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【借金返済への道】夢見る返済者

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【借金返済への道】夢見る返済者

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 大草 義純(おおくさ・よしずみ)は空京にあるミス・スウェンソンのドーナツ屋に来ていた。
「ホイップという子が眠り続けたままなんです。どんなものでも構わないので何か死人も目覚めさせる事が出来るような薬や祈祷師等の情報はないでしょうか?」
「そうねぇ……」
 オーナーであるヨハンナ・スウェンソンは首を傾げて考えている。
「ん〜……あんまり良い噂は聞かないんだけど、ここからちょっと離れた路地裏で怪しげな薬を売っているのを聞いたわ。だけど、法外な値段だし、薬って言っても違う薬の可能性も……って、あら?」
 義純は最後まで聞かずに、お礼だけ言うと飛び出していた。
「大丈夫かしら?」
 心配そうに義純が出て行った扉を見つめたのだった。

 早速、噂の路地裏に到着し、目当ての商人も発見出来た。
 ローブのフードを被り、みすぼらしい格好をしているが、眼光だけは異様に鋭い。
「……何か用か?」
「どんな人も目覚める事が出来る薬はないでしょうか?」
「……」
 男は義純を値踏みするように、全身を観察する。
「……目覚めれば良いんだな?」
「はい!」
 ローブの下から痩せこけた手が出てきた。
 その手は痩せて皺が寄ったのか、年で皺が出来たのか判別が出来ない。
 握られていた手を開くとそこには、何も書かれていない錠剤が1粒。
「……これを水で飲めば良い。直ぐに目覚める……。代金は1,000Gだ」
「有難うございます! お金は宿屋にいるホイップに請求しておいてください!」
「……良いだろう」
 薬を受け取ると宿屋へと駆けだした。

 宿屋へと到着すると直ぐに、この薬で目覚める事を説明し飲ませようとする。
「あらあら、それはあまりにも危ないんじゃないかしら?」
 さっきまでどこかに行っていたルディが戻り、その手の錠剤を奪う。
「何をするんですか!」
「えいっ」
「ああー!!」
 ルディは手にした錠剤を窓の外から放り投げてしまった。

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「ここでホイップさんと初めて会ったんですよね……」
 しみじみとソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)が呟く。
「そうですねぇ……」
 シャーロット・マウザー(しゃーろっと・まうざー)も頷いた。
「俺様のベアクローが冴えわたったんだよなぁ……」
「そうだよねぇ……うん! ホイップさんの為にも頑張ろう……っくしょん、ウッキー! あ、あれ?」
 後ろでは雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)カッチン 和子(かっちん・かずこ)も同意している。
 和子のくしゃみを聞き、事情を知らない晃月 蒼(あきつき・あお)と芳樹以外は和子から急いで離れた。
「面白いくしゃみだな」
「うん、聞いたことないよ」
 芳樹と蒼は顔を見合わせ、不思議そうにしている。
「またぶり返したのかなぁ……っくしょん、ウッキー!」
「きゃーー!」
「図書館ですよ、ここは!」
 ソアが思いっきり叫ぶと司書さんが出て来て注意をする。
「あ、ちょうど良いですぅ。早く聞き込みをしちゃうですぅ」
「それもそうだな」
 シャーロットと雪国ベアはこれ幸いと聞き込みを開始させた。
 芳樹はそそくさと夢関連の本棚の方へと移動した。
 ソアが手短にホイップの状態を話すと司書さんは驚いていた。
「で、ホイップさんに4日前会いに行ったのでしょうか?」
「いいえ、その日はずっとここで仕事をしていたわ」
 続けてソアが質問するが直ぐに答えられてしまった。
「本当に〜?」
 蒼が疑ってもう一度聞くと、本当に違うと少し怒られてしまった。
「ホイップの眠りを解決するような情報が載っている本はないのか?」
「そうねぇ……あの辺の棚が夢に関する記述の載った本棚だから調べてみたらどうかしら?」
 雪国ベアの質問によって、指さされたのは既に芳樹が調べ始めている棚だった。
 皆は芳樹に合流し、手分けして本をめくっていくのだった。
「あ、ところでホイップさんに依頼出来るお仕事ってありません? っくしょん、ウッキー!」
「そうねぇ……今のところ何もないわ。それより、はい。このマスクしていないと迷惑です」
 司書さんにマスクを手渡され、直ぐに付けるとくしゃみが止まった。
 もう一度外すとくしゃみがぶり返している。
「このマスクは何か特別なの!?」
「いいえ。きっとそのくしゃみは本の埃とかのせいだと思うわよ? 治りきらなくて、くしゃみの語尾が残ってしまったのね」
「……えっ? じゃあ、普通の風邪とかでもこのまま……?」
「そうなるわね。でも、そのうち消えると思うわよ」
 青くなりながら、図書館をいったん出て、携帯を取り出し、ケイへと電話する。
 ここでの状況を説明し、電話を切ると本を探しに皆と合流したのだった。

