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リアクション
(・十人評議会)
某国某所。
そこは会議室であった。席の数は十、そこに座している者の一人が口を開く。
「現在、アフリカ、中東を中心にサロゲート・エイコーンの製造プラントが設けてある。だが、所詮はまがい物だ。パラミタ上に存在しているだろう、オリジナルプラントに比べたら、ただの劣化コピーを量産するだけの代物でしかない」
しかも、まともに稼動しているオリジナルプラントを、今の組織は所有していない。地球上で発掘されたシュバルツ・フリーゲ・オリジナルの中に残されていたデータを元に、再現したに過ぎないのだ。
そして、その機体を駆る者こそが――
「カミロ。だからこそ、少数ながらもオリジナルに近い性能を持った機体を所持している、君達の実働部隊は貴重な戦力だ」
カミロ・ベックマンである。実働部隊と男が呼んでいるものこそ、カミロが総司令官を務めるイコン部隊だ。
「他の反シャンバラ派のイコンがどう動こうと、我々には関係がない。いざ評議会にとって不都合な動きをしたならば、排除すればいいだけの話だ」
「だが、私達は違う。評議会と帝国の意思決定の元動く以上、独断は許されない。そうでしたね」
カミロはそのことを承知していた。
もはや鏖殺寺院地球支部という、東西シャンバラ建国前の体制ではない。鏖殺寺院の看板を用いるのはエリュシオン帝国と協力するために、従順なフリをするためだ。各国を裏で支配するエリート契約者である彼らにとって、それは敗北者を示す汚名でしかない。
地球で積極的に鏖殺寺院を名乗り、テロ活動を行っている組織や国家は、いずれ彼らのスケープゴートとなるためだけに存在しているのである。もっとも、そのことを「鏖殺寺院」を名乗る者達は知らないが。
「ミスター・テンジュ、映像を」
ミスター・テンジュと呼ばれた人物が、映像を卓上に投影する。彼自身もこの場に来れないのか、立体映像で参加しているのだが、現地から送信しているらしい。
『これは、つい先程の映像だよ。東シャンバラ基地からオリジナルプラント捜索にウェスト博士の新型強化人間を送り込んでいたのは僕も知ってる。見ての通り、イコンの交戦まで行われてるよ』
「総督が出撃させたか……だが、私がシャンバラに残っていたとしても、同じように出撃させていたはずです」
プラントに人を近付けさせないためには、イコンを出動させるのは必然のように感じた。
「だが、見ての通り、我々はオリジナルプラントの確保には失敗した」
『まあ、それで確保出来なければそのときは大人しく引けばいいだけだからね。オリジナルプラントをちゃんとこちらが手に入れられればそれでいいんだけど、無理をする必要はない』
「どういうことですか?」
こちらの戦力もある程度割り出され、しかも各地域に配備してあるイコンはかなりの打撃を受けている。それにしては、評議会のメンバーは余裕だ。
『結果に大差はないからだよ。天御柱学院がプラントを確保していようともね。そうそう、このまま学院のイコンが整備されていったらどうなると思う? それで、テロリスト「鏖殺寺院」を殲滅しようとイコンで大規模な戦闘行い、パラミタの大地を荒らしたら?』
カミロはミスター・テンジュの思惑に気付いた。
「そうなったとき、反シャンバラ派と帝国をたきつければいい。我々はもはや鏖殺寺院ではない。地球の『鏖殺寺院』の看板を持つ組織を全て排除し、堂々と今のパラミタを支配している地球人どもに『お前達は間違っている』と言ってやろう。悪と正義が逆転する瞬間を見せてやろうでじゃないか」
自分達が正当な理由をもってパラミタへ進出し、あくまで「パラミタ人」の意思で現在の勢力を振り落とすのが彼らの狙いだ。
「カミロ、君を呼んだのは、この『十人評議会』に加わってもらうためだ。これまでは我々の決定に沿って動いてもらっていたが、パラミタを実際に見てきた君の考えが必要となってきている。そこに、ちょうど席が一つ空いていたわけだ」
これを承諾すれば、カミロはトップの一人に名を連ねることになる。もっとも、彼に拒否する理由も存在しないのだが。
「承知しました」
『カミロ君、そんなに恐縮しなくてもいいよ。僕らと同列なんだからさ。もっとも、オリジナルのシュバルツ・フリーゲを唯一乗りこなせているわけだし、何より生身での戦闘もクロウリー卿やミス・アンブレラにも引けを取らないと聞いてるけどね』
現在の組織において、カミロの戦闘力はトップクラスだ。そのことは評議会メンバーも承知している。
「あら天住さん、少々心外ですわ。それではわたくしがそこの魔術師と同じみたいに聞こえますわよ」
『おっと、これは失礼。二人では強さのベクトルも違ってたよね』
「ミスター・テンジュ、ミス・アンブレラ。話を戻すぞ」
「ごめんよ、エドワード」
エドワード、と呼ばれた男がこの評議会を主導しているようだ。
「……ここからは、各国の状況について確認する。クロウリー卿、EMUはどうなっている?」
クロウリー卿と呼ばれた人物も、ミスター・テンジュ同様この場にはいない。
『ミスティルティン騎士団、及びワルプルギス派の権威は失墜している。反シャンバラ派は半数を超え、このままいけばEMUは確実に掌握出来るだろう』
「ミスター・テンジュ、日本政府は?」
『御神楽環菜の死後、これまで彼女に押さえつけられていた政府は真っ二つに分かれたよ。彼女の遺志を継いで、これまで通りにパラミタ政策を進めるという保守派と、これまでのパラミタ政策を全面的に見直す必要があると考える改革派にね。今のところ、改革派が優位かな』
