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燃えよマナミン!(第3回/全3回)

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燃えよマナミン!(第3回/全3回)

リアクション


【1】電子の海でショタコン一本釣り……2


 ネットカフェ『まんぼう』、空京駅前2号店。
 前回爆発したネットカフェの姉妹店にあたる店で、対カラクル・シーカー電脳戦の準備が着々と進んでいた。
 カラクル確保に燃えるのは教導団所属の戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)だ。
 前回、惜しくもカラクルを逃がしてしまったこともあり、今回は本腰を入れて居場所を突き止めるつもりだ。
 リース・バーロット(りーす・ばーろっと)とカップルシートにぎゅうぎゅうに座り、空京の地図とにらめっこしている。
「あ、ありました。このアカウントがカラクルさんですわ」
 一見するとたわいもない内容で、どこそこのアニメのショタに萌えた萌えないの話題ばかり。
 これだけ見ると黒楼館の恐るべき暗殺者とは思えない。
「よし、コンタクトをとってみましょう」
「了解しました。ええと、では小次郎さんのアカウントで……」
 リースはカタカタと指を走らせる。


 おっぱい星人 @oppaipai
 @hanzubonsukisuki 初めまして! カラクルさんってショタ界隈ですごく有名な方ですよね!

 カラクル @hanzubonsukisuki
 @oppaipai いえいえ、そんな〜(”▽”)

 おっぱい星人 @oppaipai
 @hanzubonsukisuki いつもブログ読んでます! 今度、イベントで同人誌出されるんですよね! 楽しみです!

 カラクル @hanzubonsukisuki
 @oppaipai わぁありがとうございます! 嬉しいです! にゃん玉慢太郎の本出すの実は初めてなんですよ〜!


「……普通に乗ってきましたね。めっちゃフレンドリーですわ」
「それは好都合……」
 一方、小次郎は持ち込んだノートPCでカラクルの携帯番号を洗っている。
 GPS機能、通話記録から基地局を探り出し、電波の有効範囲から場所を絞り込めるはず……。
 なのだが、GPSは機能しておらず、通話記録も改竄された痕跡が見える。
 おそらくカラクルの能力によって痕跡が消去されているのだろう。
「ブログのほうは……漫画やらアニメの話ばっかりですね。所在地の手がかりになるようなものは……なし、か」
 とその時、リースが「ん?」と漏らした。


 ひめみやん @bankara
 @hanzubonsukisuki おっす! お前が執筆も出来て腕もたつ、文武両道の美人拳士、カラクル・シーカーだな?

 カラクル @hanzubonsukisuki
 @bankara え……あの、そんなに有名なんですか?

 ひめみやん @bankara
 @hanzubonsukisuki 俺の学校じゃあんた大人気だぜ?

 カラクル @hanzubonsukisuki
 @bankara ち、ちなみに貴殿の学校と言うのは……?(*´д`*)ハァハァ

 ひめみやん @bankara
 @hanzubonsukisuki 高……あ、いや、中学校だけど?

 カラクル @hanzubonsukisuki
 @bankara マジですか!! ウホーイ! 日陰者に春がキターー(・∀・)ーー!!


 奇しくも小次郎の隣りの個室にバンカラ少女姫宮 和希(ひめみや・かずき)が居た。
 普段から男っぽい格好を好む彼女だが、今回は完全に男物の服に身を包んでいる。
 ナナメかぶりのキャップに、カラフルなダウンベスト、ハーフパンツにいかついスニーカー。
 そんでもって鼻の頭にバンソーコー。小物に用意したスケボーを小脇に抱え、ヤンチャ系ショタの出で立ちだ。
「よーしよし、乗ってきやがった」
 ツイッターでやりとりをしながら、各種掲示板やSNS、カラクルのブログに彼女を持ち上げるコメントを流す。


 カラクル @hanzubonsukisuki
 あ、あれ……? ブログにも中学生男子のコメントが……。やべー時代来たかも\(*^▽^*)/

 おっぱい星人 @oppaipai
 @hanzubonsukisuki 流石ですねぇ〜。


「マジモンのファンも出て来たし、仕込みは完璧だな」
 和希はへへっと鼻先をこすると個室をあとに。
 ところが、部屋を出たところで「む?」と顔をしかめた。
 何のつもりだか知らないが、外の狭い廊下で非常識にも撮影会……のような真似をしてる連中がいるのだ。
「男装とかいーやーだー! そんなの衿栖がすればいいじゃんー!」
 茅野瀬 朱里(ちのせ・あかり)はジタバタと喚いている。
 その前でデジカメを構えているのは846プロのリーサルウェポンこと茅野瀬 衿栖(ちのせ・えりす)
「うーん、わかったわ。じゃあ、写真撮らせてもらう代わりに、新鮮な輸血パック3日分でどう?」
「………1週間分ならやってあげてもいいかな」
 交渉成立したところで、朱里は髪を帽子に隠し、白シャツサスペンダーの半ズボンの大人しめ美少年風に着替えた。
 そして、いいよーいいよーじゃあ思い切っちゃおうか、とノリノリで衿栖はパシャパシャ写真を撮る。
 ふと和希の隣りの個室の戸が開き、レオン・カシミール(れおん・かしみーる)が顔を出した。
「写真は撮れたか?」
「ええ、これだけ撮れば充分。あとはツイッターで……」


