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まほろば遊郭譚 第二回/全四回

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まほろば遊郭譚 第二回/全四回

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第七章 奇襲作戦3

「都の治安は、紳撰組がいるから大丈夫かな……そうなるとボクはイコンで戦うのが、一番戦力になれそうな気がする」
 百合園女学院真口 悠希(まぐち・ゆき)は、パートナーのカレイジャス アフェクシャナト(かれいじゃす・あふぇくしゃなと)とともにイコンカレイジャスに搭乗している。
 悠希はそっと眼を閉じる。
「天秤のあの人に会う為にも」
 悠希は遊郭で遊女殺害犯を囮捜査をしているときに、『黄金の天秤』を持った男に殺されかけている。
 その時、男から悠希の心の影を指摘されたのだ。
「ボクの心の中にある『影』……そういう暗い心がある事を正確に見抜いた、あれは一体……」
 悠希は、思い出しただけでも苦しくなる。
 もしかしたら、戦いの中で答えが見つかるかもしれない。
「葦原の方とも協力しよう……行こう、カレイジャス!」
 目を開けると、眼下に野営地が見える。
 炎と煙がチラチラと登っているようだ、
 イコンに起が入り、動き出た。
 魔鎧のカレイジャスが悠希と呼吸をあわせていた。
「悠希は、その小さな体の中に沢山の暗い感情を溜め込んでしまってる……魔鎧の私では窺い知れない程に深く暗い……」
 カレイジャスはただ、悠希を守ることだけを考えた。
「それでも悠希は一生懸命人の為になろうとしている。影を追い払い、自ら光り輝こうとしてる。私に今出来るのは物理的にだけでも守る事……のみ!」
 イコンカレイジャスが崖の上から滑るように、野営地に向かって降りてくる。
 崖の向こう側はごうと音を立てて流れる雲海だ。
 落ちたらひとたまりもない。
「悠希、気をつけて!」
「うん、わかってる……!」
 悠希たちは龍を苦しませずに済むよう、急所に狙いを定めた。

卍卍卍


 天御柱学院御剣 紫音(みつるぎ・しおん)は、試作用火車装備鬼鎧を引き連れて、龍の係留所にいた。
 他の鬼鎧は幕府が急ごしらえで建造した船で既に運ばれ、配備されている。
 野営地の位置や配置等は、幕府・葦原藩と共有していた。
「空を飛ぶ龍騎士に対抗するにはこれしかない。彼らが飛び立てないようにしなければ」
 紫音がイコンゲイ・ボルグ アサルトからデータを取り出し、最後の確認をする。
「天御柱学院からの援護はおまへんが、他校との夜間連携や装備・機体運用のデータ取りにはうってつけどすなぁ。個人のデータ収集目的なら、かまへんやろうし」
 綾小路 風花(あやのこうじ・ふうか)は、刻々を流れてくるデータを拾いあげながら、コンピューターに入力している。
「データ集積は風花に任せる。龍騎士と龍の分断は、霧雨 透乃(きりさめ・とうの)橘 恭司(たちばな・きょうじ)たちがやっている。……俺は、龍をやる」
 ゲイ・ボルグ アサルトが始動する。
 大口径のビームキャノンを構えた。
「龍には恨みはないが、此処は潰させてもらう!」
 異変に気がついた龍が飛び立とうとした瞬間、並進する粒子の束が龍の胴体を貫いた。
 一斉に他の龍が飛び立つ。
「風花、情報管制・戦況把握・通信管理を頼む!」
「了解!」
 龍の翼が辺りを黒く覆う。
 夜間では肉眼はほとんどアテにはならない。
 紫音は風花の情報を頼りに、敵味方の判別をつけていた。
「そこか!」
 ゲイ・ボルグ アサルトがビームサーベルを抜き、襲ってくる龍の翼めがけて振り落とした。
 とたんに、鋭い鉤爪がゲイ・ボルグ アサルトの機体を激しくつかむ。
 強烈な振動とともに、機体の中の二人は激しく揺さぶられた。
「クッ……龍単体でなんて力だ。各機、奮戦せよ! 俺たちががんばってこの地を護るんだ!」
 紫音は、ゲイ・ボルグ アサルトのブースターを上げ、龍を振り落とそうとする。
 龍は必死にしがみつき、鉤爪がミシミシと装甲に食い込んでいた。
「紫音さん、ボクが援護するよ!」
 悠希のイコン、カレイジャスから大形チョコバルカンが放たれる。
 龍が怯んだ隙にゲイ・ボルグ アサルトが振り落とした龍を一刀両断にした。
「すまん、助かった」
「いいんだ、そんなこと……わっ!」
 悠希のイコンに向けて龍騎士の槍が飛んできた。
 どうやらさっきの龍は彼のパートナーだったようだ。
 龍騎士は怒りに震えている。
 とっさにゲイ・ボルグ アサルトがカレイジャスをかばい、すんでで攻撃をかわす。
「ご、ごめん……」
「お互い様だ。戦場では互いに礼はなしにしよう。……いくぞ!」
「うん!」
 二機が互いの背をかばうように、龍騎士に立ち向かっていった。
 紫音が叫ぶ。
「龍騎士達よ、この地から去れ!マホロバはお前達を必要としてない!」