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聖戦のオラトリオ ~覚醒~(第2回/全3回)

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聖戦のオラトリオ ~覚醒~(第2回/全3回)

リアクション


(・英国紳士と傘婦人)


「随分と派手にやられたようだな、ヴィクター」
 二人の人物が会話をしている。
 一人は、派手な柄のワイシャツにジーンズ、その格好の上に白衣を纏った男。
 もう一人は、山高帽を被り、ステッキを手にしたスーツの青年だ。その格好はイギリス紳士の典型のように見える。
「クク、所詮地上の建物などガラクタダ。全ての研究はここにあル」
 場所は、壊滅したとされたベトナム基地の地下深く。
 地上に見えている施設はダミーで、ここが本当の基地だった。
「だが、地上にはフリーゲとシュメッター、それに例の機体もあったはずだ。それに、さっきまで随分と悔しそうな顔をしていたではないか」
「例の機体モ、君の専用機と一緒に地下へと移してあル。それに、新世代のイコンの開発にも着手しタ。紛い物のフリーゲやシュメッターなド、旧世代のガラクタになる日も近イ。クク、さすがに女にコケにされれバ、苛立ちもするサ」
 二人は話しながら、奥へと進んでいる。
 その後ろには、紳士然とした男のパートナーと思しき三人の人影がある。
「しかし、ここ最近はどうにも評議会のメンバーの独断専行が多い」
「元々、統一性があるわケでもないだろう二」
「ローゼンクロイツが適任者を推薦してきた。席が空けば、すぐにでも就いてもらいたいくらいだ。死亡か、自主的に脱退しなければ止められないという制約は、少々厄介だ」
「誰だイ、その人物ハ?」
「メニエス・レイン。旧寺院ではかなり名の通った人物だ」
 問題は、席を与えられている人物にも不適格者がいることにある。
「イアンは寺院を使って東シャンバラと手を結んだ。時期尚早だ。間違ってでも、シャンバラ三柱の最後の一柱に手を出さなければいいが」
「検討はついてるのカ?」
「大体はな。ドージェ・カイラスは『武』を、御神楽環菜は『富』、あるいは『財』を司った。最後の一柱は、おそらく『徳』。人徳のある、民に慕われ崇められる者だ。手を出せば、大多数の民衆を敵に回すことになるだろう」
 冷静に今のシャンバラ事情を分析しているようだ。
「……彼女の様子はどうだ?」
「こっちダ」
 次に男達が見たのは、培養液に入った青い髪の女性だ。
「力を使い過ぎたからナ。まだ調整が必要デ、完成には時間がかかりそうダ」
「08号。おそらく、彼女こそが我々の切り札となるだろう」
 眠る少女を眺め、さらに進む。
「ほう、これが」
「議長の機体ダ。ちゃんト、四人乗りで設計してあル。だが、こんなもの本当に使いこなせるのカ?」
「起動だけさせてもらっていいか?」
「どうゾ」
「アイザック、ヨハネス、ガリレオ、テストを始めよう」
 三人のパートナーと共に、起動してみる。
「さすがダ。操縦は相当複雑なはずだガ、杞憂だったようダ」
 その機体を見上げ、ヴィクターはにやりと笑った。
ヨハネス・ケプラー、ガリレオ・ガリレイ、アイザック・ニュートン。科学に革命をもたらしたとされる三科学者の英霊と契約した英国貴族、エドワード。実質的に世界を手中に収め操ル、十人評議会の議長が自ら動くカ」

* * *


 海京。
 メアリー・フリージアは、本国に帰る前に海京の街を歩いて見て回っていた。
 有名人であるが、あまりに堂々としているため、かえって本人だとは気付かれないらしい。
「随分と騒ぎになってたから、びっくりしたよ」
 一人の人物が、彼女に近付いてきた。
「あら、天住さん」
「囚われのお姫様ごっこは楽しかったかい、メアリー・フリージア。いや、ミス・アンブレラ。さすがは元女優だ」
「ええ、楽しかったですわ。それに、女の子はお姫様に憧れるものですわよ」
「だけど、もう少し考えて欲しいな。君の表の顔の影響力、相当なものなんだから」
 天住、ミスター・テンジュとも呼ばれる十人評議会のメンバーは苦笑した。
「ふふ、分かっておりますわよ。でも、ちょっとは遊びたいお年頃なのですわ」
 二人は会話をしながら、街を散策した。
「間もなく、また会議がありますが、天住さんもたまには直接いらっしゃれば宜しいのに」
「生憎、今は『鏖殺寺院』打倒のために忙しくてね。表では寺院と戦い、裏では寺院を操る。いつまでこの生活が続くんだろうね。なかなか大変だよ」
「頑張って下さいな。応援してますわよ」
「人事みたいに言わないでよ。仮にも同じ評議会のメンバー、しかも評議会きっての武闘派の君が」
 その言葉に、ミス・アンブレラは頬を膨らます。
「もう、か弱いレディに失礼ですわよ」
「独断で出撃した『鏖殺寺院』のイコン小隊を、たった一人で、しかも無傷で粛清した人が何を言うんだい?」
「それ以上言うと、怒りますわよ?」
「いやあ、ゴメンゴメン。死にたくないから許して」
「分かりましたわ。でも、条件がありますの」
 微笑を浮かべている。
「海京はロシア料理が名物だと伺いましたわ。なるべくいい店に連れてって下さいな。もちろん、天住さんのおごりで」
「今月ピンチなのに……」
 傍から見れば、ただの仲のいい男女、あるいは恋人同士にしか見えないだろう。
 だが、世界――地球を裏から支配している十人評議会のメンバーは、既に動き出している。


(第十四曲へ続く)

担当マスターより

▼担当マスター

識上 蒼

▼マスターコメント

 識上です。今回も大変お待たせ致しました。

 今回、かなり文章量が多めです。
 多分、情報とNPCの人数が多いから膨れ上がった気がしますが……
 第二回になり、敵サイドの様子も少しずつ明かされていきました。
 前回から想定外の流れになり、博士の秘密も今回で明らかになってしまったり。本当はもう少し先の予定だったのですが。

 なお、今回のリアクションで命令違反をした方は、ペナルティで無期停学処分になっております。該当者はNPCも含め、以下の通りです。
 
 ・山葉 聡 サクラ・アーヴィング
 ・笹井 昇 デビット・オブライエン
 ・月谷 要 霧島 悠美香
 ・柊 真司 ヴェルリア・アルカトル

 ただ、次回のガイド次第になりますが、イコンでの出撃許可は出る可能性はあります。
 また、アクションによっては次回ですぐに解除されるかもしれません。

 全体的に見ると、ペナルティなくともPCのメンタル的にダメージ負った方が多いかもしれません。ですが、これも結果ですのでご了承下さい。

 なお、今回はPC情報とPL情報の混同に関しては、かなり厳しく判定しております。
 あとは、概ねいつも通りですが、今回は採用出来なかったアクションも多く、心苦しいと同時に力不足を実感する次第です。
 なお、シナリオの時系列的には、戦乱の絆第1回→聖戦のオラトリオ第1回→第2回→戦乱の絆第2回といった感じです。

 そういえば、ついにロボットミッションが始まりました。
 次回のシナリオに関しては、まだデータ参照はせず現行通りに判定は行います。その点はご了承下さい。

 また、次回のシナリオガイドは12月15日の公開予定です。またしても急ぎ足で申し訳ありません。

 それでは、次は第3回、覚醒編のクライマックスです。
 イコンの真の力は発揮されるのでしょうか。

※12月22日(水)ご指摘頂いた箇所(脱字、表記ミス等)を修正致しました。