天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

【おとこのこうちょう!】しずかのじゅせいらん! 後編

リアクション公開中!

【おとこのこうちょう!】しずかのじゅせいらん! 後編

リアクション

■□■3■□■ 大切な願いを

ボロボロになったアルバ・フレスカだが、執念で立ち上がる。
リネン・エルフト(りねん・えるふと)は、
小ラズィーヤに、協力を申し出ていた。
「私たちが……彼を引きつけている間に。フェイミィをお願い」
ヘイリー・ウェイク(へいりー・うぇいく)とともに、前に出る。
「ボクは……ボクは、正しいことをしようとしているんです!」
「為政者は皆、そういうのよ!」
ロビンフッドのモデルとされる伝説のアウトローである、ヘイリーが、
サイドワインダーでアルバ・フレスカの動きを止める。
「そんな動き……このヘリワード・ザ・ウェイクが見逃すとでも?」
「彼……過去では私のいた犯罪組織にも指示を出していたわ。
こっちでも、だいぶ手広くやっているかも」
リネンが注意を促す。
「その必要はありません!」
アルバ・フレスカが、指を鳴らして合図をすると、
百合園の制服を纏った男の娘が現れる。
「……十嬢侍」
リネンがつぶやく。
「体制側の悪党なら、余計、倒しがいがあるってものよ!」
ヘイリーが、弓を引き絞った。

★☆★

フェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)が、
自分の黒翼から、羽を1枚抜き取り、小ラズィーヤに渡す。
ヴァルキリーのオルトリンデ家最後の生き残りであるフェイミィは、
女しか愛せない。
このままでは、一族の血筋は絶えるだろうと思われていた。
「もし……できたら未来の小ラズィーヤさんに伝えてくれ。
オルトリンデ家の名と誇りを忘れないでくれ、って」
「わかった。
きっと伝えよう」
「その世界の空も綺麗だといいな」
フェイミィは、魔導受精装置に自分の羽が入れられるのを見届けると、
すぐさま身をひるがえした。

「頑丈さとパワーはこっちが上だぜッ!」
バーストダッシュとともに、天馬のバルディッシュが振り下ろされる。
「くっ」
ハサミは殴り合いには不利だ。
アルバ・フレスカは、ステップを踏んで後退する。
「陣形を整えるんです!」
アルバ・フレスカが、部下の十嬢侍に叫ぶ。

★☆★

【有翼種ヴァルキリーの黒翼】と、
【正義漢】で知られる小ラズィーヤが、別の世界で誕生したのを確認した小ラズィーヤは、
機械の操作を続ける。

★☆★

「小ラズィーヤちゃん」
騎沙良 詩穂(きさら・しほ)が、
ロケットペンダント【慈愛】を手に立っていた。
「これ、詩穂の大切な、強い想いの込められた品物なの」
詩穂は、決意の表情で続ける。
アイシャちゃんのためって、アルバさんは言ってるけど、
アイシャちゃんがそんなこと望むわけないもの」
「ああ、宦官とその傀儡の契約者による政治など……」
「アイシャちゃんには、どの世界でも笑っててほしい。
だから、未来の可能性は少しでも多い方がいいの」
詩穂が、【慈愛】を握りしめる。
これは、アイシャに渡した、【悠久】と対になっているものだ。
サイコメトリを使いながら、詩穂は思い返す。
はじめて、アイシャとフマナで出会ったこと。
今まで一緒に歩んできたこと。
一緒に成長してきたこと。
これから先は想い出を一緒に沢山作って行くこと。
そしてこれから共に先の未来を羽ばたくことを模擬結婚式で誓ったこと。
「詩穂は、アイシャちゃんの未来を護り抜くよ。
たとえどんなことがあっても」
「ありがとう。
おまえたちの想いが、未来の可能性を切り開く力になるんだ」

こうして、魔導受精が行われたが。

★☆★

「アイシャちゃん、たいへーん☆
ヴァイシャリーの交易所が。
うん、うん、そうなの。じゃあね!
あ、お母様? 今ね、アイシャちゃんとお話してたんだけど」

「どうしてこの時間軸の私は、
【携帯電話をしょっちゅうかけている】うえに、
【瞳が乙女チックにうるうるしている】のだ?」

「あっ、詩穂が携帯電話使うの得意だからかも☆」
てへっ、と詩穂が舌を出す。

★☆★

「ぐっ、十嬢侍をなめないでください!」
リネンたちに追い詰められるも、
アルバ・フレスカが立ち上がる。
「本物のシャンバラ女王の側近は宦官による政権ではなく、
博愛と奉仕の精神に溢れた給仕がふさわしいんだよ☆」
「何言って……うわあああああ!?」
アルバ・フレスカが振り返ると、詩穂のカニの爪とカニの甲羅の謎料理で、
部下の十嬢侍が精神的ダメージを受けてバタバタ倒れている。

「ラズィーヤおねえさま!」
そこに、花子が走り込んできた。
「ついに、私たちが一つになる時が来たんですよ!」
「花子ちゃん……これも未来のためです!
利用させてもらいますよ!」
「あにゃーっ!?」
アルバ・フレスカが、花子の服を切り裂き、下着姿にした。
「うひょーっ、眼福だぜっ!」
フェイミィが身を乗り出す。
「ちょっとエロ鴉! そんな場合じゃ!」
「エロ鴉……さっきまでの言動はいったい……」
「いいんだよ、オレの10年に1度のシリアスは終わったんだよ!」
ヘイリーとリネンに突っ込まれるも、
フェイミィが花子に迫る。
「オレならちゃんと愛してかわいがってやるぜ? ……ごふうっ!?」
ヘイリーとリネンが、フェイミィをぶん殴って気絶させる。
「まったく……」
「……失礼したわ」
ヘイリーとリネンが、フェイミィを引きずって行った。