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【おとこのこうちょう!】しずかのじゅせいらん! 後編

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【おとこのこうちょう!】しずかのじゅせいらん! 後編

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 第2章 しずかのじゅせいらん!

■□■1■□■ じゅせいらん計画、始動

百合園の教室のひとつに、
巨大な機械が設置され、魔導受精が行われることになった。
静香が心配そうに機械を見上げ、一方、ラズィーヤは悠然としている。

「では、始めるぞ」
小ラズィーヤが、集まった学生たちを見回して言う。
「なんだか偉そうだよ、悪の科学者みたい、小ラズィーヤくん」
桐生 円(きりゅう・まどか)が、
こんにゃくで小ラズィーヤの顔をぺちんぺちんする。
「って、人が真面目にやってるのにぺちんぺちんするなー!」
「そんな機械オートに任せてボクと遊ぼうよー、
それかボクがその機械動かすよ。
大丈夫ボクはその機械の免許持ってるから、ほんとだよ嘘じゃないよ」
「ポシブルの機械の免許があるかー!」
「じゃあ、小ラズィーヤくんも免許持ってないじゃないか。
大丈夫、イコンだって免許いらないんだよ」
そう言いつつ、円の準備したのは、
ジャタ族の一部族、オマタゲ・ソルデスの巨大化ステージの破片であった。
「このステージで『ヘルジャッジメント』と唱えれば、
ウルトラスーパーアトミックアルマゲドン・小ラズィーヤーになるんだ!
この遺伝子を提供することで、
ボクに似てて心がきれいで、
美少女でナイスバディ、
巨大化まで出来ちゃう完璧少女になるのだ」

なお、機械には、
【外見特徴:永遠のすまーとぼでぇ】
【性格:世紀末系淑女勝つためには手段を選ばんのだぁダーティクール】
と表示されていた。
モニターには、円と同様の体型で、
モヒカンを殴り倒す小ラズィーヤの姿が表示されていた。

「なるほど、あらかじめ未来の状況がシミュレーションできるのだな。
興味深い」
瓜生 コウ(うりゅう・こう)が、謎の液体を手に言う。
「って、その見るだけで正気度なくなっていきそうなアイテムはなんだ!?」
「オレの血液や他人には言えないような体液まで使用した儀式の結晶であるところの、
触手から粘液を滴らせぐねぐねと蠢き
開口部からはフルートのようなか細い鳴き声を上げ
名状し難き変形を繰り返す『黒い子山羊』の、
樹木と赤黒い肉塊とタールと汚泥の混合物のごときシュブ=ニグラス細胞が何か?」
「【名状し難い】私が生まれるだろうが! やめろー!」
「安心しろ、同時に【樹木のようにおしとやかだが芯の強い】性格になるはずだ」
「さあ、コウくん、今のうちだ」
「助かる」
円が、小ラズィーヤを羽交い絞めにしている隙に、
コウが機械にその液体を注ぎ込む。

「ちょ、ちょっと待ってくださーい!」
同じイルミンのクトゥルフ神話学科のコウが蛮行していると、
【イルミンの良心】こと、ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)が駆け込んでくる。
「えっとそのー……この計画、なんだか色々と不明瞭じゃないですか?
3人で子どもを生むって、具体的にはどういうことをするんですか!?
大切なことだと思いますし、詳しく説明してもらった方が、みんなにも良いかと思いますっ!」
コウが闇の住人とするなら、さしずめソアは光の世界の者。
13歳の少女の発言に、静香が固まり、
ラズィーヤが扇で顔を覆う。
……ラズィーヤは静香に「どうなさいますの?」と
ニヤニヤ笑いを隠して無言で問いかけているわけなのだが。
「……あ、あれ、もしかしてわかってないの、私だけですか?」
ソアが、周囲を見回す。
「ちょ、ちょっと待ってください、
そもそも赤ちゃんって、お互いに好きどうしの男女の間で出来るものですよね……」
「いや、好きじゃなくてもでき」
小ラズィーヤが、コウの鳩尾に拳を叩き込む。
「それが3人になっちゃうと、なんだか色々おかしくないですか!?」
ソアには幸いにもコウの発言は聞こえなかったのだが、
さらなる疑問の提示に、その場はしばし、沈黙が支配した。
「ボクが説明するよ!」
「オレが説明しよう」
円と、復活したコウが、進み出るが。
「俺様が説明するぜ!」
雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)が、ぶっとい両腕で2人をぶっ飛ばして、
ソアを汚さないようにした。
「ご主人、あれだ。
静香とラズィーヤと遺伝子提供者でキャベツを育てると、そこから赤ちゃんがだな……」
「もう、ベア!
私、そこまで子どもじゃありません!」
「じゃあ、あれだ。
静香とラズィーヤと遺伝子提供者でコウノトリ召喚の儀式を……」
「私、そこまで子どもじゃありませんったら!
ちゃんと本で読みましたし、わかってますけど、
3人でっていうのは……」
ソアが、静香やラズィーヤに視線を向ける。
「教えてください。大切なことですよね?」
「えっと……」
静香が真っ赤になって目をそらす。
ソアが真剣なので、ラズィーヤが近づいて、肩に手を置く。
静香の困る様子は堪能したということらしかった。
「ソアさん、ちょっと別室にいらしてくださらない?」
「え、はい」
「しかたない、観念するぜ……」
ベアも、性教育の本を借りて、正しい知識を教えることにした。

