リアクション
(・絶対攻撃)
「暴君」との戦いは終わり、エヴァンは無事救出される……かに思えた。
その爆発音を聞くまでは。
「海の、中……?」
ヴェロニカは爆発のあった場所を見た。確か、先ほど「暴君」が静められた海域の近くではないか。
それに、潜水して助けに行った機体がずっと出てこない。
「ニュクス、時間は?」
「もう、時間切れよ。『女神の祝福』はね」
「暴君」も、【ピングイーン】も、出てくる気配はない。
「そんな……」
まだ死んだと決まったわけではない。
それでも、絶望的な状況に変わりはなかった。あの悪意の塊のような女の、最後の執念だったのだろうか。
訪れたのは静寂。
しかし、その静寂さえもすぐに失われることになる。
突如虚空から、巨大なモンスターの大群が現れた。暴走した超霊が具現化した存在。
疲弊しきったこの状態で、モンスターの群れと戦うのは非常に厳しいだろう。
だが、そこへ空間を割って一機のイコンが現れる。
「あれは、『白銀』!」
要は目を見開いた。海京決戦、ポータラカ、そして今。三度目の邂逅だ。
『F.R.A.G.とシャンバラは引き分け、ってところかな?』
男とも女とも区別がつかない声が聞こえてくる。
『総帥!? 今まで、どこに?』
ダリア・エルナージが驚きの声を上げる。
海京決戦時に「ゲート」を開き、当時の部隊の退路を作った人物。後にも先にも、彼女の前に現れたのはあのときだけだ。
『僕は僕の目的のために動いていただけだよ。それじゃあ……』
白銀のイコン、【ジズ】がモンスターの群れに向き直る。
『話の邪魔だし、せっかく戦いも終わったんだから、消えてくれないかな。
――ジズ、「回帰の剣」起動」
ジズの手には一振りの剣が握られていた。
それをモンスターの群れに向かって振るう。ただ、それだけだ。
次の瞬間、音もなく完全にそれが消滅した。そこにいた痕跡は一切残っていない。
『何しに来た?』
『ただ見に来ただけだよ。戦いがどうなったのかを。あと、ちょっと人を呼びにね。
――メニエス、カミロ、ミス・アンブレラ』
そして告げる。
『準備は整った。間もなく計画を実行に移す。まあ、地球とパラミタが絶たれようと、このままだろうと僕がやることは何も変わらない。
それじゃ、シャンバラのみんな。近いうちにまた会おう』
虚空に「ゲート」が開き、四機はどこかへと消えていった。