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輝く夜と鍋とあなたと

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輝く夜と鍋とあなたと
輝く夜と鍋とあなたと 輝く夜と鍋とあなたと

リアクション

 広場の外れにある静かなカマクラの中。
 隣り合って座るカップルの姿があった。
「もう少しで出来るからね〜」
「良い匂いがしてるな」
 アリア・シュクレール(ありあ・しゅくれーる)が水炊きを作りながら、七尾 正光(ななお・まさみつ)に微笑み、正光も笑顔で返す。
「そろそろかなぁ〜?」
 蓋を開けると、中から白い湯気がもうもうと出て来て、カマクラの中を余計温かくする。
 お玉でスープの味を確認し、菜箸で鶏肉を少しほぐしてチェックをした。
「おにーちゃん、出来たよ! 今よそうから待っててね」
「おう」
 正光の前にお肉がたっぷり入った皿を置き、アリアは自分の分も同じくらいよそって、皿を置いた。
「いただきます」
 2人で声を揃えて、言う。
「ふー……ふー……」
「おにーちゃん、私がやってあげるよ」
「え?」
「ふー……ふー……ふー……はい、あーん」
「あーん」
 猫舌の正光を気遣ってアリアが冷ますと、その心遣いと行為を嬉しそうに受け取る。
「どう?」
「うん、美味しい」
「良かった〜♪」
「やっぱり、アリアの料理が一番だな」
「えへへ♪」
 料理を褒められたのと、正光にあーんしてあげられた事がよほど嬉しかったようだ。
(可愛いな)
 正光はアリアの笑顔を見て、思わず腰に手を回し、抱き寄せていた。
 ぴったりと腰と腰がくっついた状態で隣合って座っている状態になった。
 勿論、正光の左手はアリアの腰のままだ。
「今度は俺が食べさせてやるよ」
「うん!」
「ふー……ふー……あーん」
「あーん……もふもふ……おにーちゃんに食べさせてもらうとすっごく美味しいね!」
「俺もアリアに食べさせてもらったらすごく美味しかった」
「本当!? 嬉しいな〜♪」
 お互いに食べさせ合いながら、ゆっくりと鍋を食べていく。
「ふ〜、お腹いっぱい♪」
「俺もだー」
 2人は満足そうにお腹を軽く叩く。
「あ……」
「えっと……」
「はは」
「へへ♪」
 示し合わせたわけでもないのに、お互いが同じ動作をしていたことに驚き、笑みがこぼれる。
 正光はアリアをまたも抱き寄せる。
 今度は、アリアの背中を抱きしめるようにし、腰とお腹の辺りに正光の腕が回された。
 顔を見合わせる体勢とは正反対だ。
「アリア、聞いて欲しいことがあるんだ」
「なぁに?」
 さっきまでとは違う真剣な声。
「ここまで俺が初めて本当の幸せを味わえたのは君のおかげなんだ。恋人になってからもずっと。だから、本当の意味で君との幸せの証が欲しい。君しかいないから。だからアリア、結婚しよう!」
「もちろんだよ」
 真剣な正光のプロポーズにアリアは即答した。
「えへへ、おにーちゃんのお嫁さんになるという夢、叶っちゃった。私にとって今日は最高の日だもん♪ 幸せにしてね、おにーちゃん。えへへ、だーいすき♪」
「俺もアリアが――」
 正光は抱きしめたまま、少しアリアをよこにずらし、目を合わせる。
 アリアの潤んだ瞳が閉じられ……正光は唇を重ね合わせた。
「あれ?」
 唇が離れると、アリアは自分の手に何かがはめられているのに気が付いた。
 手を顔の前に持って行くと、そこには小振りなピンクパールを中心に小さなパールで雪の結晶をモチーフに作られた指輪がはまっていた。
「おにーちゃん……これって」
「あと、これも」
 アリアが言う前に正光がシルバーのチェーンを差し出した。
「普段、料理とかやってるからな。いつもはこっちに付けて、ネックレスにすれば良い」
「……」
 感極まって、言葉にならず、アリアは自分から抱きついた。
 正光は黙ってそれを受け止めたのだった。