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なし

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作れ!花火を!彩れ!夜空を!

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作れ!花火を!彩れ!夜空を!

リアクション

 仲間の心配を受けてか否か。ピエロ姿のナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)は、発見されただけでウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)に職務質問をされていた、しかもそのインパクトはウィルネストの許容範囲を越えていたのだろう、パニック状態でナガンに迫っていた。
「おまえ、そんな格好で何を企んでいるつもりだ」
 言葉尻も可笑しいが、発言そのものも可笑しい。ナガンの解釈では、そうなった。
「ナガンはピエロである。ピエロはピエロの格好をする」
「あぁぁぁぁ、分からん、危険だ、危険だ、危険すぎる、捕獲するっ」
 ウィルネストがナガンに飛びついた。抱きつくような体勢だが、混乱する中で捕獲しなくてはならないなら効果的と言えるだろう。
 そこへ、同じく広場を警備していたクレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)が通りかかり、その様を一目しただけで血相を変えて駆け寄りた。
「あなた何をしてるの! 火薬が、まだラグビー弾を持ったままなのだぞ」
 ラグビー弾を抱えるナガン、ナガンを覆い抱えるウィルネスト。そのウィルネストをクレアは力づくで引き剥がした。
「何をする、お前も仲間なんだなっ」
「馬鹿を言うな、冷静になれ、奴は火薬を持っているんだ、誤って引火したりでもしたら…」
「仲間もろとも、焦げるが良いっ」
 目玉が回っている、思考はすでに空に回っていて。ウィルネストは火術を放っていた。
 広場に悲鳴があがる。そうだろう、ナガンを狙ってはいるが、幾つも幾つも火術を放っているのだから。
 悲鳴をあげるのはクレアも同じに。火薬に火術など!何という事を!
「止せっ、止めろ!」
 クレアの叫び、避け逃げるナガン、そしてナガンの持つラグビー弾に遂に火術が当たってしまう。
 その場の全ての生徒が爆発に備えた。が。
 ラグビー弾は火術を受けても表面に炎を纏いはしたが、それだけで。すぐに散火させて落ち着いた。
 安堵よりも驚きが勝る。それは心より案じたからであって。
「痕も残らないとは。頑丈であるな」
 さすがと言うか、そう言おう。ノーム教諭の技術力、ラグビー弾の性能は確かなようだ。


 ウィルネストが起こした火術の騒動。広場の中央では氷術の騒動が起こっていた。
「暑苦しいからね、氷術でも喰らって頭冷やしな」
 氷術を放つは、ウィザードのメニエス・レイン(めにえす・れいん)。より美しい愛を実らせる為の障害を、花火の為の妨害をしているのだ。
 制作機の中から飛び出してくる生徒や、その場から逃げだす生徒、足が凍りついてしまい逃げられない生徒など、それぞれに惑っていた。
「さぁ、次は雷術よ。雷術なら機械の中まで届くだろぅ?」
 箒で空を飛びながら、雷術を放つべくエンシャントワンドを振り上げた時、リターニングダガーが飛び迫った。
 ワンドでダガーを弾くメニエス、軌道の先を睨み見る。
 ダガーを放ったはローグの陽神 光(ひのかみ・ひかる)、パートナーのプリースト、レティナ・エンペリウス(れてぃな・えんぺりうす)も並びて、メイスを構えている。
「レティナ、行くよっ」
「えぇ、そのように」
 同時に二人は飛び出した。
「面白い。ミストラルっ」
「了解です」
 メニエスの背後から、同じく箒で飛ぶミストラル・フォーセット(みすとらる・ふぉーせっと)が現れた。箒の疾さで地上へと飛び迫る。
 二人の雷術が地上に降ってくる。どうにか避けても電撃が走り体が硬直する、かろうじて避けるのでは雷術を避けた事にはならないようだ。それなら。
雷術を放つのに、ワンドを振りかざしていた、ならば、腕を振り上げる瞬間こそが。
「ここっ」
 メニエスが腕を振り上げ始めた時、光は腕を狙って3本のダガーを同時に放った。
「くっ」
 並び迫り来るダガーは飛び避ける方向を判断するのに余計に時間をかけさせる、故にメニエスはワンドでダガーを受け弾いた。ならば雷術は放たれない。
 同着でミストラルが雷術を放つが、レティナが見極めて光が避けるを助ける。
 雷術とダガーの乱戦、そこに氷術も混ざる訳だが、この状況でも機械の中でイメージ構築を続けているのは、蒼空学園のローグ、島村 幸(しまむら・さち)である。パートナーのプリースト、ガートナ・トライストル(がーとな・とらいすとる)が止めに入る。
「幸、逃げましょう、危険です、あぁっ」
 部屋が大きく揺れる。幸も壁に叩きつけられるが、すぐに立ち上がって水晶に手を当てた。
「幸っ」
「ダメです。魔力の無い私は、時間をかけるしかないんです、もっとずっと集中しないとダメなんです。花火を、作るんです」
「幸…」
 再び大きく揺れる。今度は幸も揺れるだけで何とか持ちこたえた。
 水晶からは目も手も離さない。真っ直ぐに、そう、金色の瞳で真っ直ぐに。
「言っても聞きませんな」
 ガートナは幸の背後から、そっと幸を抱きしめた。
 幸は言葉を失い、体を硬直させた。嬉しいはずが、動かない。
「首を温める事は脳を落ち着かせる効果があるのです。私が支えています。さぁ」
 首元にガートナの温もりを感じて、幸はようやく笑みを浮かべられた。
 嬉しさも、今は待たせる。この想いで、花火を構築する!


