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作れ!花火を!彩れ!夜空を!

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第三章 花火を見上げて

 時刻は過ぎに流れ流れて、夕刻である。暗くなっている、星も見え始めたようだ。
 噴水広場には打ち上げ会の準備が整っており、多くの生徒たちが集まってきていた。
 会場と空の様子を見つめ、レベッカ・ウォレス(れべっか・うぉれす)はマイクを手に取った。
「みなさん、お待たせしたネ。イルミンスール魔法学校主催、花火玉打ち上げ会を開催するネ、拍手が欲しいネ〜」
 会場に笑顔と共に拍手が溢れてゆく。
「司会進行は、ワタシ、レベッカ・ウォレスと」
「パートナーのアリシア・スウィーニーでお送り致します。どうぞよろしくお願いします」
 拍手を受けて、アリシア・スウィーニー(ありしあ・すうぃーにー)は説明を続けた。
「花火を打ち上げる順番は事前の抽選によってランダムで決定しています。花火玉制作に参加された方にも知らせていませんので、最後まで、打ち上がる夜空から目を離さないよう、お願いします」
「それじゃあ、早速、打ちあげるヨ。初めは、メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)の花火ネ。イメージを構築したのは、メイベル・ポーター、パートナーのセシリアとの出会い、そして様々な経験のどれもがセシリアが傍に居てくれたからこそ。そんなセシリアへの感謝ン気持ちと、これからもずっと二人の友情が続く事を願う気持ちを花火玉に込めました、花火玉を作った事もセシリアには言って無いようネ。さぁ、花火が打ち上がるヨ」
 一つの花火玉が空を登っては弾け開いた。花火のイメージは「マリーゴールド」花言葉は「生きる」「友情」「可憐な愛情」である。パートナーへの想いが空京の夜空に見事に花開いたのだった。
「素晴らしい出来だったネ。きっとパートナーにも伝わったと思うネ、伝わってほしいネ」
「えぇ、その通りですわ。では、どんどんまいりましょう。次の花火は、この方です」


 エレート・フレディアーニ(えれーと・ふれでぃあーに)の花火は、
「いつもありがとう」の言葉に朝顔の花が添えられていました。
 レトガーナ・デリーシャー(れとがーな・でりーしゃー)は問いた。
「なぜに朝顔の花なのじゃ」
「この間、朝顔を見て笑顔を浮かべていたのを見てしまいましたので。私の感謝の気持ちです」
「… わらわこそ、貴公には、いつも感謝している」
 素直にお礼を言われるなんて、驚きますわ、そして、嬉しくて、嬉しいですわ。


 朝野 未沙(あさの・みさ)の花火は、
「大好きだったよ。今までありがとう。でも、ごめんね、辛い思いさせちゃったよね。二人で幸せになってね。… さよなら」の文字が順に開いて現れる。さよならの文字だけが小さかった。
「ほら、未沙、きれいに読めますよ」
 朝野 未羅(あさの・みら)の言葉と笑顔に、勇気を貰えた気がした。レイちゃんとさっちゃんも見ていると信じてる。しっかりしよう。未沙は無理に笑顔を作って見せた。


 漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)の花火は、
 会場で出会った人たちの笑顔と刀真の笑顔。
「月夜、何で俺が入ってるんだ?」
「刀真が撮った写真の中に、刀真が居なかった、思い出の中に刀真が居ないのは、嫌なの」
 樹月 刀真(きづき・とうま)を月夜は真っ直ぐに見つめていた。
「嫌だったの」
 刀真は月夜の頭に手を乗せた。
「ありがとう。傍にいてくれるのが君でよかった」
 月夜と刀真は照れながらも見つめあっていた。


 色無 美影(いろなし・みかげ)ミントラム・マリウォーター(みんとらむ・まりうぉーたー)の花火は、
「ありがとう」の言葉とハートの形、そして互いの笑顔が模られていた。
 打ち上げる、と聞いた時から、二人はずっとに祈っていた。
 無事に打ち上がった事、ハートに見えた事、そして互いに何も言ってないのに互いの笑顔をイメージしていた事を見て知って、二人は笑顔で涙していた。


 峰谷 恵(みねたに・けい)織機 誠(おりはた・まこと)上連雀 香(かみれんじゃく・かおり)の花火は、
 花を上に向けた菊の花束と線香花火。
 打ち上がった花火を見て、香は嬉しそうな表情を見せた。峰谷はと言うと、少し嬉しく思っていた。二人と居れて楽しかったし、ボクが少しだけでも人の役に立てた、その事が何よりもボクを勇気づけてくれる、そんな気がしたんだ。
 兄さん、ボク、もっと強く、しっかりするよ。峰谷は夜空に誓いを立てた。


