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続・冥界急行ナラカエクスプレス(第2回/第3回)

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続・冥界急行ナラカエクスプレス(第2回/第3回)

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第3章 魔塔【1】


 古城から続く湿った地下道を進む。
 先導するのは冥界の魔将にして、かつての森の支配者【ガルーダ・ガルトマーン】
 ルミーナ・レバレッジ(るみーな・ればれっじ)の身体の返還を引き換えに現在協力状態が築かれている。
 足早に歩く彼に並んで、身重のコトノハ・リナファ(ことのは・りなふぁ)は話しかけた。
「ねぇ、ひとつおしえて……、貴方が欲しいものはルミーナさんの心なの?」
「なに?」
「身体に拘る必要ないのに気に入ってるって……、嫌じゃなければ現世にいたころの話をおしえて欲しいの」
「……語るほどの話はない。昔、気も遠くなるほどの大昔に別れた女と似ている。ただそれだけだ」
「それは生きてたころの話?」
「……ああ、彼女をのこしてオレは死んだ。この土地なら腐るほどある、珍しくもない話だ」
 コトノハの夫ルオシン・アルカナロード(るおしん・あるかなろーど)も尋ねる。
「世界樹と国家神は対になってるものと理解してる、ナラカはアガスティアが世界樹と聞いたが国家神は誰なんだ?」
「ナラカは国ではない。よって国家神はいない。それに類似する存在はアトラスになるが……」
「アトラスと言うと、パラミタ大陸を支えているあの巨人のことか」
 ルオシンはもうひとつ尋ねる。
「現在、パルメーラを倒そうと動いている者がいる。扶桑が枯れるとマホロバが滅びるように、世界樹の消滅はナラカの滅亡を意味してるのではないのか。ナラカが現世と繋がるのも問題だが、滅亡するのも問題のように思うのだが……?」
「無用の心配だ。所詮、ヤツは化身に過ぎん。首を切り落としたところで本体である世界樹にさしたる影響はない」
「それはヤツを倒すことはできないということか?」
「世界樹の構造については謎も多い。だが、しばらく化身を生み出すことはできなくなるだろう」
 地下道の出口にさしかかり、ガルーダは秘密のスイッチを探しはじめた。
 コトノハとルオシンは彼の背中を見ながら小声で話す。
「……国家神が黒幕とにらんだが、流石にアトラスが一連の事件の首謀者とは考えにくいな」
「ええ、となるとウゲンさんが黒幕のような気がしてきました
ウゲン・タシガン(うげん・たしがん)……、たしかに妙な動きの多いヤツだ」
「『僕には理想も守るべきものも何にもない』『みんな壊す』と言っていました。パルメーラさんも『あの人は世界をめちゃめちゃにしたい』と言ってましたよね。ナラカのエネルギーを利用する機械の話もありましたしおそらく……」
 その時、重量のある石扉が開いた。
 灰色の空を背に悠然と佇む勝利の塔が一同の目に飛び込んできた。
 入口には名状しがたき獣を駆るゴーストライダーが何人か見える。
「ヤツらに割く時間は最小で済ませろ。制圧に必要なのは速力だ。一気に塔を駆け上る」
 ガルーダの言葉に頷き、皆一斉に飛び出した。
 先駆けを務めるのは病的なほどのロボマニアエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)
 胸にナラカエクスプレスのレリーフが光るメイドイン俺のロボット風カスタム装備をまとってる。
「PCだろうとNPCだろうと強者には勝てない! ならばここは露払いに専念するまで!」
 なんだか後ろ向きに前向きなエヴァルトだった。
「混乱著しい現世を攻め、ナラカの領域を広げようとするその非道! この冥界特急隊が許しはしないッ!!」
「……その隊とやらにまさか俺も含まれているんじゃないだろうな……」
「冥界特急隊に仲間はずれはいない! 名誉に思うといい!」
 銀髪の剣士クルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)は肩をすくめた。
「……やれやれだな……」
 ルシファアとディアボロスの二丁拳銃を構え、こちらに迫るゴーストライダーの一団に掃射する。
 本来なら距離を保ち銃撃を行うのがセオリーだが、クルードは迷わず距離を詰めた。
「……二度と塔は使わせない……すべて破壊する……関わる者すべてを……。来い、レックス……」
 呟く彼の頭を飛び越え、赤銅色の鱗を持つ飛竜『レックス』が加勢に加わった。
 レックスが乗り手を狙い、クルードが獣を叩く、二点同時攻撃を仕掛ける。
「……邪魔をする者は容赦しない……と言っても、奈落の亡者共では分からんか……消えろ……」
 蹴打で獣の顔面を揺さぶり態勢を崩したところで、銃口を眉間に押し当てそのまま銃弾を叩き込む。
 崩れ落ちる敵からはなれ、狼が如き目付きで次の獲物に標的を絞った。
 しかしその瞬間、砂煙を巻き起こしエヴァルトが敵に迫った、神速の突きが獣の前脚を打ち砕く。
「おまえにばかりいい格好はさせんぞ、クルード!」
 振り落とされそうになる騎兵に鉄拳制裁。則天去私の一撃が天高く吹き飛ばす。
 華麗に着地を決め、そして自作のロボマスクを装着した。
「黄金の鎧を想いで満たし! 灯せ悪への赤信号! 冥界特急ナラクガイン、定刻通りに只今到着ッ!!」
「……俺のことをとやかく言う前に……もうすこし我が身を振り返ることを覚えておいたほうがいい……」
「善処しよう!」
 敵の待っただ中でそう言うと、二人は背中合わせに構えをとった。
「ここは俺たちが引き受ける!」
「……おまえたちは先に行け……必ずこの塔を破壊するんだ……必ずな……」