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リアクション
・1月17日(月) 08:00〜
「お、おはようご、ございますっ!!」
天御柱学院の正門前で、村主 蛇々(すぐり・じゃじゃ)は登校してくる生徒達に挨拶をしていた。ここならば、中等部、高等部問わず全校生徒が通るため、多くの人の目に留まるだろう。
中等部ながら勇気を出して副会長に立候補し、朝早くからこうして積極的に自分の存在をアピールしているのである。
しかし、同じように挨拶する者がもう一人。茅野 茉莉(ちの・まつり)である。彼女もまた、蛇々と同じく中等部の所属で、副会長立候補者である。
意外な人物が、という声が登校中の生徒同士の会話から聞こえてきた。一部生徒の間で、「天学の魔女」と呼ばれ、科学都市海京にあって魔法を信奉するという異端児であったが、先の戦争を通して彼女も変わった、ということだろうか。
また、蛇々自身は気付いていなかったが、彼女も決して無名といわけではない。多くの生徒が第二世代機に移る中、イーグリットで第二世代機クルキアータと渡り合った『ワイヤー戦法の使い手』として、主に中等部のパイロット科の間では評判となっている。
「おはよー、立候補者の取材やってるんだけど、ちょっと話聞かせてもらっていいかな?」
正門前の様子を見てか、月美 あゆみ(つきみ・あゆみ)とひっつきむし おなもみ(ひっつきむし・おなもみ)が声を掛けてきた。
「しゅ、取材!?」
口下手な蛇々としては戸惑うものの、これも自分を変えるためと引き受けることにした。学院が新しくなるなら、自分も少しずつ変わりたい。
「ふ、副会長なら私でも学院を支えていけるかなって思って。あと、会長を始めとした他の役職の人達から色々学ぶことで、自分を成長させることも出来るかなと……そう考えたのよっ!」
わずかに顔を赤らめながらも、しっかりと自分の立候補理由を告げた。副会長は、会長の補佐という立ち位置ではあるが、最も身動きを取りやすいポジションである。学院を支えるとともに、自分を変えていくにはもってこいだ。
「じゃ、次の質問。あゆみが手に入れた情報によれば、ワイヤー使いに定評があるってことだけど、縛る派、それとも縛られる派?」
謎な質問が飛んできた。というよりも、一体どこの情報筋なのだろうか。ワイヤー戦法を考えたのは確かに蛇々だが、パイロットとしてそれを実行しているのはパートナーの方である。
「べ、別に生徒を縛り付けるような学院にはしないわよっ!」
実際、規則を厳しくして生徒の自由を奪うような生徒会にはしたくない。とりあえず、そういう解釈のもと答えた。
そのままの流れで、茉莉のところへあゆみが取材に来た。
「立候補理由? そうね、マイノリティを守りたいから、ってところね」
元々、学院の中でも異端であった身だ。周囲から蔑まれたこともある。それゆえに、自分のような少数派も大事にしたい。それは、少数派だった自分だからこそ出来ることだと茉莉は考えた。
「生徒会執行部として目指すのは、『どんな小さい声にも耳を傾け、手を差し伸べることの出来る生徒会。誰も見捨てたりすることのない生徒会』よ」
理想論かもしれないが、これが茉莉の目指す組織だ。学院の生徒一人一人を第一に考えている点は、聡とも共通している。
「天学の魔女、って呼ばれてるけど火を点けるとしたら、ライター? それとも火術?」
「火術一択ね。自分の意思で温度調整も出来るから、ライターどころかコンロよりも便利じゃない」
今は使えないが。それでも、魔法使いとして矜持は未だに忘れていない。
「ありがと、クリアエーテル☆」
取材を終えると、ホームルームに間に合う時間まで挨拶運動を続けた。
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