天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

聖戦のオラトリオ ~転生~ 第2回

リアクション公開中!

聖戦のオラトリオ ~転生~ 第2回

リアクション


(・素顔)


「あーったくもやもやするぜ。カミロとは戦えない、青いヤツには邪魔されるわ、しかもコケにされるわ……あーイライラするぜ!」
 天空寺 鬼羅(てんくうじ・きら)は訓練に集中出来ず、憤っていた。
「き、鬼羅ちゃん、コリマ校長とアポ取っといたで」
 そこへ、根回しを済ませたリョーシカ・マト(りょーしか・まと)がやって来る。
「サンキュー。んじゃ、行ってみるか。カミロのヤツをもっと知るために」
 苛立ちこそあれ、カミロの様子がどこかおかしかったように感じたため、コリマ校長にカミロのことを聞こうと思い立ったのである。
 校長なら、超能力で何でもお見通しだろう。と、若干安易な考えではあったが。
「邪魔するぜ!」
「し、失礼しましゅ!」
 リョーシカが挨拶しようとしたら、噛んでしまう。
「うぅ……き、鬼羅ちゃん! 失礼やで! そんな態度わぁ……もぉ……」
(構わん。瑣末なことだ)
 相変わらず物凄い威圧感だ。
 本当にピンチになったら、この人が戦えば全て済むんじゃないかとさえ思えてくるほどに。
「校長よぉ、カミロのことを教えてくれねぇか。あのカミロのことを」
「鬼羅ちゃん、めずらしく真面目に一生懸命なんですぅ。なんか分かることあったら教えて下さい、校長せんせぇ」
「前回の戦いのときになんかカミロの様子がおかしかった気がするんだ。あんなバカみてぇな狂気な力を持った機体を追いかけてきたには、カミロにしては迂闊すぎる気がしたんだが……何か焦り? のようなもんを感じたんだ。なんか分かんねぇか」
(ふむ、そのようなことならジェイダスに聞けばいいのだろうが……薔薇の学舎に赴くのもはばかれるだろう。しばし待て)
 どうやらテレパシーで直接薔薇の学舎のジェイダスから情報を仕入れているらしい。
 鬼羅は強敵との戦いに喜びを見出す人間だ。
 あの青いイコンは確かに強い。だが、それは鬼羅の目指す強さとは別物だ。強敵というのも、確固たる信念を持ち、心・技・体を備えた者のことを言う。あんな巨大な暴風のような、それこそ災害とも言える力は鬼羅の道を貫くために必要なものではない。
(カミロは……ヤツは必ずまた現れる。もしなにかあいつの強さを曇らせているのだったらオレが晴らす! そして真正面からぶっ潰してやるんだ!!)
 彼にとってのカミロは憎むべき敵ではなく、超えるべき壁だ。
 一度は翔と協力してなんとか倒せたが、今度はサシで勝ちたい。
(カミロ・ベックマンはかつてイエニチェリだった男だ。薔薇の学舎に十三人しかいない、選ばれた者達。その中でも、カミロという男は最もジェイダスに寵愛されていたとのことだ)
「イニ……イニチェリ? あの薔薇の?」
 元はシャンバラ側の男だったのである。
(カミロもまた、他のイエニチェリの誰よりもジェイダスを慕っていたという。だが、次第にジェイダスはカミロ以外のイエニチェリを溺愛するようになる。そして彼は、ジェイダスに愛想をつかし、薔薇の学舎を去った。ジェイダスから聞いた話を私なりにまとめるとこうなる。だが、真実はその逆だ。ジェイダスを振り向かせるために、彼は去ったのだ)
 自分が他の誰よりも優れていれば、ジェイダスは自分を認めるだろうと。
 ここからは自分の推測だ、とコリマが続ける。
(それから四年。彼は表向きは鏖殺寺院の地球支部にいながら、自分の部隊を増強していった。彼にとって寺院は手段でしかなかった。そして鏖殺寺院がただ五千年の呪縛に囚われているだけの組織だと知ると、すぐに自分の部隊を独立させた。そして、十人評議会と噂される者達直下の実働部隊の指揮官となり、我々と戦いを繰り広げた。表向きは理想主義者だが、その実はただ一人の男に認められたいというだけのものだ。それをプライドの高さで覆い隠している)
 歪んだ愛憎劇、といったところだろうか。
(その焦りの正体は、そろそろカミロにも後がなくなったということだろう。海京決戦で敗北し、その地位を失ったのか、それとも別の何かがあるのか……ともかく、自分の強さと正しさを証明するためには、何らかの成果がなければならない。それが、あの青い『暴君』を倒すことだった)
 それがカミロ・ベックマンという男の素顔だという。
「よーく分かったぜ。あんがとよ、校長」
 そして校長室を出る。

「コリマ校長の言ってることがほんとだってんなら……拍子抜けだぜ、カミロ。んな小せぇ男だったのかよ」
「き、鬼羅ちゃん、どうするん?」
「決まってんだろ。今度はオレがカミロの根性叩き直してやる! カミロの本心がどうあれ、オレが知ってるヤツは仮面被ってようがなんだろうが本当の強敵だった。例え今のヤツを倒したところで、オレが納得出来ねぇ」
 本気で勝負するためにも、カミロには本調子になってもらわないと困る。
 が、言ってることは無茶苦茶である。
「うん……なんとかなる……この先の戦いが激しくなるやろうけど、鬼羅ちゃんならなんとかなる! ケセラセラってやつやな!
 ……な、なんちゃって」
 肩に乗ったリョーシカと鬼羅が目を合わせる。
 そうと決まれば、特訓だ。