽制しながら射程距離を保つ。
「これ以上、好きにはさせないよ!」
 同時に、【ユルグ】もビームライフルを放ちながら接近を試みる。
「相沢殿、これ以上飛び込むと危険でござる。こちらの方が数では上、隙を作るまでは援護に徹するでござるよ」
 熱くなりかけていた理恵を落ち着かせるフォックス。
「とにかく、敵の動きを少しでも制限しないとね」
【キャスパー】もまた、二機の射程をカバーするように、ビームライフルを撃つ。
 それでも、敵機は機関銃でビームを相殺し、上下移動だけで巧みに攻撃をかわしていく。
「チャージ完了。フルパワーの一発を食らいな!」
 慎重に照準を合わせていた【クリムゾン】がフル出力でビームキャノンを放つ。
「今度こそ、当てます!」
 続いて、【シトリン】が敵の回避を予測してビームキャノンで砲撃する。
 敵機はどこに避けようとも、五機のいずれかの攻撃は食らう。そのくらいまで追い詰められていた。
 ドン、という音が機体に乗っていても聞こえる。【シトリン】のビームが命中したのだ。
 だが、それでもまだ終わっていなかった。
「まだ動きますか……っ!」
 攻撃が避けきれないと踏んだ指揮官機は、機関銃を持たない左腕を盾にして、ビーム攻撃による致命傷を防いだのだ。
 フリーゲの左腕は消滅し、さらにはビームライフルによって右足の関節部が破壊されていた。
 それでもなお、敵機はまだ機関銃の銃口を向けてくる。バランスが悪いはずのその機体で、イーグリットのビームライフルをかわしながら。
「これで、終わりだよ」
 【キャスパー】がビームサーベルで斬りかかろうとする。しかし、敵の銃口は彼の接近を予測していたかのように機体の方を向いていた。
 ビームサーベルを持った右腕が機関銃に吹き飛ばされる。
 直後、今度は【バンシー】が斬りかかる。その斬撃は、今度こそ残った機関銃をも斬り落した。
 しかし、その直後敵は一機に後退し、そのまま逃亡した。
「逃げますか」
『私達のやることは、あくまでもプラントを守ることだ。それにあの機体じゃもう戦えないよ。追う必要はない』
 敵機は武器を失い、そのまま東シャンバラの空へと消えていく。