 宿屋で和子からの情報を受ける。
「あの図書館でホイップに初めて会ったんだよ」
 ケイがソアと同じ事を言った。
「あの巨大な紅白斑模様の蚊と風邪はやっかいだったねぇ。治す為の薬もだけど」
 エルが女体をゲットしたときの事を思い出す。
「そんな事件があったのねぇ」
 いつの間にか聞いていたルディが相槌を打つ。
「あの蚊はあらゆる意味で気持ち悪かったですからねぇ」
 クロセルも話に加わったのだった。

「あら……?」
 カーリーの目に留まったのは英希の外れかけた眼鏡だ。
「放っておいても良いんだけれど……しょうがないわね」
 眼鏡が何かの拍子に割れても危ないだろうと眼鏡を外してやる。
「……意外と整った顔しているのね。可愛いわ!」
 そう言うと英希のほっぺを突いておくカーリーだった。

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 琥珀亭にタノベさんが居る事を聞き、動いたメンバーは今、琥珀亭の入り口に来ていた。
 黎が勢いよく扉を開けるとそこには談笑していた琥珀亭のマスターとタノベさんが居た。
「情報通りだ!」
 入って来た皆の必死の形相を見て、2人は驚き、どうしたのかと声をかける。
「はじめまして、七瀬 歩(ななせ・あゆむ)と申します! えーっと、初対面なのでもっときちんと挨拶したいのですが、これくらいで……。急ぎなんです! ホイップちゃんが大変な事に!」
 歩が早口で挨拶を済ませる。
「ホイップが眠ったまま目覚めないんだ!」
「本当にどんな起こし方をしても起きないのです!」
 永夷 零(ながい・ぜろ)ルナ・テュリン(るな・てゅりん)がその後を継ぐ。
「現在、ホイッちの夢の中にお香を使って入っているんだ!」
 神代 正義(かみしろ・まさよし)も言葉を足す。
「タノベさんの『夢見放題』を使った痕跡があった」
「まさか! 今まで1人も起きなかった人なんて……解りました、直ぐに向かいましょう。今日はその事で空京に来ていましたから」
 黎の言葉に直ぐ立ち上がる。
 そのまま、黎が乗って来ていた白馬のイフィイに2人乗りし、空京の街を駆けて行く。
 途中、お香もタノベさんの物なのかと質問をすると、それは『夢見放題』のモニター報酬に含まれていたものだと言う事が解った。

「初めましてだ。スターニャックスのマスターをしている者だ」
「初めまして。同じマスターですが、今までお会いした事はありませんでしたね」
 残った猫花 源次郎(ねこばな・げんじろう)がマスターと挨拶を交わす。
「このお店良い匂いがしますね。今度はゆっくりお料理を食べに来ますね」
 歩が今度は早口ではなく言葉を発する。
「確かに良い匂いなのでございます」
「まったくだ。これは今度来店した時が楽しみだ」
 ルナと零も同意する。
「ん? このキノコは珍しいな! ちょっと味見しても良いか?」
「流石、それに目をつけるとは。構いませんよ。どうぞ食べてみて下さい。なんだったら少しお分けしましょうか?」
「おお! うまい! 何、本当か? すまんな、これから宿屋に戻ってホイップとやらに美味いおかゆを作ってやろうと思っていたのでな」
「そういうことでしたら、必要な物を持って行ってどうぞ。料理の解る方との話は楽しいですね!」
「まったくだ。おお!? この調味料は幻の!!」
「解りますか! 今度、ゆっくりお話したいですね」
「いや、本当に」
 この2人はとても気が合うようだ。
「マスター! 何かつまめる物を幾つかもらえないか? 復活パーティーの準備をしておきたい!」
「気が早くはないですか? それになんだか不謹慎のような……」
 正義の提案に歩が首を傾げる。
「こういうのは黙って仲間を信じて待つんだぜ! その中で自分の出来る事を探すんだ!」
「では、いくつか料理を包みますので少々お待ち下さい」
 マスターが厨房へと入っていく。
「俺も手伝うとするかな」
「ボクも料理を運ぶのでございます」
「あ、あたしも!」
 結局、残った皆でパーティー用の料理と源次郎が作るホイップ用の材料を宿屋まで運んだのだった。

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 宿屋では誰もが目覚めるというスープが完成し、綾乃がホイップの部屋へと運んだ。
 物凄い刺激臭がしており、宿のお客も皆も道を開けていく。
 匂いを嗅いだだけで涙が止まらず、鼻を押さえてもあらゆる穴から体の中へと入って来るような強烈さがあった。
 綾乃自身も目に涙を溜めており、悲惨な状況になっている。
 部屋へと入り、ホイップの側まで来た。
「それではわたくしが口うつしで飲ませて差し上げますわ〜!」
 とロザリィヌ・フォン・メルローゼ(ろざりぃぬ・ふぉんめるろーぜ)がスープを口に含む。
「…………」
 皆が固唾を飲む中、ロザリィヌは真っ青になり、目を開けたままぶっ倒れた。
 こうしてスープは存在しなかったものとして処理された。