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リアクション
爆発音が鳴り響いた時、リアトリス・ウィリアムズ(りあとりす・うぃりあむず)とパートナーのパルマローザ・ローレンス(ぱるまろーざ・ろーれんす)は広場の外れを警備していた。広場の中央部での爆音に、顔を見合せて冷静を保とうとしていた。
「リアトリス」
「えぇ。あっ、待って」
リアトリスの携帯電話が鳴っている。表示には菅野 葉月(すがの・はづき)の名だった。
「もしもし、葉月?」
「リア? どこに居るの?」
二人は互いの位置を伝えた。広場を中心に、対角に位置していた。
「とにかくみんな混乱しています」
「えぇ、みんなを安全な場所へ誘導しよう」
今や混乱は広場全体へ広がってしまったようだ。落ち着かせる事、それが最優先である。
今一度言おう、混乱は今や広場全体へ広がっているのだ、そして発信源の中央付近は爆音に続いた爆風と煙で大混乱なのである。
企みの笑みが咲き誇る。渋井 誠治(しぶい・せいじ)は保管庫へと忍び寄った。
「見張りの二人が邪魔だったからな、今のうちだぜ」
爆発が起こるまで、保管庫の前にはベア・ヘルロット(べあ・へるろっと)とマナ・ファクトリ(まな・ふぁくとり)が厳格に警備・管理していたが、爆音を受けての一瞬の隙、混乱の鎮静に動いた隙を渋井は逃さなかった。
保管庫に忍び入る。内にはラグビー弾が転がっていた。
「へっへっへ」
六つ、歩んで落とすは二つ。五つ、歩んで落とすは一つ。四つならば落とさずに歩めるが。
「歩けん」
ゆっくり、ゆっくりとしか歩めない。それでも仲間が待っている。チャンスに足掻くのが男なり。渋井は弾を抱えて忍んで出でた。
中央部で発した煙は広がってゆく。その煙は広場の離れにも到達してそうであり、煙に身を隠した葉月 ショウ(はづき・しょう)がエリア構築機の元へ歩み寄っていた。
「一つを壊せばシステムは停止する。俺の勝ちだ、ノーム教諭」
葉月がカルスノウトを振り上げた時、般若のお面が目の前を横切った。
驚き構える葉月の目に映ったのは、ポーズを決めている時枝 みこと(ときえだ・みこと)と、パートナーのフレア・ミラア(ふれあ・みらあ)であった。
「神出鬼没、時枝みこと、参上」
「みこと、名乗ってしまって良いのですか?」
「だって、お面、投げちゃったし」
「なるほど、そうでしたね」
葉月が不敵に笑み返す。
「なぜ分かった?偶然か?」
「ノーム教諭に頼まれたんだ、エリア構築機を守ってくれって」
「混乱に乗じるなら、人通りの多い所、つまりココという訳ですわ」
「なるほど、大した推理だ」
葉月の剣、みことも同じカルスノウト。瞬時に二つの刀身がぶつかり、弾けた。
「くっ」
「やるわね」
着地、飛び出して葉月が一閃。それを上体を傾けるだけで避ける、みこと。
体勢を戻す事なく突きを繰り出して、葉月は制服の端だけを喰わせたが避けた。
互いに振りかぶり、ぶつけ合う。
鍔迫り合いから、弾け離れる。
葉月はそのままの勢いのまま、自らその場から離れようとした。が、当然にみことは追い来るわけで。それでもこの時から葉月は攻める事を止めた、その真意は。
みことの剣を剣で受けて、敢えて飛ばされる。
「なぜ攻めて来ない」
息を切らした葉月は、ゆっくりと立ち上がり、そして数歩を歩んで笑みを見せた。
「これ、何だろうな」
葉月が手を伸ばしたのはエリア構築機。葉月は巧みに移動していたのだ。
「待てっ」
葉月の一閃が構築機を砕く。薄い水色の光線が消えた。葉月は更に一閃を構築機へと加え、爆発を起こさせた。
「しまった、奴は」
瞬時の脱出。葉月は爆発に乗じて、この場から姿を消していた。
広場の中央でも離れでも、大混乱・大混戦だというのに、シャンバラ教導団のソルジャー、佐野 亮司(さの・りょうじ)は出店の準備をしようとしていた。爆風を体に受けながらパートナーのジュバル・シックルズ(じゅばる・しっくるず)は亮司に叫んだ。
「亮司、何もこんな時に準備しなくても」
「バカ野郎、爆発があろうが無かろうが、花火と言ったら出店なんだ。ここで出さずにどこで出すってんだ」
「いや、そうじゃなくて、今じゃなくてもって」
爆風を受けても煙が来ようとも、亮司はキャベツを切り刻み続けていた。
「おっ、そう言えばレイと祥子も来るって言ってたが、巻き込まれてるのか?」
一瞬、広場へと目を向けたが、すぐに手元に戻していた。
「まぁ、あいつ等なら大丈夫だろ、無駄に愛の力もあるしな」
