リアクション
* * * 強化人間管理課。 (この二人が残りましたか。まあ妥当なところでしょう) 風間はレイヴンのテストパイロットのデータを閲覧していた。そして、完全適合体候補の中から、二人を「認定」する。 モニターにはその二人のデータが映し出されていた。 白滝 奏音。 ミネシア・スウィンセラフィ。 と。 * * * 「ヴェロニカちゃん、大丈夫……?」 「……まだ立ち直れそうにはないわね」 館下 鈴蘭はニュクス・ナイチンゲールと顔を合わせていた。約束通り、彼女のことを教えてもらうために。 「約束通り、話すわ」 ニュクスが口を開いた。 「わたしがヴェロニカとパートナーを組んだのは今回が始めてじゃない。前も、その前も、ヴェロニカと一緒だった」 「それって、もしかして……」 「わたしはプラントで目覚めてから、最終決戦までの約半年間を何度も繰り返しているのよ。どうしてなのかは分からない。最後は【ジズ】があの『回帰の剣』を、【ナイチンゲール】が『女神の祝福』を起動するところで終わる。そしてわたしは再びパートナーと出会う。ヴェロニカは五代目よ」 出会うパートナーが変わると、世界が大きく変わったとニュクスが告げる。 「だけど、今回は今までとは違う。わたしが知る極めて稀なイレギュラーが次々と起こっている。ヴェロニカがあんなに多くの友達を持ったことも含めて、ね」 そして、ある可能性を示唆した。 「ここまでに四度世界が変わっている。この輪の中に囚われているのは、きっとわたしだけじゃない。その誰かが少しずつ、何かのために世界をズラしていってるように思えるわ」 * * * シスター・エルザの元を、如月 正悟(きさらぎ・しょうご)は訪れた。 「シスター・エルザ。以前俺に聞いた『どちら側から世界に関わりたい』かの答えを出すよ――両方からだ」 地球でもシャンバラでもなくその両方に深く入り込んでいく。 「それは『あたしの領域』に来る、ということよ。どちらにも加担するわけでもなく、どちらとも協力する。そこでは『物語』に自ずから関わる資格はなく、ただの『傍観者』となる。それを拒絶し、自ら『物語』に関わろうとするならば両方の敵となる。孤立無援。ただ一人で『世界』と『運命』に挑もうとでも?」 試すような語り口だ。 ならば、それに乗ってやる。 「馬鹿げた答えかもしれない……が、それがゲームに対する俺の答えだ」 何を言われようと曲げるつもりはない。 そして、一人で挑むには力がいる。その力を得さえすれば全てを敵に回したって構わない。この世界にある「歪み」を潰せるのならば。 「俺が単機でも戦えるイコンを回して欲しい」 「それにあたしが応じると?」 「応じるさ。さっき自分で言っただろ? どちらにも加担するわけでもなく、どちらとも協力する。それは、関わろうとする者を拒否することが出来ない、ってことじゃないのか? それに、前に言っていたはずだ。『あたしは誰の敵でも、味方でもない』と。だったら、俺の敵になることも出来ない。そして何よりも『あたしの領域』に来る、と言っている時点で既に『両方の敵』のどちらにも含まれない。違うか?」 こんなのはただの屁理屈だ。だが、エルザとの「ゲーム」に付き合っているうちに、こうした思考が身に付いてしまっていた。 「ちゃんと覚えてたのね。ふふ、まあ及第点ってとこかしら。【ベルフェゴール】を回すことは出来ないけど、とりあえず手伝ってあげるわ」 校長室を出るエルザの後について行く。 行き着いた先にあったのは、巨大な空母だった。 「イコン空母【トゥーレ】。クルキアータ50機を搭載可能とし、整備環境も整っているわ」 「で、どうしろと?」 「行くわよ。とりあえず、『両方から関わりたい』なら、そのための『場』を設けないと」 どうやら、エルザも一緒に行くらしい。 「まあ、留守は『聖歌隊』の子達に任せればいいし。あと、ちょっとヴァチカンに寄らせてもらうわ」 何を考えているかは分からない。 ただ、一応は協力してくれるらしい。 「それで、この空母でどこへ向かうんだ?」 エルザが不敵に微笑んだ。 「日本――海京よ」 |
||