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リアクション
第5章
時間は少し戻り、ここはホイップの夢の中。
夢の中は小さな山くらいまで積まれた色々な種類の服と、地面には珍しい薬草の数々が生えている。
空には出始めたばかりの星、地面との境界線には沈んだばかりの太陽のオレンジ色が上に行くにしたがって、黒へと吸い込まれていっている。
360度どこを見回してもその光景が続いている。
黄昏色で妖しく美しい。
しかし、夕方のように直ぐに暗くなっていくわけではなく、時間が止まっているようだ。
皆は一度集まると直ぐにばらけた。
お互いに確認出来るくらいの位置で離れて探していくことにしたのだ。
移動していっても、互いの距離が離れたりしないように注意もしていく。
一番離れている場所で探しているのは音子とアルチュールだ。
「自分の夢じゃないのよ〜? 危ないってば!」
服の山を登り、てっぺんで何かをやっているショウにアクアが叫ぶ。
「大丈夫だって。背中に羽の生えるイメージを……ん〜! とう!!」
羽の生えるイメージだけをして、山を蹴り、飛ぶ。
イメージだけなので羽は生えていないのに。
「うわぁ〜!!!!」
飛べるわけもなく、無傷で地面に激突したのだった。
ショウが落ちた場所では社が1人で何かポーズを取っていた。
「はっ!!」
両手を前に付きだし、何かを出したいようだ。
手から現れたのはただの火術。
「やっぱり無理かぁ……って、うおっ! いつからそこにおったん!?」
どぎまぎしながらショウに話しかける。
「え、え〜と……あはははは」
「で、もしかして地面と激突しとるいうことは……飛ぼうとしたんか?」
「ああ……結果はごらんのあり様だがな」
2人は互いに苦笑いをする。
「……あたしは何も見てません!」
他にも礼香が居たらしく、走り去って行った。
「お兄さ〜ん! 大丈夫〜?」
なかなか戻ってこないショウをガッシュが心配して探しにきたのだ。
「ほ、ほな、本題に戻ろか?」
「そ、そうだな」
互いに今の事は心の中に留めておくことに決めたようだ。
「どこですかぁ〜?」
「ホイップちゃ〜ん!」
「ホイップー! いたら返事してくださいー!」
メイベル、セシリア、葉月は声の限りに叫び続けている。
「なかなか見つからないですぅ」
メイベルが2人に話しかける。
「そうですね……いったいどういう場所にいるんでしょう?」
葉月の問いには誰も答える事が出来ず、また呼び続けるのだった。
「ホイップー! いい加減出てこーい!」
「ホイップさーん!」
シルバと夏希も叫んでいる。
「何かヒントになるようなものがあれば良いのですが……」
「そうだな……あるのは服と見た事もないような草ばかり」
「はい……」
「早く見つけてやりたいな」
「はい!」
2人の声が響いていく。
「ホイップ殿とは一体どのような人物なのだ? 借金まみれの生活をしているようだが……」
「ホイップちゃんですか? そうですねぇ……頑張っているのに何故か借金が増えちゃうんですよ。あ、でもそのおかげで沢山の人と知り合えたのは喜んでいたみたいです」
ジゼルの質問にいちるが素直に答える。
英希はそれを横で聞いているだけだ。
「何々? ホイップの話? ボクも雑ぜて〜!」
「私も、私もー!」
ホイップの話を聞き付けたカレンと美羽も話に加わった。
「この前、私と一緒に超ミニのウェイトレス姿になったんだよー! 可愛かったなぁ〜」
「ほう、それはそれは」
美羽が話すのをジゼルは楽しそうに聞いている。
「英希は一緒にホイップ談話しないの?」
カレンが英希へと声を掛けるがプイっとそっぽを向いてしまった。
「ああ、美しい女性と話すのが苦手なだけだ」
「う、うるさいなぁ!」
「ええ〜! そうなの!?」
楽しそうな会話をしながらホイップ探しをしているのだった。