「……御神楽環菜。彼女を殺した犯人は未だ特定されていないのか?」
彼女を殺したのはおそらく鏖殺寺院だろうとは言われている。だが、彼らがやったわけではない。
『されてないよ。彼女がある程度経済を管理していたからこそ、自然に流れてくる金もあったのに』
「もしかしたら、そのことに気付いた者がいたのかもしれないな。だからこそ、彼女の関係者が手を打った――暗殺という手段を使って」
可能性として有り得ないわけではない。
「ローゼンクロイツ。そういえば、総帥は何か知らないのか?」
ローゼンクロイツと呼ばれた人物が答える。
「総帥はエリュシオンのアスコルド大帝とのやり取りを行う以外、自らは動くことはありません。大帝の言葉は伝えるが、その他の全ては評議会に任せると。現に、私がこの場に代理で来ているくらいですから」
「ふむ、総帥がやったわけでもない。今は気にする問題ではないか」
一旦話題を切り、各人の現状報告に戻る。順調に、世界各国の反シャンバラ派は拡大しているようだった。
* * *
「カミロ様、会議はいかがでしたか?」
「私も上の一員として加わることになった。それに、地上での活動は順調に進んでいるようだ」
パートナーの
ルイーゼ・クレメントと合流し、会議室をあとにする。会議に参加しているのは地球人のみで、パートナーは外で待機させられるのだ。
「おめでとうございます。これでようやく……」
そのとき、カミロの携帯電話が鳴った。
『やあ、カミロ君』
『ミスター・テンジュ!?』
なぜカミロの番号を知っているのかは分からない。組織のトップの一人だから、把握しているということだろうか。
『あんまりその呼ばれ方好きじゃないんだけどね。一応、天住(あまずみ)ってここでは名乗ってるんだけど。やっぱりTENJYUとした方が発音しやすいのかな? っと、そんなのはどうでもいいか』
ミスター・テンジュこと天住は用件だけをカミロの伝えた。
『東シャンバラ基地、天御柱学院に特定されたよ。それで、三日後に学院が総攻撃を仕掛けるってさ。早く戻った方がいいよ。それじゃ』
どうやって情報を収集したのかは知らない。だがプラント確保に失敗し、イコン部隊が疲弊している今攻められるのは、いくらこちらが戦力的に勝っていても厳しいものがある。
「ルイーゼ、基地に戻るぞ」
「はい、カミロ様」
(第八曲へ続く)
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担当マスターより
▼担当マスター
識上 蒼
▼マスターコメント
識上です。大変お待たせ致しました。
一回目から、壮絶な展開です。ただ、少々いろいろ盛り込みすぎたため、読みにくい場面が多いかもしれません。
なお、このキャンペーンはイコンがメインになっているシリーズですが、軍事色は弱め、というよりほとんどありません。
正直、そういう戦略だとかミリタリー要素を期待していた方にとってはあまり満足出来ない内容かと思います。今後も軍事色はほとんど出さない(むしろ、私の力量的に出せない)ので、こんな雰囲気になると思います。
「王道ロボットバトルもの」をイメージして書いていこうと思っておりますので、戦略や技術理論だったり、武器だったり、「ちょっと待て!」というようなな突っ込み所満載かもしれませんが、まあ蒼空のフロンティアはあくまでファンタジー世界のRPGなのでご了承下さい。
はい、次はアクションについてです。
小隊を組んでいた方は、なかなかよく連携出来ていたと思います。敵はかなりの実力ですが、なんとか接戦、小隊によってはかなりの戦果を挙げられていました。
ただ、一部の方で、製造プラントの中で戦うようなアクションが見受けられました。
「地下の二層構造」としか書かなかったのがいけないのかもしれませんが、イコンは地上、生身は地下という括りです。
また、精神感応でテレパシーを行えるのは、パートナー間のみです。他のキャラが精神感応持ちの場合、気付くことがあるという程度です。ただ、天御柱学院の生徒は訓練を積んでいるので、「近くにいればほぼ気付く」くらいになってます。また、同じスキルを持つ敵とも共鳴してしまうことがあるという、難点もあります。
あとは、イコン内で使えるスキルでしょうか。
ミラージュで自機の幻影を見せる、サイコキネシスで弾を曲げるというのが数名いらっしゃいましたが、これは出来ません。
一応、マスターシナリオ講座にもありますが、機体内で使えるのは自分に関わるスキルのみです。(精神感応、博識、超感覚、女王の加護など。また、シャープシューターは射撃技術なので、許容範囲内です)
大体、このくらいでしょうか。
まだまだ設定についてもデリケートな部分があるのでアクションが大変かもしれませんが、出来る限り対応していく所存ですので、宜しくお願い致します。
また、イコンの追加武装は次回シナリオで発表致します。
また、次回ガイド以降、イコンやシナリオについては補足説明がガイド公開後も出てくることが予測されるので、追加情報がある場合は「アクション締め切り2日前」までにマスターページに更新していく予定です。更新がない場合は、まあガイドで情報を出し切ってますよ、ということで。
なお、次回はほとんどすぐで申し訳ありませんが、11月3日(水)です。
まだまだ激動の天学キャンペーン。次回もまたお会い出来る事を祈りつつ、この辺で失礼致します。
11月9日(火) 誤字、一部表記ミスについてご指摘いただいた箇所を修正致しました。