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瀕死の人魚を救え!!

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瀕死の人魚を救え!!

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第2章 看護隊 

 五月葉 終夏(さつきば・おりが)は緑色の目にうっとりした表情を浮かべて、しばしぼんやりしていた。夢見る少女といった様子だが、頭にあったのは素材のことだ。宝石貝、シルバースター、夢見草。いずれもなんて魅力的な素材だろう。
「うーん、ぜひとも採取にって自分の分も確保したいところだけど、すべきことと本末転倒になってしまいそうだね。あーいかんいかん。ここは一つぐっとこらえて!」
 五月葉はぶるぶるっと頭を振って、夢想を振り払った。束ねられた薄茶の髪が、思いを振り払うほうきのように空をなぐ。彼女はやや大きな声で言った。
「私は調合スキルがあるから、集まった素材の調合をするよ。それと、真水と湿布用の布を買いに行ってくるね」

  クレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)は五月葉の言葉を聞くと言った。
「では私はまず、ビーチパラソルをいくつか借りられないか探してみよう。日差しがこのままでは、人魚には厳しかろう。無論看護メンバーもな。じき炎天下になる。影もないところでは暑くて何もできまい」
 口調とあいまって、ショートカットの男っぽい髪や、大人びた表情、いかにも軍人っぽい物腰が、厳しい雰囲気をかもし出している。
「私には氷術の心得もあるから、水温も低く保つことができるぞ。毒の回りを遅くするとともに、体を冷してやることもできる」
 クレアのパートナーで、クレアとは外見も性格も対照的なパティ・パナシェ(ぱてぃ・ぱなしぇ)がのんびりと言った。
「私もクレアさんとご一緒してパラソルを探してきますね〜。急がなくっちゃ〜。戻りましたら、特効薬が届くまで毒の進行を遅らせるお手伝いをしますから〜」
 パティは柔らかな波打つ金髪の、ほわんとした雰囲気の少女である。
「よし、ではパティ、行くぞ」
クレアが大またにすたすたと海岸から歩み去って行く。
「あ、待ってくださ〜い、クレアさ〜ん……あ、っとと」
パティは柔らかな砂地に足を取られつつ、よろよろとクレアのあとを追っていった。

 かわいらしい容姿、口調もその姿にぴったりの広瀬 ファイリア(ひろせ・ふぁいりあ)は担当が決まるとすぐに、フェリアの傍に駆け寄っていった。
「フェリアさん、ファイはとっても心配です〜。少しでも楽になるように、ヒールとキュアポイゾンで、毒の進行を食い止めますですよ〜」
 フェリアの脇にかがみこむと、黒い瞳に真剣な色を浮かべ、銀色の髪が顔にかかるのを無意識に振り払い、すぐにスキルを行使し始めた。
 パートナーの広瀬 刹那(ひろせ・せつな)はファイリアに言った。
「お姉ちゃん、がんばるっス。……パラソルが来るまで、私が扇ぐっスよ〜」
茶色の束髪をぎゅっと縛りなおすと、持ち歩いているスケッチ道具から、団扇を取り出した。
「団扇は絵を乾燥させるのにも使いますからね〜、たまたま持っててよかったっス」
 刹那は大きく団扇を振って、フェリアとファイリアに風を送りはじめた。
「……冷風とは行きませんけど〜〜」
「その気持ちがうれしいよ〜。刹那ちゃん。風だけでもだいぶ違うし〜」
ファイリアが応えてにっこりする。
 同じくファイリアのパートナー、ウィルヘルミーナ・アイヴァンホー(うぃるへるみーな・あいばんほー)がルビーの瞳をまぶしい日差しに細めながら言う。
「そのスペースじゃ、フェリアさん狭そうですよね。ボクがスペースを広げましょう……道具がないから、手でいいかなぁ」
長い金髪を払ってしゃがみこむと、フェリアの周囲の砂を掘り始めた。
「うーーん、海水も少ないですね〜。追加で汲まないとね……」
「ウィルちゃん、手を傷めないように気をつけてね〜」
ファイリアがヒールの合間にウィルヘルミーナに声をかける。

 綱斬 巡(つなきり・めぐる)が「、そんなファイリアらに声をかけた。
「私も砂を掘るのと、入れ替え用の海水を汲むのを手伝いましょう。協力してやれば早いでしょう」
 黒いショートの髪の、大人びた、さわやかな好青年といった感じだが、実はうら若ティーンの少女である。本人も大人の男に見えるのを気にして、女性らしく……と思っているのだが、長年のテレが邪魔をして女らしい格好も態度も取れずにいる。
「長時間痛い、苦しいのはとても辛いからね。早く楽にしてあげましょう」
綱斬は優しく言ってみた。
 が、周囲の生徒たちは、それを聞いて、ああ、なんて優しくてステキな男性だろうら……と思っただけであった。かくしてまた綱斬は、本人も気づかないまま「親切で優しい男」として、男ぶりを上げてしまったのであった。
 ……女の子なのに。