★☆★

「ふっ、今日でご主人は一歩、大人の階段を登ったな……」

★☆★

こうして、ラズィーヤが席を外している隙に、
コウは、静香のスカートをめくろうとする。
「きゃー!? 何するの!?」
「『じゅせいらん計画』の性交もとい成功のためには静香の象さんを護らねばならぬ。
そのためには護衛対象の正しい姿を知らなければ。
正しい姿を知らなければ人知れず毀損されてしまったとしても気付けないかも知れないからな」
「ええっ、じゃあ、さっき説明しようとしてた知識は!?」
「オレも書物で読んだだけなのだ。安心しろ、優しくしてやるから」
「た、助けてー!?」

「桜井校長―ッ!!」
「ぐぼあっ!」

静香の貞操の危機に、
ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)が駆けつけ、
コウをぶっ飛ばす。
「あっ、ロザリンドさん!
ありがとう、あと、ごめん、えっと……!」
テンパる静香だが、ロザリンドはランスを振り回す。
「桜井校長ーーーーーー!!
私、私、いい方法思いつきましたーーーー!!」
目の下にはクマができていた。
もう、何日も寝ていないのだ。
「あ、あの、ロザリンドさん?」
「これなら遺伝子提供とか大丈夫なはずです!!
人口が減ってしまうのが問題なのですよ。
つ・ま・り。
私達で人口爆発起こすぐらい子どもを作れば問題は全て解決!!」

「え?」
この時の静香は実に間の抜けた顔をしていたのだが、
ロザリンドは気づいていなかった。

「セクシーの構え!」
ロザリンドが全身鎧にランスという姿で叫ぶ。

「ということで。
桜井校長、腰のランスで私を!!」「ラ、ランスって!?」
「こちらの部屋にベッドも用意しましたから!!」「ええええ!?」
「さぁ! 世界のために!」「ちょ、待……」
「ズドンと!」「話を」
「私も覚悟をし……。
……。
……z
zzzZZZ」
寝不足で崩れ落ちたロザリンドを、
静香があわてて助け起こし、運ぼうとする。
「ごめんね……」
歩に言われたことも思い出して、
謝る静香だが。
「う、動かせない……」
全身鎧のロザリンドを静香が動かすことはできないのだった。

「大胆だなあ、ロザリン」
円が、親友の行動を見て言った。

「うん、さすがロザリー、やるときはやる子やね」
テレサ・エーメンス(てれさ・えーめんす)が、
パートナーが寝てる隙に遺伝子提供しようと近づく。
「あー、何だか面白そうだし。
ロザリーと校長の子なら何ら問題ないのじゃないかな?
ということで。
ちょっとロザリーの遺伝子を。
……。
よ、鎧が重くて剥がせない」
ロザリンドの意識があれば、
「羽のように軽い、か弱い乙女の嗜みです」とか言うに違いないが。
「まあ、しかたないか」
テレサが、ロザリンドのランスの表面をやすりで削り取る。
「小ラズィーヤ? ポシブル? 呼び方はどっちでもいいや。
これに遺伝子あると思うから、使っててー」
「いいのか?
本人の承諾を得てないようだが」
「うん、別にどうせ2人の子なら変わらないでしょ」
テレサが、お気楽に言う。

かくして、
【外見特徴:縦ロールは古い、横ロールに】
【性格:ランスのように真っ直ぐな子】
という小ラズィーヤが生まれることになるのだが、
それはまた、別の時代の話である。