First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
Next Last
リアクション
どこか華奢なイメージのある日本人、赤嶺 霜月(あかみね・そうげつ)は湯島、ハロルドに言った。
「夢見草と言ったら普通は、自分たち日本人にとっては桜を指すのですが、人魚の言う夢見草とは違うみたいですね。皆で手分けして探せば早く見つかりますよ、きっと」
アイリス・零式(あいりす・ぜろしき)が赤い瞳をきらめかせて言う。
「フェリアさんはあんなにいい人なのに、あんなひどい目にあうだなんてほっておけないであります。夢見草の花・・・よくわかりませんがその青い花を集めればいいんでありますね! 頑張るであります」
長い黒髪をサイドで結んだ、小柄な赤嶺 卯月(あかみね・うき)は霜月に言った。
「おにいちゃん、最初卯月は夢見草って言う名前で、青い花だって言うからウコンサクラかと思ったわ」
霜月が応えて言う。
「いや卯月、ウコンサクラは黄色味を帯びた緑のサクラだから違うでしょう。日本人は青といったら緑のことも指すけどね」
「ああ、そっか……」
卯月がはにかむように微笑みかけた。
「まあ、がんばって探して、早く人魚さんを助けるでありますよ」
アイリス・零式が二人に向かって言い、2人ともうなずいた。
紫月唯斗(しづき・ゆいと)は、フェリアの傍に行き、声をかけた。潮風のせいでオールバックの黒髪の一房が乱れ、端整な顔にかかっている。
「フェリア、俺は絶対にお前を助ける。だから、もう少しだけ我慢してくれよ。夢見草を必ず探し出してくる」
「はい……ありがとう……」
フェリアは弱々しい微笑を浮かべた。
「か弱い人魚を追い回し、怪我を負わせるとは! 犯人、許せん!
……せっかく海辺のリゾートを楽しもうと……いやいやいや、これはあとでいい。今はとにかく一刻も早くフェリアを助けるのだ!」
シルバースター捜索メンバーの一人、芦原 郁乃(あはら・いくの)は小鳥のように首をかしげると、くりっとした青い目を当惑したように、パートナーである蒼天の書 マビノギオン(そうてんのしょ・まびのぎおん)の方に向けた。マビノギオンは芦原自身とよく似た容姿で、一見二人は姉妹とも見えるほどだ。
「ね、マビノギオン。シルバースターってどんなところにあるのかな?」
困ったような声で、芦原が言う。
問われたマビノギオンは、なんともいえない表情を浮かべ、深い緑色の瞳を、つと芦原からそらした。
「……そういう薬効のよい草って……その〜、往々にして険しい崖の中ほどに生えてたりしますよね……」
「ええ……そうなの? でも、それって危なくない? 向こう側に崖があったけど……ここ……落ちた場合どうなるのかな〜?」
「う……そ、それは……その……あはははは……えと〜」
マビノギオンは、言葉に詰まった。風が淡い金髪を乱し、マビノギオンの困惑の表情を隠した。
影野 陽太(かげの・ようた)がおずおずと言った。頼りなげで華奢な、黒髪のお坊ちゃんといった風貌だ。
「あのう……俺も一緒に行きますから……。よかったらその〜、捜索スキルを使ってシルバースターを捜しましょう。ええと……ナゾ究明やユビキタス、博識もありますし、ポイントを絞り込んでから採集に行きましょう。小型飛空挺もありますし……」
提案は至極まっとうで、当を得ているというのに語尾がだんだんと消えてゆく。
いったん言葉を切ってから、影野は気弱な微笑を浮かべて言ったのだった。
「苦しんでいる人魚さんを、、男としても放っては置けませんからね……環菜会長に認めてもらうためにも……」
痩身のノース・イングラム(のーす・いんぐらむ)はアリアが映し出してくれたシルバースターの画像を携帯に保存し、じっと見つめた。小さな草だ。これを早く探し出し、解毒剤を作る必要がある。イメージを脳裏に焼き付け、は携帯をぱちんと閉じた。
海辺の浅いプールにぐったりと浸かったまま動かないフェリアを痛ましげに見つめた。熱と痛みがひどいのだろう。早く何とかしてやりたいが……。
「一刻も早くシルバースターを探し出す。……すまないな。これくらいしか、私は君の助けになれないが」
潮風がノースの短く刈られた銀髪を、彼の心を映し出すように乱し、吹き抜けていった。
ノースの独り言を聞きつけ、そばに立っていた流木 涙音(ながらぎ・るいね)は思わず彼に声をかけた。
「ああ、俺もそう思うぜ。何とかしてやりたいよな。あんなにぐったりしちまって……相当しんどいんだろう」
少年っぽい容姿とは対照的な、かつての事件によって白く変わってしまった髪はきちんと後ろで束ねられている。フェリアのほうを見た、今日の青空を移しているかのような双眸には真剣な表情が浮かんでいた。
「早く探し出して、楽にしてやりたいな」
「ああ、そうだな」
ノースも応えた。
少年そのもの、といった姿のニコラス・シュヴァルツ(にこらす・しゅう゛ぁるつ)は栗色の髪を振りたてて、パートナーであるアイン・シュルツ(あいん・しゅるつ)に向かって力説していた。
「シルバースターを何とか早く探してあげないと……このままじゃフェリア様、命も危ないって言ってたしさ。みんなも協力して探すって言ってるし、ボクもきっと何か力になれると思うんだよ」
それに対して、アインは皮肉っぽい笑みと、困ったやつだ、という表情を同時に浮かべるという器用な事をやってのけて言った。
「まーた面倒なことを……わざわざおまえ、またしてもそういうとこ首つっこむんだもんな。バカは仕方ねえなぁ、手伝ってやるよ」
いやいや言っているような台詞だが、言葉とは裏腹に豹のような金色の瞳は愛情にあふれていた。
「うん、協力してくれると思ってたよ」
微笑むニコラス。
「バカはほっとくと何しでかすかわかんねーからな」
そう言ったアインは、ニコラスの微笑みに踊る心を隠すためにあさっての方向を向いた。
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
Next Last