くっくっく、なんて笑って見せて。広場の中で笑っているのは亮司だけに違いないない。
混乱は二人を引き離す事もあるが、すでに引き離れていた二人が互いを探し出すのは、より困難に思えた。
「ジュスティーヌ、ジュスティーヌ、どこにいるのですか? ジュスティーヌ」
生徒たちの波に逆らって、ジュリエット・デスリンク(じゅりえっと・ですりんく)はパートナーのジュスティーヌ・デスリンク(じゅすてぃーぬ・ですりんく)を探していた。
言い合って、離れ離れて。名を叫ぶ声も、周囲の音にかき消されている。
それでもジュリエットは叫び続けた。
「ジュスティーヌ、ジュスティーヌ」
無事を祈って、呼び続ける。叫び駆けて、ぶつかってよろけて。
ドンと背中にぶつかった。互いの背中がぶつかっていて、どこか寄り掛かっているようで楽だった。
「ジュスティーヌ」
「ジュリエット」
背中の相手も叫んでいる。それが自分の名を叫んでいると気付いたのには二人とも多くに時間を要した。それでも気付いて振り向いて。
「ジュスティーヌ、よかった、無事で」
「ジュリエット、心配させないで下さい」
言葉を言い渡す前に、二人は抱き合っていた。
言い合って、離れ離れた二人。互いを思い、惹き会えた。抱きあう二人は喜びと安堵を噛み締めていた。
爆発の混乱の中、必死に花火玉制作機に戻ってきたのは小柄なメイド、ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)とパートナーのプリースト、和泉 真奈(いずみ・まな)である。
爆発が起こった時、自分たちの順になったが、流れてしまったかのように思えたから、ミルディアと真奈は走ったのだ、機械の元へ。
部屋に入って水晶に手を当てるミルディア。真奈も部屋に入ってきた。
「ミリィ、無理しないで下さい」
「うん。でも、花火玉は絶対に作りたい、作るんだもん」
瞳を閉じて、気を静めてゆく。ミルディアが想うは真奈の好きなあの言葉。
「いつも、ケガをしては助けてくれる、戦ってるときは支えてくれる。そんな真奈の好きな言葉を花火に乗せてみんなにも見せてあげたい」
言葉にせずに、想いを固めた。故に真奈には伝わっていない。でも、真奈はそっとミルディアの手に、手と手を添えた。
「私も手伝いますわ。花火玉、作るのでしょう?」
「ミリィ… 、ありがとう」
「魔力とは、学識よりも想いの強さだと思うんです、だから私の想いも加われば、きっと成功しますわ」
ミルディアが想い浮かべるは、真奈の信条「 Love & Piece 」
二人の結束が愛と平和を主張する。
どうしようか、悩んでいた。いたずらに時間だけが過ぎていた。
そして気付いてみれば、広場は大混乱だった。
それでも椎名 真(しいな・まこと)は焦っていた、いや、冷静なのか?
「まずぃ、線香花火をどうしよう、手に入れなくちゃ、そう、買ってこようかな」
パートナーの双葉 京子(ふたば・きょうこ)も線香花火ならば大丈夫だろう。でも、どこで手に入れたらいいのか、空京で調達するには知識が足りないのだ。
「うぅう、どうする、どこへ行けば良い」
混乱して奔走する真を、京子は不思議そうに見つめていた。
「今日の真君は、分からない」
自分の為に奔走している事も分かっていないようであった。
花火玉制作機を前にして、焦っているのはクロノス・ヴィ・ゼルベウォント(くろのす・びぜるべうぉんと)である。
ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)とブレイド・オーバーウェルム(ぶれいど・おーばーうぇるむ)は姿を見せたが、渋井 誠治(しぶい・せいじ)が姿を見せないのである。
そんな事を思っていたが、渋井がヨロヨロと歩み寄って来た。
「バカ野郎、場所は正確に伝えろ、遠周りもいいとこだぜ」
保管庫と制作機は目と鼻の先。混乱に乗じての今の行動だが、連絡不良とは、不憫である。
「すまん、後で聞く。急ぐぜっ」
そう言うとクロノスは水晶に手を触れた。機械の外に、ラグビー弾を装填する穴が開いている。
「合図したら、次々にラグビー弾を詰めるんだ。いいなっ」
目を閉じてイメージする。ラグビー弾を複数しようするには、間髪入れずに装填する必要がある。でも、それさえすれば可能なのだ、調べは完璧なのだ。
チーム漢花火、その巨大な花火が今、こうして構築されたのだ。
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