 高月 芳樹(たかつき・よしき)の花火は、
 アメリアを封印していた箱が現れて、箱の中から大きなハートがたくさん溢れてくる。時間差でトランプの柄とアメリアの笑顔がたくさん溢れてくる。
 アメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)は顔を赤らめて俯いてしまった。芳樹も慌てて解説をする。
「あ、あのハートはあれだぞ、あくまでトランプの柄の一つなんだからな、特別な意味なんて無いんだ、ハートはあれだ、平和を意味するからな、だから」
 何を言っても言われても、芳樹もアメリアも顔の赤らみは消えそうにない。


 ヘルゲイト・ダストライフ(へるげいと・だすとらいふ)の花火は、
 ハートマークの中に「ピンクナース」の文字、色は赤から桃、そして白へと変化する。
 はずだったので、パートナーの桜井 雪華(さくらい・せつか)は怒鳴りつけていた。
「ちょ、アホ〜! あれやったら桃色のナスやないか! キモイわ!」
 ハートマークの中から桃色のナスが現れたのっだ。でも花火を見ていた人々は喜んでくれているようなので、宣伝効果はあったのではないか、とも取れますね。


 ズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)の花火は、
 赤、青、緑、紫、黄色、オレンジ、様々な色の華が空に咲き誇って、その散った華々が雨のように降り注いで消えていく。
 パートナーのナナ・ノルデン(なな・のるでん)は花火を見つめて驚いた。
「これ、難しかった、よね?」
「そんな事ないよ… 、思ってたよりずっと簡単だったんだもん」
 浴衣姿のナナを直視出来ないでいるのだが、ナナには違って見えていて。
「ズィーベン… いつもありがとうですよ」
 ナナは勇気を出して、感謝を込めて、そっと、ズィーベンの頬にキスをした。


 緋月・西園(ひづき・にしぞの)の花火は、
 元気で優しい椿の笑顔のイメージを、暖かい光を使って華やかに仕上げている。
 パートナーの泉 椿(いずみ・つばき)は花火を見上げて、感嘆の声をあげた。
「凄い、凄い、すごくキレーだったぜ、緋月」
「喜んで貰えるなら、本望よ」
「はらへった。緋月、なんか食いたい〜」
 彼氏探しを中断させて、ようやく花火を見せたのだが。
 緋月は笑んでしまう。この純粋さが、椿の魅力なのだから。


 ローランド・セーレーン(ろーらんど・せーれーん)の花火は、
 パイナップル。
 花火を見た瞬間は、呆気に取られて。すぐにパートナーの水渡 雫(みなと・しずく)は声を上げて笑い転げた。
「アハハハアハハ、パイナップルって」
「何でも良いと言っただろう、だから吾輩は」
「そんな言葉遣いで、出てきたのがパイナップルって、アハハハハアハ」
 笑いは止まらず。恥ずかしさ止まず。それでもきっとに笑顔は繋がる。


 椿 薫(つばき・かおる)の花火は、
 「∞」「∞」「∞」が溢れている。
 パートナーのイリス・カンター(いりす・かんたー)は目を座らせて薫を睨みつけた。
「あれは一体、何ですの?」
「違っ、あれは「♪」をイメージしたのだ、そこへイリス殿が抱きついたからであろう」
 抱きついて来てから「♪」が「∞」へと変化した?抱きついて来たから…?
 イリスは余計に怒りを抱いて、キレイな声で爆発させた。ふぅむ、ふむ。楽しそう。


 羽瀬川 セト(はせがわ・せと)エレミア・ファフニール(えれみあ・ふぁふにーる)の花火は、
 清らかな水せせらぎの川、そこへ夕陽が射してきて、川も空気も染めてゆく。
 花火を見つめてセトは言葉を失った。
「どうじゃ、セト」
「う、ん。凄い、です」
「我らの合作じゃな」
「う、ん、でもやっぱり、オレの川が滑稽ですね」
「そんな事は無い、簡素な川だからこそ、染めた時に映えたのじゃ、あれが最高だったのじゃ」
「そう。そうですか」
 落ち込む気持ちは、やはりに有れど、エレミアの言葉が夕陽のように暖かく感じていた。