「マナって可愛い〜! ぎゅって、してみても良い?」
沙幸がマナ・ウィンスレットにキラキラと視線を送る。
「そ、そうか? 今回だけ特別だぞ」
そんなやりとりをしつつホイップを探している2人だった。
現実ではタノベさんが宿屋に到着し、ホイップの部屋へと駆けあがってきたところだ。
「話は聞きました! このキャンセル薬を飲ませれば、『夢見放題』の効果がなくなるはずです」
鞄から取りだしたのは緑色の錠剤。
「それなら俺が!」
チャンスとばかりに、奪うように錠剤を取ったのはクロセルだ。
ホイップの側へと行くと、錠剤を自分の口に入れ、机の上に置いてある水を口に含みホイップを抱き上げた。
もう少しで口うつしで飲ませられるところで黎に首を掴まれ、窓の外へと放り投げられたのだった。
「うわーーっ!」
「はあ……まったく」
溜息を吐きながらホイップを元の位置へと戻す。
クロセルは何とか着地は成功したようだ。
この後、普通に鞄からもう1個薬を出し、タノベさんが飲ませた。
「……おかしい、おかしいですよ。この薬は直ぐに効くはずなのに」
再び夢の中。
声が空から降って来る。
月夜が皆に今起こっている事の説明をしてくれたのだ。
「キャンセル薬が効かなかったなんて……じゃあ、原因は『夢見放題』じゃないのかな?」
「解らんが……何とか夢の中でホイップを見つけなければならんな」
沙幸が心配そうに言うのをマナ・ウィンスレットが受ける。
「ホイップが居たーーーー!!」
叫んだのはシルバだ。
皆が急いで駆けつける。
そこには10人くらいが余裕で寝られそうな大きな天蓋付きベッドがあり、その上でホイップが寝ていたのだ。
側へと近寄ろうとすると、地面から柵が出て来て、近寄るのを拒んでいるようだ。
「あれって、ホイップだけじゃないよね?」
沙幸が指さす先にはハンチング帽を被った黒く大きな豹が居た。
まるでホイップを守っているかのように寄り添っている。
こちらを一睨みするとホイップの胸元から首筋、頬へと舌を這わせる。
ホイップの顔が微かに赤くなり、ぴくりと指が動くが起きる様子は全くない。
「え、エロっ!」
アクアが思わず呟いた。
英希も顔を赤らめ、直視出来ないでいるようだ。
「ふ〜ん……やっぱり夢魔居たんだ〜」
音子はどうやら予想していたらしい。
「何があったのですか? 目覚めた様子もないですよね?」
戻ってきたクロセルが説明を求めるとギルベルトが話す。
クロセルとギルベルトは2人でマナ・ウィンスレットと社を起こした。
「中にはな……夢魔がおったんや」
「ああ。それも帽子を被っている変な黒い豹」
「それもエロい!」
「エロいのはともかく……イルミンスールの図書館に行っている人達に調べてもらいましょう?」
アメリアの提案には皆が同意した。
急いで電話で伝える。
「どうやら夢魔がホイップの中にいたらしい。その弱点とか探って欲しいそうだ」
イルミンスールの図書館では連絡を受けた芳樹が夢魔の情報を伝える。
「司書さん、何か夢魔に関する本はないか!?」
「ありますよ。ちょっと待って下さいね」
雪国ベアが直ぐに聞きに行くと司書さんは本棚の下から3段目を探し、見つけてくれた。
「これです」
手渡された本は『世界の夢魔事典』と書いてあり、黒い革の装丁になっているそれほど分厚くない本だった。
めくっていくとサキュバスやインキュバス等が出てくる。
「これだ!」
芳樹が見つけたのは“アルプ”だった。
女性の夢の中に入る事が多く、帽子を被り、動物の姿をしている。
まさにホイップの夢の中にいる奴そのものだ。
弱点はどうやらその帽子で、帽子が無いと能力が使えないとある。
芳樹はすぐさまアメリアへと報告したのだった。
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