 ウィルネストの暴走、メニエス達の強襲を受け、混乱が広がりつつある広場中央において、動じずに己の目的を果たそうとする者もいる。蒼空学園のメイド、饅頭院 闇光(まんじゅういん・あんこ)である。
「あまり根を詰められては身体に毒でしてよ。一息ついてはいかが?」
 そういって闇光は、おまんじゅうを差し出した。生徒たちが逃げ惑う広場の中で。
「さぁさぁ、遠慮なさらずに、美味しいですよ」
 も一度、闇光は蒼空学園のソルジャー、比賀 一(ひが・はじめ)に、おまんじゅうを差し出した。生徒たちが逃げ惑う広場の中で。
「当家は由緒正しき和菓子店、ですから自慢のおまんじゅうなのです」
「うっ、ううっ」 
 ついに闇光は一の口に無理やりに饅頭を詰め込んでいた、生徒たちが逃げ惑う広場の…。
「って、喰ってる場合じゃないだろ」
 勢いよくツッコんで、饅頭は吐き出した、そうなった。
「どうかしてるぞ、この状況で何で饅頭を勧めるんだ」
 悲鳴、爆音。加えて闇光の怒りが静かに湧き上がっていた。
「当家のおまんじゅうを吐き出すなんて。わらび、こっちへ」
「はい」
 呼ばれた機晶姫は闇光のパートナー、饅頭院 わらび(まんじゅういん・わらび)である。音も無く闇光の隣に並んた。
「当家のおまんじゅうは本当に美味しいんですのよ?ねぇ、わらび、そうよね」
「もちろんです」
「それを吐き出すなど。ねぇ、わらびぃ」
「了解、鉄槌を下します」
 広場の状況を把握しようと思考を巡らせていた一に、わらびはカルスノウトを振りかざした。
「何だっ」
 かろうじて避けた一撃目、二撃目はアサルトカービンで受けて弾いた。
「何をするんだっ」
「闇光の成す道を邪魔せんと立ち塞がる輩には鉄槌を!」
 わらびの攻撃が再びに。一は避けては受け避けた。
「何だっ、何で戦わなきゃならない」
 わらびに一の言葉は届いていない。ただ剣が襲いかかってくるばかりだ。
「くそっ、わかった、もういい」
 一は目つきを鋭くして、わらびと闇光を見つめた。
「まんじゅう娘は動いてない。機晶姫の動きを止めるっ」
 わらびが間合いを詰めてくる。一は何とか受けて避けながら後方へ跳ぶ、着地と共にアサルトカービンを撃ち放った。
 無表情のまま弾を避ける、わらび。が、着地点を狙うは一のカービン。わらびの着地と共に足を撃ち抜いた。
 それでも表情を変えない、わらび。撃ち抜かれた事など無かったように、飛びかかってきた。
「何っ、怯まないのか…。それなら」
 わらびの剣技が鈍いわけではないが、間一髪で避けては、アウェイアンドヒットを繰り返す事で、確実にダメージを与えているのだ。
「このままでは… 、しかし、闇光の成す道を邪魔せんと立ち塞がる輩には… 、しかしこのままでは…」
 忠誠と冷静。ぶつかり合いて混乱する。そして導き出された答えは、一を倒す事。
「自爆します」
 どぉぉぉぉぉぉぉぉおおぉぉん!!
 わらびは自爆を選んだ。爆音と爆風が、広場の混乱を混沌とさせた。


 大規模な爆発音。これはもう、ただ事じゃない。
 広場を警備をしていた水神 樹(みなかみ・いつき)は、爆音の発生源へと駆け出した。
「ちょっ、樹ぃ」
 パートナーのカノン・コート(かのん・こーと)の呼びかけは一切に樹の耳には入っていない、届いていない。樹の背中は人混みの中へと消えてゆく。せっかく、せっかく樹と一緒に、次々にぃ。
「うぅぅぅぅう〜、俺の青春を返せ〜!!」
 泣き叫んで、カノンは樹を追い駆けた。