 ツンデレエリス @dollmaster846
 ちょっと迷ったけど、思い切って846プロの男子部Jrの生写真買っちゃったー。やばー。

 カラクル @hanzubonsukisuki
 @dollmaster846 電柱┃_・)ジー

 ツンデレエリス @dollmaster846
 @hanzubonsukisuki わっ、もしかしてショタ界隈にその人アリと言われたカラクルさん?

 カラクル @hanzubonsukisuki
 @dollmaster846 す、すみません。突然リプライしちゃって、あんまり素敵な写真だったもので……。

 ツンデレエリス @dollmaster846
 @hanzubonsukisuki いえいえ、カラクルさんにリプライ貰って光栄ですよ。良かったらこの画像もどぞ。

 カラクル @hanzubonsukisuki
 @dollmaster846 わわわ、凄い美少年ですね! まるで女の子みたい! 写真って他には……o(^o^)o ワクワク

 ツンデレエリス @dollmaster846
 @hanzubonsukisuki 良かったら全部zipで差し上げますよー。

 カラクル @hanzubonsukisuki
 @dollmaster846 (°□°;)マジデ!?


 衿栖とレオンはにやりと微笑む。
 ただで幸せをお裾分けするほど気前のいい彼女たちではない。zipにはレオンお手製のウィルスが仕込まれている。
 あまり時間がなかったため、それほど強力なものではないが、察知されにくく感染力の高いものだ。
 ここで、再び小次郎の個室に目を向けてみよう。
「……なんともタイムラインが賑やかになってきましたね」
「目標の居場所ですが、大まかにですが範囲が絞られてきましたわ」
 上げられている食事の写真に「お洒落な雰囲気ですね」とおだててみると、意外と簡単に場所をおしえてくれる。
 細かく情報を引き出してみた結果、どうもカラクルはこの近辺に潜んでいるようだ。
 空京の地図からカラクル常連のお店をチェックしていくと、印はこの駅前付近に密集しているのだ。
「あとは彼女をおびきよせる方法ですけど……」
「やはり彼女の趣味に同調するのが正解でしょう。適当な美少年の目撃情報を流して誘導すれば……」
「いえ、ちょっと待ってください、また別のアカウントが……」


 少年探偵 @Sherlock
 空京駅前なう。お店この辺だと思ったんだけど道に迷っちゃった……。どこだろう、ここ……。

 カラクル @hanzubonsukisuki
 @Sherlock 大丈夫、ぼく? どこに行きたいの?

 少年探偵 @Sherlock
 @hanzubonsukisuki 駅前にあるお店なんだけど……、お姉ちゃん空京に詳しい?

 カラクル @hanzubonsukisuki
 @Sherlock な、なんでも聞いて! てか、アイコンのこの美少年ってもしかして君の写真!?

 少年探偵 @Sherlock
 @hanzubonsukisuki うん、そうだよ。


 携帯の画面を見つめながら小さく笑うシャーロット・モリアーティ(しゃーろっと・もりあーてぃ)
 白いシャツに蝶ネクタイ、ハンチング帽、そしてカラクル大好き半ズボン。
 少年探偵団と言った格好で駅前を歩いていると、なんとなく街頭に設置してある監視カメラから視線を感じる。
「これで道案内にでも出て来てくれればすんなり行くんですが……」
 とその時、とある同人ショップの前に和希を見つけた。
「うーん、ここにもカラクルねーちゃんいねーのか。どこにいるんだろーな、出来れば会いてーなー」
 これみよがしに声を上げて、店に入る客に居所を尋ねている。
「何してるんです……?」
「決まってんだろ、こうやってあいつの注意を引き付けて俺に会いに来させるって寸法だ」
「ははぁ、考えることは同じですね」
「とは言っても、なかなか出てこねーんだよなぁ、あいつ……。もうちょっと過激にやったほうがいいのかな」
「過激?」
 次の瞬間、和希はシャーロットの胸ぐらを掴んだ。
「なんだ、お前! どこ中だよ! ここは空京二中のシマなんだからな!」
「!?」
「……ほら、お前も合わせろよ」
「なるほど」
 シャーロットは頷く。
「勝手なことを言うな。僕がどこを歩こうと自由だ。私立空京学園に通う僕に軽々しく触れるな」
「なんだとーっ!」
 まぁ本当にそんな中学が存在するのかは不明だが。
 しかし、少年を見守ることにかけては三国一の愛好家、カラクルのハートに火を点けるには充分だった。